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噂の転入生!




門のところまで来ると、小柄な少年が門番のおじさんと話しているのが見えた。
う、噂の転入生…!

俺が近づくと門番の清水さんは気づいたようで、転入生に声をかけた。

「幸希!ほら、奥村。迎えが来たぞ」
「え?」

おくむら、と呼ばれた転入生はこっちを見た。
その瞬間、俺は硬直した。

何というか―――

「…あ、案内の人ですか?奥村栄です。よろしくお願いします」



平凡。



さらさらの黒髪も、綺麗な黒い瞳も美形要素なのに、何故こうも平凡なのか。身長も俺より少し低いくらいで平均だし、喋り方も普通。目も大きくもなく、小さくもなく。声も高くもなく、低くもなく。
通行人を100人集めて、平均を作ったらこうなるんじゃないかというくらいインパクトがない。

とりあえず挨拶をすることにした。

「…藤堂幸希です。こちらこそお願いします」

さすがに条件は揃い過ぎてると思ったよ。馬鹿でかい学校、男子校でしかも寮、王道生徒会、親衛隊、季節外れの転入生。ここまで揃ったことが奇跡だ。

でも、奇跡なら王道転入生まで揃えるべきだろう!?
何でここまで揃っていて平凡……。

「あの…?」

黙ってしまった俺を不審に思ったのか奥村は覗きこんできた。
うん。挨拶終わった人間が遠い目をしてたら不思議にも思うよね。ごめん、少しひたらせて……。

いや、待てよ。
王道を諦めるのは早くないか。設定だけなら完璧なんだ。ただ少し、見た目が平凡なだけで。それに、今平凡受けが世間では流行っている。俺も平凡受けが好きだ。見た目が平凡でも全然構わない。大事なのは見た目じゃない、中身だって偉い人も言ってた気がする。ここは見た目平凡、中身王道☆を夢見るべきだろう。


やっぱり、平凡で王道を目指すしかない……!!


「奥村君、いや、栄君!僕が君のことを(王道という道へ)案内するからね」
「は、はぁ…」
「まずは僕を見て何か思わない?」
「えーと…綺麗ですね?」
「そうじゃなくて!他に!」
「他に…?あ、先輩ですか?」

駄目だ。
言うことが平凡すぎる。やっぱり「その笑顔、気持ち悪い」イベントはまだ早かったか…。

「でも大丈夫、僕が君を導くからね!」
「はぁ…」


王道を夢見て早二年。待ちに待った王道(っぽい人)がやってきた。今更諦められない。

負けるもんか!









あきゅろす。
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