秘 密 act.5 そもそもいつもの弘なんて言う言葉を使うこと自体なんかおかしい。 俺が「いつもの弘」と「いつもと違う弘」を区別するようになったのは最近だ。 意図的に区別すると言うより、なんとなく感じる雰囲気みたいなもので察するようになったと言った方が正しいかもしれない。 さっきみたいにね。 たぶんクラスメイトの誰一人気づいてない、俺以外は。 いつもとまったく違う弘が出てくるのはほんの一瞬なんだ。 さっきの瞬きする間くらいの短い瞬間だけたまに見える。 本人も無意識で、それを隠そうとするのもきっと無意識だ。 だから最近それがどうにも気になって仕方ない。 まぁ踏み込まないのが俺の主義だからあえて何も口出しするつもりはないけど。 一度気づいてしまったら、その後はボロボロと見つけるようになってしまってちょっと厄介だった。 思わずどしたの? と聞いてしまいそうで。 今のところはちゃんと知らん顔してるけどね…うん。 弘が表に出してくれれば俺だってその時はたぶん聞くと思うよ? それは勝手に余計な気を利かせることにはならないでしょ? だって目に見えてわかるってことは本人が聞いて欲しいってどこかで思ってるってことだし。 そしたら理由を聞いて、慰めるなり元気づけるなりしたいよ俺だって鬼じゃないんだから。 一応それなりの常識も持ってるつもりだし、道徳観だってあるし。 友達が堂々と落ち込んでくれたらさ、堂々と元気出しなって言ってあげたいと思うのは当然だよね。 [*前へ][次へ#] [戻る] |