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g.short
哀しい男。寂しい女。(神威)


「夢乃、彼がね、『君、カワイイね』って言ってくれたのよ」





ひどく陳腐な台詞。


そんな安っぽい言葉で女の子が引っ掛かると本当に思ってるのかしら。 馬鹿みたい。



「なんだかドキドキしちゃった。
私ってば考えすぎかな?‥そうだよね、きっと神威くんは深い意味もなく言ったんだよね‥」


いいえ。

あいつの言葉は、そのままの意味。


「もしかしたら、脈あるんじゃないの?
よかったじゃない、楓、前から彼のことカッコイイって言ってたんだし」


おめでとう。

あなたは見事、あいつの次の獲物に選ばれました。




そして、しばらくして。

あなたもあたしのようになるのね。

かわいそうに。






『君、カワイイね』


あの頃のあたしは、
全てがキラキラして見えてた。

今思えば陳腐な言葉でも、
あの頃のあたしにとっては魔法の言葉みたいに感じられた。


あいつの笑顔とか、その一言一言が、あたしを光のように照らしたし、輝かしい未来を信じさせた。





「神威。」

「あれ、久しぶりだね」

「今度は楓なの?」

「楓?んー‥どの子かな、‥ああ、あの純粋そうな子か。
何、仲良かったの?」

「まあね。
あんたのことだから、楓の他にもたくさんいるんでしょう?
あの子は本当に純粋なのよ。
だから‥」

「だから、何?
泣かせるなって?
やだなぁ、泣かせたくて口説いてるわけじゃないよ。
そうそう、知ってる?
あの子、俺に夢中みたいでね。
止めたいなら、残念ながら遅かったんじゃないかな?」

わかってるわよ。
止められるわけがない。
楓の頭の中にはあんたしかいないんだから。
‥だけど‥。

「最低ね」

「本当手厳しいな、君は。
かわいらしく俺のこと信じてればよかったのに。
気に入ってたんだよ?夢乃」

「あんたには感謝してるのよ、これでも。
夢の中にいたあたしに現実ってやつを教えてくれたから」

「そう。
寂しい女だね。
前の君はあの子なんかよりずっと純粋だったのに。
夢が見たければいつでも見せてあげるよ。君なら大歓迎さ」


本当、あんたって奴は。

救いようのない哀れな奴。


いつも飢えて心が叫んでる。

何が欲しいのかもわかんないくせに、飢えて飢えて。



あんたが心から満たされる日が、

いつか、

‥いつか、
やって来ることを、あたしは願おう。



ごめんね。

あたしには、あんたを
救ってあげられなかった。


この謝罪も、
きっとあんたには届かないんだろうけれど。


気付いてくれたらいいと思う。

あんたに安らぎが訪れる、いつかに。





「ごめんね。
愛してたわ、神威」






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あきゅろす。
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