g.short
いつかの未来の過去の話 (沖田)
近藤、土方、沖田、3兄弟設定(笑)
「あーもー!総悟のバカ!」
「うっせーよ、ブス」
「うわ、聞いた?トシさん!
あたしに向かってブスだって!」
トシが仕事から帰ってちょっとリビングにビールを取りに顔を出した途端、「おかえり」もなく2人のやり取りに巻き込まれる。
大学に入ったばかりの弟総悟とその幼なじみは今日も相変わらず仲良くつるんでいた。俺が帰って来た時にはすでにこの状態だったから、一体何時間不毛な言い合いを続けているのか。
ただし、これで2人は仲が良い。
喧嘩するほど、というけれど、まさにそうだと俺とトシは思ってる。
「毎度毎度俺を巻き込むんじゃねェ」
大学にも入ったってのに少しも成長していないような弟達に思わず溜め息をつきながらトシが答える。
どーせ今口を挟んだところで、この2人のやり取りは落ち着くわけがないのだから。
「総悟!
夢乃ちゃんがブスなわけないだろう!?こーんなにカワ‥」
「なんか‥ゴリ‥お兄ちゃんに言われても嬉しくない‥」
「!?
ト‥トシ!!夢乃ちゃんが反抗期!」
「あーはいはい」
‥‥ねぇ、なんだか俺の扱い酷くない?
気のせい?気のせいだよね?
まるで駄目な長男だ、と言わんばかりの目でみないでトシ!
「そだ、2人とも、
今日はおでんだよ」
そろそろ総悟の目線が突き刺さり始めたのを察したらしく、トシが俺を引きずりながらリビングを出ようとして、夢乃ちゃんの声がかかる。
ああ、もう本当可愛いなぁ。ウチにお嫁に来てくれないかなぁ。
今夜はおでんかぁ、寒くなったもんなぁ。
母親のいない俺達兄弟の胃袋管理は、これまた母親のいない夢乃だった。いつからだったか、こうなっていたのだ。
仕事で遅い父親と夢乃2人だけの家。
生活力は低いが騒がしいウチ。
補うにはピッタリで、なんだか上手く行き過ぎだと思うくらいだ。
「‥‥腹減った」
メシ、と平然と訴える総悟に夢乃ちゃんが再びイライラしたのがわかる。
ねぇ、なんでお前達そんなに夫婦みたいなの!?
「お兄ちゃんとトシさんももうご飯食べれる?」
総悟、そんなに睨むんじゃありません!
「あ、いや、先に2人で‥」
「えー、一緒に食べたいなぁ」
「食べる食べる!なぁトシ!?」
「わーい、今準備しまーす!」
‥あ、しまった。
とは思っても。
怖くて総悟が見れず、鍋を温めにキッチンへ向かった夢乃ちゃんの背中を見つめるしかない。
くそぅ、可愛い。
「ねぇ、トシさんて彼女いるの?」
「はァ!?」
「考えたんだけどね、
あたしをトシさんがもらってくれたら、総悟達、ご飯に困ることないじゃない?」
爆弾投下ァァ!?
「と思ったけど、駄目だ。
ニコチンとマヨに相当ヤラレてるもんね。末期だよね。やっぱ無理かー。
次男が駄目でも、長男‥は‥もっと駄目だな、お妙さんいるし。
仕方ないな。あたしに彼氏が出来たら、皆たくましく生きていってね」
「「‥‥‥‥」」
どういうこと!?
「安心しろィ。
お前のバカさ加減についていける男は世界広しといえど滅多にいねーよ。探すだけ無駄。
結局合コン行ったってなんにも収穫なかったんだろィ」
「失礼な!ってか情報漏らしたやつ誰!?」
「聞かなくたってわからァ」
トシ‥俺‥もう
歯痒くて見てられないよ。
総悟は不器用なヤツだからなぁ。はっきり合コンなんかするなって言えないんだよなぁ。うんうん。
「もーむっかつく!
だいたい昔から総悟総悟は邪魔ばっかり!ドSもたいがいにしろよ!」
‥がんばれ総悟!
不器用ドSなままじゃ天然激鈍感には一生伝わらないぞ!!
「総悟なんか、あたしがいなきゃ全然駄目なくせに!」
お?
実は結構わかってたり‥?
「総悟のためを思うと、やっぱりトシさんかなぁ」
「あ゛?」
「トシさん!あたし良いお嫁さんになるよ?」
「3食この俺にマヨフルコースでも食わせたいってのかィ、オメーはよォ?」
「まさか!きっと、あたし義弟には優しいから心配しないでよいよ!」
「‥っコラ!総悟!
そんな物騒なモンしまえ!
だからこっち向けんなァァ!!」
「糞マヨラー死ねェ!」
‥‥‥‥‥。
「‥ごちそうさまでした。
ねぇ、夢乃ちゃん」
「なに?お兄ちゃん?」
「あのさ、
そんなに総悟が大事なのになんでトシなの?」
「だって、トシさんのがカッコイイし」
「‥‥‥‥総悟じゃダメなの?」
「えー‥‥‥?
‥‥うーん‥。
あははは、想像つかないわー!」
‥お兄ちゃんは、
あなたたち2人が心配です。
もう少し、大人になってください。
もう少し、素直になってください。
それから、幸せになってください。
俺もトシも。
2人の未来を、楽しみにしていますから。
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