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聖夜 (沖田)

「メんリ〜ッ‥クリスマ〜スッッ!!あははは!」

頓所は本日もまたイベントのため無礼講である。
ほんとたのし〜。
あたし、今日はずいぶん酔ってるらしい。

「おい、山崎!マヨラーの真似でもしてみろィ」

「は〜い!じゃあ行きますよ〜‥って出来るかァァ!切腹だコラァァァア!!」

「「あははは!」」

もうダメ。楽しくてお腹痛い!

「あ?そんなに切腹してェんじゃ手伝ってやろうか?」

「ひッ‥ふふふくちょ!?」

「山崎っ待ちやがれ!」

逃げる山崎。追う副長。
普段と何も変わらない光景でも
笑えて笑えて仕方がない。

「アハハ!山崎ったらバカ!!」

「違いねえ!」

「死んでくれよ、土方」






でも。



楽しいだけが人生じゃない。



時間は過ぎる。



楽しい宴の跡は、



地獄絵図。




あたしはこの瞬間が大嫌い。

一人、また一人、と、
仲間達が眠りの中に引き込まれていく。

『あ、独りになっちゃう』

そう気付く、この瞬間が。




残っている酒瓶を探して慌てて酒を煽る。

見ない見ない見えない。
待って。あたしも連れてってよ。なにこれ。毒みたい?


「酒、残ってるかィ?」

「総悟さん?まだ潰れてなかったんだ?」

「俺を誰だと思ってやがる」

残った酒に惹かれてやってきた総悟と屍の転がる地獄の中で2人で飲む。

「毎度毎度、スゲー光景」

「ほんとほんと。近藤さんなんか酷すぎる。ここに女の子がいるってのに」

「え。女の子いた?いないいない。え。どこ?ここ?」

「‥‥‥‥‥‥まぁいいや」

よくないけど!
心の中だけで突っ込む。

「可愛いげねェな」

「どうもー。
土方さんは?」

「知らね。外じゃね?」

「ふーん」

なんだかんだ把握してるじゃないか。

「まァ、飲め」

「どうも。‥‥ってか、総悟さん飲み過ぎじゃ?」

「うっせーよ。
‥もし、これが現実だったらお前ェはどうするんで?」

「これがって、この地獄絵図が、‥‥戦場だったらって?
気が狂うかも。わかんないけど。総悟さんは?」

「わかんねェな」

「うん。わかんない。
あたしは、わかりたくない」

「ガキだな」

「ガキだねぇ。ガキでいたいよ」

「へェ〜」

ガキでいたい。
大人になったけど、大人だなんてあたしは嫌で嫌で仕方がないんだ。

「大人になんてなりたくなかったんだよ」

「お前ェなったばっかりだろ」

「嫌。大人なんてやだ。
あたしはあたしで、大人じゃない」

「子供でもねェ」

「‥‥‥‥総悟さんは大人になりたいの?」

「さァねィ」

「あたしは、なりたくなかった。
ずっと。バカなことして、刀の稽古して、走り回って、悩んでぐるぐるして、泣いて、たくさん笑って、‥みんなと」

「それが子供だと思うんで?」

「違う?」

「違うっつーか。それ、今のお前ェも変わんねェし」

「‥あれ?」

そう言われてみれば、そんな気もしてきちゃったり。え。バカって。え。

「大人んなって、楽しくないって?」

そんなことない。楽しいよ。

「あたし。勘違いしてたのかなあ」

よくわかんないや。また酔っぱらってきて頭ぐるぐる。
ぱたりと、畳に背中を倒すとちょうど良く頭のところに誰かの体があって、枕状態。
ぐえって一瞬鳴いた感じから山崎辺りかなと思ってみる。

「大人とか子供とかって言いやすが。何がそんなに違うんでィ?
1日は24時間で1年は365日、大人も子供も同じでィ。
毎日毎日いろいろ面倒で、ムカついて。それを大人とか子供でどっちが大変とか言う方がクソだぜ。大人だろうと子供だろうと、それなりに大変なんだ。人生なめんな」

ごろん。総悟さんもとうとう眠いのかあたしの隣に横になった。

「語りますな」

調子に乗って総悟さんの手をとってみる。

「黙れブス。」

あれ。拒否られてない。
手繋いじゃったじゃん?
あわわ、総悟さん?拒否るっつーか、指!絡めないで!

してやったり、と。こっちから繋いでみたのに‥なんか負けた気分。あーあ。恋人繋ぎ!負けだ負け!


「なんかね〜、明るくなったよ、あたしの未来。ね、総悟さん。
先なんて見えないけど、きっとあたしはあたしだから大丈夫。あたしはこれから、たくさんいろいろ乗り越えて、たくさんいろいろへこたれるんだ。あたしだから。
そんで最後にはこんな風に笑うんだ」

「‥眠ィんだからいい加減黙れ」

「はーい。‥おやすみなさーい」

どうせいつもの寝たふりじゃんか。
と、思うような思わないような。
つまり、あたしももう眠気の限界だった。

繋いだ手をしっかりと。

『これが現実だったら』

総悟さんの言葉を思い出した。


こんな終わり方だったら。

あたしはそんな幸せな自分の最後を夢見て。多分気持ち悪くにやにやしつつ眠りにのまれていったんだ。



メリークリスマス。でした。
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