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願いの果て
「そこをどけよ、とっ!」
「死なせるもんか!
……絶対に、守ってみせる!」
ギリギリと、バスターソードで受け止めたレノの剣が音を立てる。
レノがこんなに物理攻撃力を発揮するとは、思っていなかった。
正直言って、これで生身の人間とは恐れ入る。
さすがタークス…とはいえ、レノはこんなに強くなかったはずでは?
本気を出してなかっただけか。
それとも……。
『愛してたぜ…!』
彼女の最期を誰にも譲らないっていう強い意志の表れか。
だけど。
「そんなに、大事か?
こいつにとって、生きてる方がよっぽど辛いことだって…わからないのか、と?」
「わからないっ!
わかってたまるか!!
生きてたんだ!…生きていてくれたんだ!
もう二度と、大切な人を失いたくない!
嫌われようが、憎まれようが!俺は、必ず守ってみせる!」
「………ってさ。お姫様。っと、あぶね」
「は!?……っケリーっ」
レノは盛大な溜め息を吐くと、急に力を抜き。レノの構えていた剣がバスターソードに弾かれて飛んでいった。
その軌跡は、レノの前髪を掠め、ケリーに向かって。
咄嗟に、ケリーに覆い被さるように盾になろうとしたのだが。
彼女の周りに魔力の膜のようなものが展開されていた。
す、とケリーが手を伸ばすと、その膜がすす、と更に拡大していく。
同時に、彼女はクラウドに触れたからか、それはクラウドを通過して、クラウドと彼女を包むように広がった。
バリアか?とは思ったものの、何分咄嗟のことだったため、クラウドは勢い余ってケリーに抱き付く形になってしまい。
それから、クラウドの頭上で、カランという剣が弾かれた音がした。
確認してみれば。
レノの剣はケリーの展開したウォールのような魔力膜にぶつかり、無事に地に落ちて転がっていた。
「………やれやれ、と」
レノが頭を掻きながら剣を拾いにやって来る。
まだケリーを狙う気だろうか。
クラウドは、片腕でしっかり彼女を抱き込んだまま、レノに対抗すべく魔法の詠唱準備を始めた。
「あー…心配すんな。
もう手を出すつもりはねぇよ、と」
「……本当か?」
「何、俺ってそんなに信用ない訳?
傷付くわー。っと。
………襲わねぇよ。襲ったって、返り討ちにあうだけだもんな?
恐らく…ケリーを殺せるとしたら…もう、この星にはお前だけだ。クラウド」
「は?」
「その、防御魔法。知ってるか?」
クラウド達を包む魔法膜のことか。
「……ウォール…なのか?」
「ウォール、シェル、…プロテスの複合魔法。
そんなもん、詠唱もなしに張られちゃ…破るだけでも一苦労だぞ、と」
クラウドは信じられない思いで、腕の中のケリーに目を落とした。
「しかも。これ、無意識に発動したんだろ?」
「…………」
「何だ、お前も発動するとは思ってなかったのか?
使い手の意思に関係なく無詠唱無意識発動なんて……現役の頃の習慣ってのも恐ろしいもんだな?と」
「……そこまで読んでて…どうして、マテリア嵌めてきたの。
レノのマテリアがなければ、私の発動は防げたかもしれないじゃない」
そうだ。
ケリーは自分でマテリアを所持していなくても、他人の持つマテリアが同じ空間にあれば問題なく使うことが出来た。
それはレノも知っていたはずだ。
「これは、俺の護身用なんでね。
知ってるか?
元神羅の英雄サマは、マテリアすら存在しなくとも、魔法を発動することが出来た。……お前が一番良く知ってたはずだな?と。
もう、お前はセフィロスと近いレベルでソルジャー化している。
この場にマテリアがあろうが無かろうが…関係ないって訳。
現に、プロテスのマテリアはこの場にはない。だろ?」
「…………」
「あきらめろ。
もう、お前は…死ねないって。
俺にも殺せない。残念ながら。
その制御装置着けててコレだもんな。やれやれ、と。
殺せるとしたら唯一のコイツは、こんなに意地になってでもお前を守るってうるせぇし」
困ったなー、残念だったなー?
酷い棒読みでふざけながら、剣を回収したレノはクラウド達に背を向けた。
「明日。
エッジの地下研究所で待ってる。
引き摺ってでも連れてこいよ、クラウド」
「え?」
「言ったろ?検査の準備しとくって。
もうどうしようもなくたって、一応、検査くらいは受けてもらわないとな、と。
お前もだ、クラウド。
ソルジャーの定期検査、ついでに受けろよ、と」
「あ、ああ」
「レノっ…!」
ケリーの声に少し足を止めたレノだが、振り返ることもなく、
「また明日、な」
それだけ言って、手を振って、
教会を後にしていった。
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