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幻水学園高等部
放課後の教室 (クラウス)
「あっれー?
まだ生徒会は終わってないの?」


「さすが、地味な図書委員は早えな」


「地味で悪かったわね!
そういうシードは部活行けなくて暇そうね?」


「うっせー。
なんでお前が知ってんだよ」


「地味な図書委員の集まりでジョウイくんに聞いたからー。
同じバスケ部でもあんなに優秀な人もいるのねー。
万年赤点で部長から追試まで部活休んで勉強しろなんて言われる誰かさんとは大違い」


「あーうるせー」






委員会が終わって、
帰ろうと教室に戻れば、
クラスメートのシードが暇そうに一人残っていた。
生徒会のクルガン待ちだろう。

こいつとは小学校の頃からの腐れ縁で、結局高校まで一緒に来てしまった。
(そういえば、よく受かったな、こいつ)



「クルガン待ってるんでしょ?」


「ああ。
一応、勉強教えてもらおーと思って」


「じゃあ、一人じゃ淋しいだろうから、私も一緒に待ってあげる」


「うぜえ。
クルガンについてくるオマケ待ちのくせに」


「えへへー」



クルガンはシードの親友で、中学から一緒だ。
クルガンも私も頭はそこそこ良かったから、同じ高校に入ったのは不思議じゃなかった。
ほんと、よくシードも受かったよね。

(やれば出来るのにやらないから‥)


この学園は、エスカレーター式で、ほとんどの生徒は初等部か中等部から上がってくる。
だから、必然的に同じ高校から入った仲間はなんとなく親近感があって、話しやすい。
今は随分慣れたけど。
(シードは入学当初からそんなこと気にせず、恐ろしいほどにクラスに馴染んでいたっけ)
とにかく、そうやって、私はクルガンと同じクラスのクラウスくんと知り合った。




「最近くっつくところ多くない?
っていうか、告白ブーム?」


「例えば?」


「ジョウイくんとか」


「それはずいぶん前じゃねーか」


「ニナちゃんがフリック先輩に告ったって」


「くっついてねーじゃん」


「‥まぁそうだけど。
あ、ルックくんも彼女出来たの?」


「はぁ?マジで?」


「うん、今日の委員会でシーナくんが一緒に帰ろうってルックくんを誘ったんだけど、約束してるからって断ってた」


「誰だよ、あんな毒舌野郎と付き合うやつ」


「えー、あれでも人気あるんだよ、ルックくん。
わかんないけど、相手は内部の可愛い子って噂。
クラスメートって言ってたかも。
んじゃ、うちのクラスなんかな?誰だろ?」


「恋愛にかまけて勉強を疎かにしてはいかん!」


「なにそれ」


「レパント先生のマネ」


「似てないし。
だいたい、勉強疎かにしてるのシードだからね」


「‥全くだな」


教室の入り口で声が聞こえて、見るとクルガンが入って来るところだった。

そのうしろには、やっぱりクラウスくんがいる。



「ユメも待ってたのか?」


「うん、‥ちょっとだけね。
クルガンもクラウスくんも、生徒会、お疲れ様」


クルガンは黙ったまま頷き、クラウスくんは
「ありがとうございます。
ユメさんも、今日は委員会でしたよね」
なんて言ってくれる。

やっぱり紳士だなぁ。


「生徒会に比べれば、楽な方ですから」


「けっ」

とシードが毒づくのが聞こえる。


「‥なによ」


「ほんと、外面だけは良いんですねー」


「なっ!?
そんなことないよ!」


「またまたー、
その華麗なる変化を目の当たりにする俺の身にもなってほしいよなー」


「なによそれ!」


「いい加減にしろ、2人とも‥」


クルガンはいつも制止役だ。


「お2人とも、いつも仲が良いですよね」


「「は!?」」

クラウスくんの言葉に2人揃って反応してしまう。


「違うんですか?」


「違います!腐れ縁なだけで!」


「もうちょっと可愛いげあればなー。
本当残念残念」


「‥‥‥悪かったわね。可愛いげなくて」


「大好きなクラウスの前じゃ可愛いらしく、なんてオトメな思考回路がお前の中にあっただけビックリ‥って‥‥あれ‥?」


「‥え?」

クラウスくんがきょとんとしている。


‥‥なんか、今、この馬鹿
すごく際どいこと、言わなかった?



「‥シード、追試の勉強するんだろう?‥帰るぞ」


「お、おう!」


シードもクルガンも、
固まってる私たちを置いて(っていうか逃げるように)帰っていった。



「あ、あの‥」


「‥は、はい」


「僕らも、帰ります‥か?」


「はい‥」



「「‥‥‥‥」」


「「あの!」」


あーもー、何やってるんだろ‥私。

2人でぎこちないままに、
「先にどうぞ」なんて譲り合ってみて。


ああ、気まずい!


「‥あの、‥‥さっきの、シードくんの言ったこと‥本当‥ですか?」

ほらきた!


「あれは‥その‥えっと‥」

誰か助けて!



「気にしないでください。
‥もし‥本当だったら、僕は嬉しいなと‥思っただけですから」


「‥‥そうですよね‥‥‥‥は?」

今、なんて?



「良かったら、一緒に帰りませんか?」


「‥よろこんで!」





神様!
これは馬鹿の奇跡ですか!?



(だけど、やっぱりシードは許せない!
明日ぎゃふんと言わせてやる!そんで、クルガンにはお礼言っとこう)(我ながら理不尽)





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あきゅろす。
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