g.short
独り台詞 (坂田?)
top.1000,1111記念?ひとりシリーズ。
あたしは、普通の幸せって、ないものねだりだとずっと思ってた。
好きなひとと結婚して、一緒に暮らして、支えて。子供が生まれたらお母さんになって。家族を持って。毎日ごはん作って家事をこなして。
そんな毎日に満足できる人間ではないんだって、思ってた。
本当は。
あたしは、そんな幸せを人一倍望んでいたの。
自分で気が付きもしないままで。
若いときはよかったの。
理想があった。
志を同じくする仲間がいた。
理想に人生をかける自分に満足してた。
貴方も同じだったでしょ?
一人消え、二人消え。
あたしたちはばらばらになった。
それでも。
あのときを共に過ごした仲間とは、心のどこかで繋がっていられると思ってた。
銀時も、高杉も、ヅラも、辰馬も。
道は違えど、根っこでは何も変わってないと信じてた。
ううん。信じてる。今だって。
あ、そうか。
幸せについて話してたんだっけ。
あたしは、あのひとの手を取った。
貴方はどういう心境の変化だって聞いたけど。
貴方がそれを聞くのは随分卑怯だと思うの。
あのひとはあたしを必要だと言った。
貴方が絶対言わない台詞。
それから。貴方には、お前幸せになれるのかって聞く資格もない。
あたしを幸せにする気がないんだったら。
貴方は、あたしを幸せにすることなんて簡単だった。
知ってたくせに。
貴方があたしに手を差し伸べるだけで。
一本の花をくれるだけで。
そっと隣に寄り添うだけで。
言葉なんてなくても、あたしは幸せになることができたのに。
貴方はなにも‥嘘一つですら、あたしに与えてはくれなかった。
あのひとが昔さんざん貴方にヘタレだって言ってたの、
あたし知ってた。
あたしね、あのひとと幸せになれる気がするの。
一番人並みの幸せと縁遠かったあたしが、よ。
だって。
とんでもなく嬉しかった。
必要とされること。
あのひとが普通の幸せをあたしに与えてくれるかは微妙だけど、
絶対、あたしは幸せになれる。
あのひとの家族になる。
すごいことじゃない?
あのころから、
たぶん一番、普通の幸せを望んでいたのは貴方だった。
貴方は、本当は、
一番幸せになるのが怖いんでしょう。
あたしは
これから
あのひとのために毎日ごはんを作って、
あのひとの帰りを待って、
今日のおかずは何にしようかな、とか
嫌いな野菜をどう食べさせよう、とか
曇りだから洗濯乾くかな、とか
そんなくだらない平和ボケしたことを真剣に考えながら
毎日を暮らすの。
そんな毎日が夢だったのは、貴方のほうよね。
貴方は、
平和ボケした暮らしは向いてない。
だから、憧れる。
でしょ?
ケンカ売ってんのかって貴方は怒ったけど、
そう思ってんのはあたしだけじゃない。
あのひとも、みんな。
ケンカ売ってるわけでも、惚気てるわけでもない。
あたしはあなたに幸せになってほしい。
お願いだから、
誰かの幸せのために自分を犠牲にしたりしないで。
剣の振り方忘れるくらい、本当に平和ボケした暮らしができるようになるまで
あたしたちを置いていなくなったりしないで。
ねえ、ぎんとき。
幸せになっていいんだよ。
ずっといつか、
お前たちより俺のが幸せだって
つまんない意地張ってみせて。
待ってるから。
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