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傍観者の知るところは
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 雷光が手に持っているのはどこから出したか機関銃。
 鈴坊が手に持っているのはどこに持っていたのか乳切木。

 乳切木(ちぎりき)と言うのは、あれじゃ。なんかこう、なっがい棒の先から鎖がじゃらっと伸びて、その鎖の先端に分銅が付いているあれじゃ。
 鈴坊が言うには、ほとんど知られていない武器じゃそうじゃ。おまけにこの武器の名に『乳』と入っているのが壺にはまったので思わず衝動買いしたらしい。買った理由が中学生か。

 まあただ、あやつはその乳切木を結構自分好みに改造しており、儂がちらりと“ねっと”とやらで見た本来の乳切木とはなんか違う。
 全体的には同じなのじゃがなんか違う。木製であるはずの棒は鋼鉄じゃし。ただの分銅であるはずのそれは実際よりも何倍も大きく、更には重たい。そして鈴じゃ。
 更に更に、鎖は普通に鎖なのじゃが、どう改造したのかそれは伸び縮みをして相手を襲う。

 鈴坊はその伸び縮みする鎖を持ち、ぶんぶんと振り回して雷光から放たれる銃弾をよけている。周りの被害が尋常ではない。


 そして、その雷光が持っておる機関銃。これもまた強烈な外見をしている。

 何と言ったらよいものか。銃の身の部分にある銃弾をため込むそこは、雷光が鈴坊に向かって打つたびに休む間もなくぐるぐる回って、間髪いれずにカランカラン、と空になった銃弾を覆っていたあの鉄が音を立てていた。
 先程も述べたとおり、その機関銃はなんつーか強烈な外見。つまりごつい。

 機関銃って両手で操作するものだった筈じゃが、どういう腕力をしているのか雷光は軽々とその重そうな機関銃をそれぞれ二つ(二丁?よう分からん)、各各両手に持って鈴坊を攻撃しておった。
 なんて末恐ろしい童(わっぱ)じゃ、と鈴坊のじいさんならぼやくであろう。
 
 にやり、と鈴坊が笑う気配がして、その次の瞬間にはその笑みに感づいた雷光に反撃した。もちろん鎖を回し、銃弾を弾きながら。

 そして、鈴坊は食堂の長てーぶるに棒を立て一気に跳躍する。そのまま楽しげな笑みを浮かべている雷光に向かって分銅を振りおろそうと、その分銅を高く振り上げた。
 雷光は雷光で、そんな鈴坊に両手に持っている機関銃の銃口を、心底楽しげに向けた。


 さすがに、ここで止めなければ後ろで肝を冷やして儂らを見ている蓮杖殿に申し訳ないな、と思い儂は儂の存在に気づいておらん薄情な友人二人の間に入った。




 と、その瞬間。




 どおおん、と鈴坊が雷光に向かって振り下ろした鈴型の分銅がチリン、と微かに音を立てながら床に衝突した。

 まったくこの馬鹿どもめが、と思いながら取り合えず儂は刀を抜いていた。




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あきゅろす。
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