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運命を敵に回しても・前編(山崎)

―――が好き。

彼もあたしも、直接言葉にはしなかったけれど。

好きだからこそ触れ合った。



広い広い宇宙で出会えたこと、運命だったって今でも思ってる。


彼の歌が、あたしの歌が、
結び付けてくれたの。




でも、彼は行ってしまった。

広い宇宙へ。


誰も縛ることなんか出来ない人。

本当は。
せめて、彼の帰る場所になりたかった。

言わないまま、だったけれど。


だって、帰る場所なんて彼には必要すらなかった。

この宇宙全てが、彼の故郷だったから。




「またな」

さよならとは言わなかったね。


離れていても、あたし達は歌で繋がってた。

あたしも、また会えるって信じてた。


もう会えないってわかってたら、ちゃんと「さよなら」って言えたのに。


ごめんなさい。

先にいきます。


でもね、あたしはいつでも―――の歌と共にあるから。















「っていう夢をみたの!
すごくない?映画じゃない?」

「‥まぁ‥感動的、かな」


夢乃と昼休みに会ってすぐ。お弁当を食べるのもそこそこに今朝みた夢の話をしてくれた。


「でしょ?
起きてしばらく涙止まんなくてさー。
めちゃくちゃ愛し合ってるのに、再会出来なかったなんて悲劇過ぎる。あんなに一途に想ってたのに」

「はは‥そこまで感情移入しなくても‥」

「だってね、退。
その女の人、あたしだったんだよ」

「‥‥なに?」

「あたしだったの。
すごくリアルでね、前世とかパラレルワールドとかだったりして」

「いやいやいや」


冗談じゃない。


「あれが前世だったら、納得いくんだよ?
だから、今のあたし達はこうして一緒にいるんだなって」

「俺と、夢乃が?」

「そ。
だってあたし達、きっと前世だってパラレルワールドだって恋人だったと思うもん」

「‥‥そうかな?」

「そうだよ。
退はふらふらしてて側にはいてくれなかったから、今はこうして一緒にいられるようにしてくれたの」

「誰が?」

「かみさまが」

「そりゃすごいね」


かみさま、ね。


「だって、退があたしに言ったんだよ?『ずっと側にいます。付き合ってください』って。ずっと見てました、とかじゃなくて、側にいますってプロポーズみたいでびっくりしたんだから」

「もーいいじゃんかそれは!
忘れて!恥ずかしいから!
あ、ほらもうすぐ昼休み終わるよ?」

「え?‥‥あっ、やば!
次、銀八じゃん!」

夢乃はがたがたとお弁当を片付け始める。

「なんか準備あるの?」

「うん、今日は課題のプリントあるだけ全部配るから取りにこいって」


夢乃は国語の教科係だ。
くじ引きだったから、俺でも阻止出来なかった。


「俺も行くよ、重いでしょ」

「ありがと、退」



焦る気持ちを隠しながら、俺は夢乃に笑いかける。

俺もその夢を知ってるって言ったら、やっぱり運命だって言ってくれる?

俺が、夢で愛した相手じゃなかったとしても。



初めてその夢をみたのは、小学生の頃だった。

夢乃に出会って一目でわかった。
彼女だって。

同じ様に、一目でわかった。
あいつだ、って。

燃えるようなエネルギーを秘めた目は、死んだ魚の目みたいになっていて。認めるには時間がかかったけど、あいつだった。

彼女に愛されながら、彼女を大切にしなかったあいつ。
俺は許さない。


夢乃はまだ銀八があいつだって気付いてないみたいだけど。




夢乃が銀八と出会ったのが運命だったなら、俺との出会いも運命だろ?

てゆーか所詮、前世だろうがパラレルだろうが、夢は夢だ。

今が全て。




「ね、さっきの夢の話」

「うん、なに?」

「夢乃はずっと一人だったの?」

「違うよ。一人じゃなかった。
なんか‥ペット?みたいな、変わった動物と一緒に住んでたから。寂しくなかった。犬と鳥の混ざったような動物」

「犬と鳥?変わったペットだね」

「ペット‥とは違うんだけど。
家族とか友達っていうか、相棒っていうか。とても大切な存在だった気がする」

「ふーん。‥‥‥‥‥‥ありがと」

「え?なんか言った?」

「ほら、予鈴鳴ったから急がないと」




好きだよ。

ずっと側にいる。

生まれる前から、誓ってたんだ。






2011.04.09.


***

前世的なネタはマク●ス7のイメージ。
このヒロインはミレーヌではないですね。


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