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行ってきます
コスタまで急ぎの配達を受けました。
ついでなので、少し故郷でゆっくりして来ようと思うの。
あと少しの時にごめんなさい。
でも良い機会だから…行ってきます。
「ティファー、なんかクラウドがボーッとしてるー」
朝ごはん。
開店前のお店で家族だけの時間。
一時期は僅かな時間のそれすら、逃げていたのだが。
ケリーが預けられてから、気が付いたらまた当たり前の時間に戻っていた。
彼女が完全に治癒した後、クラウドは二人で暮らすための家をエッジの郊外に建て始め、その完成まであと少しというところ。
それまでの間、ケリーも病み上がりだし、デンゼルとマリンが押しきったこともあり、彼女はクラウドの部屋で寝起きし、クラウドは教会に寝泊まりしていた。
毎朝、店に行って朝食を食べ、彼女とその日の仕事と家の建築作業の分担を決める。
もう随分体力も戻ってきたらしく、仕事も建築作業も全く問題がない。
どころか、完全なソルジャー化のおかげか、ますます体が軽いだのなんだのと戦闘力が上がっているようなのだ。
今回のような長距離の配達も、まぁ問題はないだろう。いや、あるはずがない。
この星で最強だったセフィロスを倒したクラウドに匹敵する存在なんだから。
「デンゼル?ほら、片付け手伝って」
「はーい。ふは、クラウドも寂しいんだな!」
「ふふ、ケリー先生が帰って来たら教えちゃおうか」
「マリン!それナイス!」
「こら、二人とも、その辺にしときなさい。
でも、クラウドもいい加減シャキッとしないと!帰って来て笑われるわよ?あと少しで完成なんじゃなかったの?」
「あと少し、だけど。
………故郷に一人で帰すんじゃなかったな…って」
「………クラウド?」
「…いや、何でもない。忘れてくれ」
「コスタって、先生の故郷なの?」
「ケリー先生、おうち帰っちゃったの?」
「私も初めて聞いたわ」
「……でも、もうご両親はいないはずなんだ」
神羅の崩壊とメテオの混乱の最中、暴動によって亡くなられたと、聞いていた。
『良い機会だから…』と書かれていたし、複雑な胸中だろう、一人で行きたいのかなと思っていたが、やっぱり一人で帰すべきじゃなかったと悔やみ始め、昨晩からずっとモヤモヤが晴れないクラウドだった。
「そっか…。……でも、クラウドがそんなに暗い顔してたら、帰って来て困るんじゃない?」
「だが………。…やっぱり…今からでも追い掛けようかな」
「えっ?」
「なんで?」
「クラウド?」
「……ん?」
「ケリーさん、今日帰って来るんでしょ?」
「…………今日、?」
「うん。3日留守にするからクラウドをよろしくって。…違うの?」
「えっ?……俺には、しばらくゆっくりしてくるって………」
いつ、とも書かれてなくて、一週間は覚悟をしていたのに。
「先生、3日って言ってたよね?」
「うん」
子供たち二人のやり取りに、ホッとしてモヤモヤが晴れていく。
「ふふ、良かったわね、クラウド。…にしても、ケリーさんが連絡ミスなんて珍しいわね。急いでたのかしら」
そういえば、急ぎの配達だと書いてあった。
ホッとした。ただその一言に尽きた。
なら、今日は仕事もまだ入っていないし、新居の完成に向けて精を出そう。ラストスパートをかければ、今週には住める状態になるはずだ。
そう思えば心は軽い。
少なからず浮かれていた、ってことなのだろう。
その日も、次の日も、ケリーは帰らなかった。
「クラウド、……書き置きは、何て書いてあったの?」
「急ぎの配達が入った。しばらく故郷でゆっくりしてくる。だけだ」
「私たちには、3日って言ってたんだけど……途中で何かあったんじゃ…」
「ケリーが対処出来ない事態が?」
「……………それはないか……」
「やっぱり、一人で帰すんじゃなかった。
両親と、あんまり上手くいってないって…昔、聞いたのを思い出したんだ。…俺、あの頃何にも考えずに何度も母さんの話して、、、そりゃ、一緒に行きたいなんて思わないよな…」
「クラウド…。
でも、やっぱり何かあったのかもしれない!
何か………あっ、ほら、あれは?」
「あれ?」
「タークスの居場所発見器!」
「……っ、持ってくる!」
モニターが示したのは、
「これ、コスタじゃあないわよね?」
「これは……」
ザックスの故郷、ゴンガガだった。
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