g.short
ベストセラー (?)
あー‥眠い。
日付が変わってから本なんか開くんじゃなかった。
たいして面白くない本だと思ってたのにさぁ。突然謎が深まるんだもんなぁ。
眠くなるために読み出したのに、展開が気になって目ギンギンになっちゃったのが夜明け前。
一気に読み終わったら空がうっすら明るくなってきてた。
(ツイてない‥)
「オイ、夢乃」
朝ごはんを食べ終わった席でダラダラしていたところに鬼が来た。しかも見つかった。
「‥見逃してくださーい。
きっと仕事はちゃんとやり‥やれるような‥気がするような、しないような‥」
「どっちだよ。
昨日は夜勤だったか?」
「いいえー、バッチリたっぷり寝れるはずでしたよー。
それが、あの『山崎』のせいで」
「や‥やまっ‥!?
うぐっ!」
山崎、と言う途中で喉にご飯を詰まらせたのか、副長の顔が変な色になっている。あらら。
「本当、あいつ急に現れたかと思ったら凄いんですよ。寝る間も惜しいってくらい引き込まれちゃって。結局気付いたら朝」
「おおおまえなァァァ!風紀を乱すんじゃねェェ!」
「あー‥『山崎』ねぇ」
「あら。沖田さんも。
今日は早いですね。てか、クマ凄いけど」
「いやァ、うっかりハマっちまいやして。寝てねェんでさァ。お前ェあれはヤバイですぜ」
「ですよねー」
「そそそ総悟まで!?」
「やっぱ不倫はたまんねェな」
「隊長ってば物好きですよね」
あれれ。副長の顔がますますヤバイ色に。
「夢乃!!
ザキとの交際のことは健全にって言いやがるから隊の中でも大目に見てやってきたがなァ‥!」
「ザキ?退がなにか?」
「土方さん土方さん。
コイツは悪くありやせんぜ。
もとは『山崎』があんなところで無理矢理嫌がる彼女を押し倒し‥」
副長は、わなわなと震えると鬼モード全開で飛び出して行った。
「ザァァァキィィィ!!切腹だコラァァァ」
「‥なにあれ、なまはげ?」
「ザキの地獄の一日の始まりでさァ」
その一言で思い当たった。
「‥‥‥副長、勘違いしてない?」
「さぁねィ」
「あ、確信犯。わざとけしかけたんだ?」
「騙される方が悪い」
山崎は山崎でも、
今この頓所で『山崎』といえば『山崎犬三郎』を指す。
星も人種も越えたスペクタクルミステリー愛憎劇で空前の大ブームになっている不倫小説『愛憎の星座(上)』(以下続刊予定)の登場人物だ。
「不倫なんて不埒なもん興味ないなんて言わず読んでみればいいのにね。
同じ山崎でも、退と『山崎犬三郎』じゃあ存在感が違うっての。退の話であんな盛り上がる訳がないじゃんねー」
「不埒なのは土方クソヤローのアタマん中‥っつーか、ザキはお前ェの彼氏だろうが」
「うん、一応?」
「仮にも彼女にこんな言われ方してかわいそーに。あ、断末魔が聞こえるけど幻聴だよね、うん。ついでに土方さんも一緒に死ねばいいのになー」
「棒読みで可哀相がられる方が哀れですけど。
ま、退はMだから大丈夫ですよ。これでもあたしの愛たっぷりあるしー。
さー鬼もいないし、もうひと眠りしよっと」
最強ドSコンビ。
***
ザキ夢だと言い張りたい。
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