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正座して反省しなさい (沖田?)
「ちくしょー、また逃げやがったな桂」

「‥‥‥‥」

隊員達の言葉が耳に痛い。


「毎回毎回してやられる。
あの沖田さんですらなかなか捕まえられねーなんてな」

「隊長ー、悔しいっす!」






桂に高杉。

上は天人官僚からも圧力をかけられているらしく、なかなか捕らえられない私達は事あるごとに嫌味を言われている。





高杉はともかく、あんな桂ですら捕まえられない事実は徐々に隊員達を気落ちさせていく。




「おーおー、へこんでますなァ」

「‥沖田くん」

「桂にしてやられたって聞きやしたぜ、だせェな」

「言っとくけど、沖田くんだって笑えないんだからね。
そもそも先週取り逃がしたのはそっちでしょ?」

「‥ちィっ」


その報告で天人官僚から苦言が来たのだ。
そのうえ、今回は私の隊が出されてまた失敗。まーた上からもグチグチ言われるんだ、きっと。



「桂か‥。なにもあんな馬鹿躍起になって捕まえなくたって‥」


「あんな馬鹿でもテロリストだろィ」


「桂と高杉捕まえろって五月蝿い天人官僚だって裏で相当マズイことやってるわ。
桂の組織の襲撃で不正がバレそうになったからって目の敵にして。
桂よりよっぽど捕まえてやりたい。山崎もさっさと証拠持ってきなさいよね」


「じゃあ桂は許されるんで?」


「それは‥」


「国のためだ、民のためだっつって、悪徳天人官僚相手に爆弾作って街でドンパチやっても、正義だっつーなら許されるんで?」


いや、それ後半一部‥私達にも当て嵌まる気がしないか?
気のせい?

気のせいだよね、うん。


「‥わかってる。私だって。
天人官僚が全部が全部悪いとも思ってない。
開国したお上の選択は間違ってなかったと思う。やっぱり地球だって宇宙の星の一つだし。
開国してよかったこと沢山あったしね。
‥ただ、桂や高杉達の気持ちもわからないでもなくて」


「俺ァどーでもいーですがねィ。
捕まえろって言われた奴捕まえてりゃいい。
俺みてェな馬鹿にゃ小難しいこたァさっぱりなんで」


「‥‥そうだね」


「あんまグダグダ考えてっと土方さんに『切腹ゥゥ!!』とか言われますぜ」


「あはは‥、
そもそも私達、桂取り逃がして罰則中だしね‥」


桂取り逃がしの報告を局長と副長にしている途中、沖田くんがしゃしゃり出てきて副長とケンカになって。
ぷっちんしちゃった副長から『二人とも廊下で正座してろ』というとばっちり‥もとい罰則を受けた夕暮れ。
もうとっくに日は暮れたし、2、3時間は経ったと思われる。

足の痺れも限界点を超えて、もはや感覚もなくなっている。

隊長格二人が廊下で正座ってどうなの。
部下に合わせる顔がない。








「‥沖田くん」


「なんですかィ」


「どうしてみんな仲良く出来ないんだろうね」


「は?幼稚園児じゃねェんですから‥」


「なんで世の中、いつまでも争い止められないんだろう。
ケンカくらいのレベルで済むなら良いけど、すぐ大規模に発展させたがる。
少しくらい、のんびりしたいと思わないのかな‥。
‥‥‥哀しいね‥」


「さァな。
モテねーから暇も欲もエネルギーも持て余してんじゃね?」


「‥なにそれ」



「お前、のんびりしたいってのになんでウチで隊長なんかやってんで?テロリストも天人も俺らも、暴れてんのは一緒だろ。同類ですぜ」


「なんで、ねぇ。
‥私に力があったからかな?
私は他の人より剣の才があった。だから。
少しでもみんなが安心してのんびり暮らせるようにって思った」


「‥‥ま。どーでもいーですがねィ」

「うーわーむかつくー。
聞いたの沖田くんなのにー」

「でも。
お前のその理由は嫌いじゃねェよ」


「そ?
‥ありがと」






平和って何かな?

考えても考えても、わかることなんてない。


一つだけわかることは、「考えてるだけじゃ平和は作れない」ってこと。



そのために何が出来るかな?

‥これもまだまだわからない。



だけど、

桂も高杉も、天人も、誰も捕まえたり追い出したりしなくていい世界は、きっとみんなが笑っていられる世界なんじゃないかな。


剣ばっかり振り回してた私には難しいことなんかわからないけど、
のんびりのんびり、暮らせる日が来たとして、ここの仲間と沖田くんと、どうしようもない馬鹿共と追いかけっこして、町の人に笑われて、そんでちょっぴりヒーローみたいに人を助けられたらいいなぁ。





「ヒーローだァ?
無理無理。笑っちまうなァ」

「えっ、
心読まれた!?」

「俺達ァ、ヒーローなんて向いてねェよ。悪役が似合いでィ」

「まぁストーカーゴリラに鬼マヨラーだもんね。そんで極めつけにドS王子」

「悲惨ですねィ」

「褒めてないからね、一応言っとくけど。

でもさ、私にはヒーローに見えたんだよ。
毎日毎日土手だの縁側だの昼寝ばっかしてても。‥私にはヒーローなの。今でもね」

「‥それ‥」

「うわぁぁあーもーダメ!!
マジ限界!!ふくちょおぉ!ごめんなさい!本当謝るから許して!痺れ殺すつもりですか!?
足!足!死ぬー!ふくちょおぉー!」








興味ないって言ってる彼が、本当は一番、のんびり暮らせる世界を望んでる気がするの。

素直じゃないヒーローの代わりに、

私は声を大にして言うよ。






「くそー!ラブ&ピース!」




(‥足だけじゃなく頭までイッちまったみてェだな)




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