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幻水学園高等部
中庭@ (坊ちゃん)
昼休み。
友達が先生に呼び出されて行ってしまったので、図書室にでも行こうかと廊下を歩いていた。

廊下の窓からふと下を見たのは本当に偶然だった。

そこは中庭で、大きな石の上に髪の長い女子生徒が一人座っていて。
(見たことあるんだけど、誰だったかな)
その向かいに立ってるのは、うちのクラスの男子生徒だった。


(お、ティルくんじゃん)


この冬の寒い中に何話してんのかな、くらいに思った次の瞬間。

(おぉぉ!?)

ティルくんが歩み寄り、女の子の顔に片手を添えた。
思わず、ちょうど開いていた窓の前でその光景に釘づけになってしまう。
(のぞき見なんて悪趣味)
(‥だけど気になる!)


注意すれば声も微かに聞こえる。


「ルックとキスしたこと、ある?」


「さぁ?」


「ないよね。キスどころか、好きだって言われたこともない。‥違う?」


「‥‥違わないわ」


女の子は、やんわりとティルくんの手を離して答える。
それに対して、ティルくんは「やっぱりね」とますますニッコリ笑う。


(な‥なにこれ、どーゆー現場?‥告白?新しいイジメ?)



「僕にしておけば良いのに。
馬鹿だな」


「そーね」


「待ってたって無駄だよ。
ルックはずっとルックのまま。
いいの?このままずるずると中途半端な関係のままで。
何ヶ月、宙に浮いた関係を続けたと思ってるの?もう十分だろ?
君たちは行き先を見失ったんだ。
‥‥ルックは君をどこへも連れて行く気がない」


「‥行き先なんて必要なの?」


「‥君もルックも、何一つ、わかってない」


ティルくんは懲りずに、再び女の子の髪に手を伸ばす。

(ティルくん、押すなぁ。‥面白くなってきた)
(よく見ればお似合いの2人だ)


「‥そうかもね。だけど
それでも私は‥」


「このままで良いって?
本当にずっとこのままの関係でいられると思ってるの?」


「‥‥言葉は、そんなに真実かな?」


女の子が少し哀しい響きでそう言った瞬間。
あたしは、後ろに人の気配を感じた。


「‥‥‥何、あれ?」


(え、あたしに聞いてる?
‥ええぇ!ルックくん!?)

これは何?
あたしのが聞きたい。
修羅場?
‥修羅場ってやつですか?



「真実かどうかなんて問題じゃない。
言葉は、『力』だ」


「‥ティルらしいね‥」


中庭の2人はルックに気付かずドラマの1シーンを続けている。



「ねぇ、あれ、どういう状況な訳?」


「‥‥ティルくんの‥告白現場かと‥思われますが‥」

あたしに聞かないでよ。


「‥‥‥へぇ‥」


(あ、会話聞き逃した)


その瞬間、気のせいかもしれないけど、ティルくんがチラリとあたしたちの方を見上げた気がした。

そして、女の子にキスを‥

「あんた、これ持ってて」
ルックくんは、あたしに持ってた本を押し付けて、
信じられないことに‥窓から飛び降りた。(ここ2階!)

結局、女の子が顔を背けたから、ティルくんは彼女の耳元でなんか言っただけみたいなんだけど。
何を言ったのか、彼女は途端に真っ赤になって。

そんな彼女をルックくんが腕を掴んで、あっという間に連れ去った。



‥‥‥この本、どーすんの?


走っていく2人の背中を見ていたら、下から呼び掛けられたので仕方なしに降りていくことにした。






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あきゅろす。
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