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見えない未来

今、ラグナさんが来てる。

‥なのに、これはどういうことだろう?




「くそー!
まだまだ終わらない!
もう駄目だ!!仮眠してきます!3時間で戻ります!」


ニーダがバタバタと出て行ったのを、私とゼルで見送った‥と思ったが、隣のキスティスの席で書類と睨めっこしているはずのゼルは机に突っ伏していて反応がない。

(当たり前か。昨日から徹夜だったんだから)


ラグナさんの訪問中は、その相手をするためにスコールが執務室から抜ける。
キスティスとシュウは任務。
ただでさえ人不足で忙しいのにそのうえ、ラグナさんがちょいちょい問題をややこしくしてくれるから、執務室はこんな有様だった。

一応、ラグナさんはガーデンとの会談という名目で訪問して来ているので、もちろん会談のための資料やら準備もある。
ラグナさんは本当にいろんな話題(というより全世界の諸問題を全部解決したいのかってくらい沢山)を持ち出してくれるから、資料を出す側は本当に大変。

エスタにいた時やってたことだけど、今はこの人数でガーデンの普段の仕事もやらなくちゃいけない。
(スコールも夜中手伝いに来てくれた)


せっかくラグナさんが来てても、これじゃあ全然会えないし。


溜め息ばっかりだ。



でも、しょうがないよね。
仕事だもん。



そんな言い訳のような考えが頭を過ぎったとき。
ドアが開いた。


そこには、会いたいはずの人。


「ケリー‥?」

「ラグナさん?ここは執務室ですけど。
スコールはいませんよ?
‥‥っていうか。今会談中でしょう?」

「ちょっと匿って!」

「はぁ!?」

こそこそと入って来てデスクの横にしゃがみ込む彼を見て、誰が大国の大統領だと思うだろう?

また逃げ出してきたんだろう。やれやれだ。

「全く。親子で鬼ごっこですか?」

「いや、キロスも鬼だ。
‥‥ん?
親子って‥気付いたのか?」

「まぁ一応」

「そうか」

ラグナさんは、照れるなぁとか言って笑う。


「どうして、『スコールを頼む』なんて言ったんですか?」

私は言ってしまってから、しまった、と思った。
言うつもりなかったのに。


「ケリー?」

「ごめんなさい。なんでもないです」

「スコールの手伝いは大変か?」

「ラグナさんほどじゃないです」

「はっはっは。
そうかそうか。あいつも真面目だからなぁ」

「‥‥」


会いたいはずのラグナさんなのに、今は無性に逃げ出したかった。
本当は。
‥本当は、仕事を言い訳に会いたくなかったんだ。


「スコールとは、仲良くやってるのか?」

「‥そこそこ、は」

「あのなぁ、俺だってたまには鋭いんだからな?
お前達付き合ってるんだろう?」

「‥‥‥‥はい」

「嬉しくないの?
リノアのことがあるから?
そりゃ、多少リノアはショックだったかもしれないが、2人がそういう結果になっちまったのはケリーのせいじゃないし‥」

「‥‥違う‥っ‥」

「え?」

「リノアに対して心苦しいのも確かだけど。
それよりも苦しいものがある。自分自身の気持ちが、消えてしまえばいいと思う。
‥私はわかってるの。
魔女と騎士の絆も、未来も」

「未来?」

「私がここでスコールと一緒にいても、未来を先延ばしにするだけなんだって。
誰にもなんのメリットもない、ただ時間を無駄にするだけなんだって。わかってる」

「‥‥‥」

「だけど、私は卑怯だから」

卑怯だから。

近くの安らぎに甘えて、見えないふりをする。

叶わぬ想いを、忘れたいから。

終わりのある愛に、すり替えようとして。

彼を通して、貴方を見ている。


「卑怯だなんて言うな。
時間を無駄にしてるなんて言うな。
ケリーは卑怯なんかじゃない。
それに、スコールはそんなこと思ってない。
ケリーと一緒にいる時間を大切にしてる。
じゃなかったらそもそも一緒になんていないだろう?あいつの場合」

ほら、そうやってすぐ私を甘やかす。

「運命も絆も未来も、決まってなんかない。
2人で作っていくものだ」

「‥一つだけ聞かせて、ラグナさん。
ラグナさんは、こうなることをわかってた?」


「俺は、ケリーに幸せになってほしかっただけだよ」


ラグナさんは、私の手をとりながら、少し悲しげに言った。



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あきゅろす。
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