愛情表現
――ねぇ、知ってる。ぼうや
――ピエロはね……
「ひぃいいぃい!!…ぎッ…!」
「逃げるなよ◆傷つくなぁ◇」
「よ…、寄るんじゃねぇ!!このっ……化け物が!」
「化け物じゃないよ、奇術師さ◆
ああ、でも君つまんないから」
サク
「もう死んでいいよ◇」
綺麗に脳天に刺さったトランプの柄は、ハートのエース。
「ああ…汚れちゃった◆」
躯や服、顔と至る所についた血に薄笑を浮かべくるりと振り返ると、足元に転がっている死体を蹴りながらシャワールームに消えて行った。
ジャー
勢いよくでるシャワーを頭から浴びながら血をおとしていく。ついでにメイクもおちていく。
(あとで描き直そう…◇)
――ねぇ、知ってる。ぼうや
また、あの声が響く。
時々思いだすように頭を支配する女の声。
低くもなく、高くもない。調度いい、耳障りがいい声だ。
だけど、誰の声かは知らない。多分昔すぎて覚えていないんだ。
――ピエロはね…
でも言葉だけははっきりと覚えている。
――人を「こわす」事でしか愛情が表現できない人がモチーフなのよ
――「こわす」?
「ころす」じゃなくて?
これはボクの声。小さい小さいボクが女に問う声だ。
――あら、何言ってんのよ
――どっちでも一緒じゃない。今のアンタみたいに
クスクスと可笑しそうに笑う女の声が頭に響く。
ジャー
「一緒、ね…◆」
声の主は誰かわからないけど、1番最初にボクの事を「ピエロ」って呼んだのはその女で。
今もボクは。
ボクなりの愛情表現をしているよ◇
―――――――――
鏡の前で嗤ったのは、
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!