[携帯モード] [URL送信]

ff
再会の教会

教会に、面倒なやつが現れた。


「お久しぶりっと。元気か?」

「…レノ…と、誰だ?…ルードでも、…ルーファウスでもないな?」

「あーと、こいつも星病でね。
それも、ずっとほっといたせいで、一人でまともに歩けないほど痛むんだと。
たぶん、常人なら正気じゃいられない状態だと思うんだぞ、と」

「てことは…。常人じゃあない、というわけだな?」

「もし、極悪人だったとしたら、
この泉のご加護には預かれないのか?と」

「………いや。…この泉は、俺の許可などいらないだろ。
ルーファウスだって受け入れた泉だ」

「さすが、エアリスのご加護だな、と」

「で?フードのそいつは何者なんだ?」

レノはゆっくりとソイツを教会の椅子に寝かせて、ご丁寧にフードを直し、体も長い長いローブの裾を整えてやっていた。そんなに中身を隠したいのか。
しかし、レノの割りには手つきが優しい気がする。
中身は相当のお偉方か…相当の重傷者か。

「さて、誰だろうな?
…おっと。オレは野暮用があるんでこれで。
コイツ頼むな、お前に預ける。ちゃんと治るの見届けてくれよ、と」

「お、おい、待てよ、レノ…!」


完全に、押し付けられたな。
レノのやつ、顔も見せないフード野郎を置いていくとは。
フードなんて、ルーファウスにしても、セフィロスコピーにしても、嫌な記憶しかないんだが。

だが、フードの奥からは、確かに切迫した状態なんだろう気配がする。
胸が微かに上下するのが、とても浅い。

病人には違いない。
隠したいのは、フードの下の顔が相当痣で酷いからなのかもしれない。


「おい、大丈夫か?」

声を掛けたらフードのやつが横に寝返りを打ち、体を丸めて苦しみ始めた。

「…っ……!っ…!」

おいおい。
相当だ。
ここまで苦しむとは、どれだけほっといたのだろう。

「あんた、とにかく、いますぐ泉に入れ。
ローブだけは、脱げるか?」

返答はない。
出来る状態でもないのか。
この際仕方がないだろう。
絶対に隠したいのかもしれないが、こんなに分厚くてぐるぐる巻きにされたローブで泉に入ったら溺れる恐れがある。
とりあえず、と失礼してまずフードだけは、勝手に外させてもらうことにした。意識があるかも確認したい。

「悪いな、フードは………っ!」

フードの下から現れたのは、見事な、長い黒髪。
どこか柔らかさもあるティファのとは違う、ハリのあるどこまでもまっすぐな、懐かしい、黒髪だった。

「……うそ、だろ…?………ケリー、なのか…?」

「……っ、……う…」

「っ!…早く!泉に入れ!
すまない。…抱えるぞ!」

苦痛に歪む、懐かしい懐かしい、綺麗な人。
痛みに呻く声にも、懐かしい面影がある。
あの少し茶色がかった瞳は、固く閉じられていて見られない。

ローブなんてもうどうでもいい。
いますぐに、治療を。

そのまま彼女を横抱きにして自分ごと泉の中に入っていく。
ローブが水を吸って重たくなるが、クラウドがこの手を離さなければ良いだけだ。

足が浸かり、腹部に差し掛かって。
呻く声が大きくなった。
どうやら左側に痣があるのだろう。
右手で左腕を抑えて苦しんでいた。
その様子から、左側腹部胸部、肩から腕まで。星斑に冒されているのだろうと思われた。
だいぶ拡がっている。
これは、治療に時間がかかるだろう。体の内部にまで及んでいるかもしれない。

ただ、フードを外した顔には痣はなかった。
その代わり首には、やはり左側に、痣が少し見えた。
やはり、広範囲にわたっている。
あと少ししたら…きっと顔にまで及んでいた。


(どうしてこんなにほっといたんだ…)

この病がこの泉によって治ると、この星の人々はとっくに知っている。
ここまでの状態でほっといたのは、間違いなく故意の、何か理由があるのだろう。

こんなに。話しも出来ないほど、苦しむまで。

抱えたままずっと浸かり、始めは痛みで体を強張らせていた彼女も、痛みが和らいできたのかしばらくして表情が和らぎ、静かに寝息をたて始めた。
まだ少し苦しそうには見えたが。
それでも、呻き声が消えただけで安心した。

少しして泉から上がり、どうしたものかと思う。
教会に置いても良いが、…びしょ濡れでは寝かせられない。
熱も出ているようだし…。
着替えが必要で。彼女は女性で。
以前はそれなりの関係だったとしても、今は、…違う。

今は…、クラウドも、彼女も、全てが変わってしまった。
あの頃と同じものなんて何一つないほどに。

彼女を助けるのはレノからの依頼だから。
だが、…彼女は…クラウドに助けて欲しいだなんてきっと思っていないだろう。

だが、…

「………っ、」

腕の中で寒いのか、身を寄せるように動くのを見て、覚悟を決めた。






「ティファ、頼みがある」


結局

その日は、懐かしい瞳を見ることが出来なかった。




[次へ#]
[戻る]


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!