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幻水学園高等部
体育館 (ジョウイ)
『ユメちゃん、ジョウイくんがOKしてくださいました!』


友達のジルから嬉しい報告を聞いたのは、2ヶ月も前のこと。



初等部から一緒の私たち。

ジルはこの春、初めて恋をした。


入学式の日、同じクラスになった彼に出会って。
文字通り、一目惚れだったらしい。

高等部から入ってきたジョウイくんは、優秀で、格好良くて、温厚な人柄で。
お坊ちゃんなのに、どこか話しやすくて。(前にそう言ったら、幼なじみのおかげかなって笑っていた)


ジルは生粋のお嬢様で、可愛いし、おしとやかで、理想の女の子って感じ。


ジョウイくんを狙ってた女子は結構いて、彼女が出来たって聞いてみんなショックを受けてたけど、
相手がジルだって聞いてみんな納得してた。

そのくらい、2人はお似合いだった。









「ユメちゃん」


部活で休憩に入ると、ジョウイくんが話し掛けてきた。


「ジョウイくん、ジルなら今日は帰ったよ」


「そっか、良かった
体調悪そうだったから心配してたんだ」


「ジルは出るって言い張ったんだけど、また無茶して風邪ひくと思ったから、帰れって言っちゃった」


「ありがとう、ユメちゃん。
本当にユメちゃんはジルのお姉さんみたいだよね」


「ジルは変なとこ抜けてるしね」


いろいろ思い出して2人で笑う。


ジルは、体弱いくせに、
ずっと私に付き合ってバドミントン部に所属している。
運動もあんまりしちゃいけないから、どうしても雑務ばっかりになってしまう。
だから、もっと違う文化系の部に入ったらって言っているのに。

「ユメちゃんの打ってる姿を見たいから」
なんて笑顔で言うんだ。






「調子いいみたいだね、ジョウイくん。
レギュラー入りもすぐじゃない?」

なんとなく、ジルの話をしたくなくて話題を変えた。


「そうだね‥なれたら良いけど。まだまだだよ。
ユメちゃんは今度の大会でも期待されてるんでしょ?」


「期待されてるかはわかんないけどね。
私にはコレくらいしか取り柄もないし‥」


「僕は、ユメちゃんのバドミントンしてる姿、好きだな」


「‥ジルが言ったの?」


「え?
‥ああ、ジルはよく、自分はユメちゃんのファンだって言ってるけど、バドミントンのこと言ってたのか。
でも、僕もジルは関係なくそう思うよ。
部活中のユメちゃん、カッコイイから」


「‥‥カッコイイって‥」

嬉しいけど、なんか哀しい。


「僕らバスケ部の中でもよく話題になるんだ。
‥‥‥あ、休憩終わっちゃった、またね、ユメちゃん!」



うちの部活は、バスケ部と一つの体育館を半分ずつ使ってやっている。
(体育館は3つある)


ジョウイくんは、他の1年と一緒にシュート練習を始めた。
(カッコイイって言うのは、彼のような人のためにある言葉だよね)








――‥春、彼に恋をしたのはジルだけじゃなかった。



『ユメちゃん‥
あの人が、私の好きな人なの』



真っ赤な顔で恥ずかしそうにジルが教えてくれるまで、私は彼に恋をしていた。



私みたいなのがジョウイくんを好きだなんて笑っちゃうけど、
部活中の彼を見て。
その姿に心惹かれた。




好きだった。








――今は?


‥‥―まさか。



友達の彼氏に恋だなんて、不毛過ぎる。



この胸の痛みになんか
気付かなくていい。

‥‥気付かせないで。









私は、ジルと彼が付き合い出したって聞いて嬉しかった。


素直に嬉しいと思えた自分に、どれだけ安心したか。




ジルもジョウイくんも好きだから。


2人が幸せならそれでいい。









私も、2人に負けないくらい幸せになるよ。



‥だから。


ちょっとだけ

羨ましいと思うこと、許してね。








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