[携帯モード] [URL送信]

ff
聞いて欲しいから

『ラグナは、あんたの何なんだ?』


いつか、話すことになるって思ってたけど。

こんなに早く聞かれるとは思ってなかった。


もしかしたら、話さないうちに「さようなら」かも‥なんてことだって考えてた。




まさかの計算外。




人の距離って、不思議ね。

少しでも近付けば、どんどん近付く速度が加速する。



‥それが、ちょっと怖くて、


少し、こそばゆい。









正直に、全部聞いて欲しいって思ったのに、
いざ話すとなると話しにくくて、
「そのうちね」なんてごまかしてしまって。

でも、

スコールには
ちゃんと話さなきゃダメだ。
ラグナさんのこと。
ちゃんと知って欲しいから。

私のことも‥知って欲しい。






今日は本当に久しぶりに
全く何もしなくて良い休暇をもらえた。

しかも、執務室全部!
(ニーダだけは任務から帰ったばっかりで報告書を書いてる模様)

休暇を満喫すべく、
ゆっくり起きて遅めの朝ごはんを食べに食堂に行けば、スコールとシュウが一緒に食べていた。
たまたまとはいえ、すごく珍しい組み合わせ。

年少クラスの様子を見に行ったシュウと別れてから、
私は、意を決して切り出してみた。

『話があるの』



そんなこんなで
今、彼は私の部屋でコーヒーを飲んでたりするのだが。

‥‥何、この緊張感!

部屋にスコールがいる!‥とかいう乙女な緊張感じゃないよ、今更。

だけど‥‥



「‥あ、あのね、スコール‥」


「なんであんた、そんなにガチガチなんだ?」


‥‥笑われた!


「緊張するのよ!
だって、ラグナさんの話は‥私にとっては全て‥‥私の‥全てだから」


「ラグナが、全て‥?」

途端にちょっと不快な顔をするスコール。
眉間にしわが。


「そうじゃなくて‥
‥‥とりあえず、聞いて?」


スコールが頷いたのを確認して、
私は話し始める。








私を、初めて怒ってくれた人がラグナさんだった。


自慢じゃないけど、
私はサイファーやスコールみたいに問題児じゃなかったから、ガーデンでは褒められることしかなかったの。

私は子供の時に戦争で両親を失って、引き取ってくれた祖母も病気で亡くした。
それからはずっとガーデンで暮らしてきた。
家族もいないし。友達も少なかった。
だから、SEEDだけが目標で、SEEDになってからは任務のためだけに生きてたようなものだったの。

ほかに何もなかったから。

任務の中では何でも出来た。何にでもなれた。
例え偽りでも、人と触れ合うことが出来た。
‥今となっては、それが好きだったんだと思う。

戦うことも。
嫌いじゃなかった。
私が戦うことが誰かの意味になるのなら。
その中で命を落とそうと、別に怖くなかったの。



そんな中で、F.H.に任務で寄ったのよ。
私の任務の中に「エスタの現状調査」っていうのがあって、どうせガーデンも機能しなさそうだったから、歩いてエスタ入りした。
スコール達と一緒ね。

大塩湖の、例の入口で
メンテナンス中の作業員をモンスターから助けたのがきっかけだったわ。

っていうか、まさか、作業員に大統領が混じってるとは思わないじゃない?
大統領ですって言われても信じられないし、事実だと聞いて呆れちゃった。
ま、それは良いとして。

もともと、用心棒がわりに置いといたモンスターが、コントロール出来なくなっちゃってたのね。
仲間呼ぶわ、強いわ、で困ってたから助けてあげたんだけど、「なんて戦い方するんだ!」って怒られた。
‥それがラグナさんだった。

結局、大統領の護衛として採用された後も、事あるごとに怒られたわ。
補佐官に認められた後も。



「ケリーはどうして自分を大切に出来ない?
どうして、自分を投げ出すんだ?」
「一体、自分が何をしたいか考えたことあるか?」

「ケリーは、誰にも‥何も期待しないんだな」



私には、ラグナさんの言ってることがわからなかった。



でも、ラグナさんは一つ一つ教えてくれたの。

家族とか仲間とか、人を信じること。思い合えること。
私が見ようとしなかった、私自身の姿。
人に甘えることも。
全部、教えてくれたのはラグナさん。



独りで生きるな。俺達と、一緒に生きようって‥。
俺を信じろって‥言ってくれた。


月で会って、短い間だったけど仲良くなったエルにも「もっと好きなように生きなさい」って怒られたわ。
これでもマシになったのよって言ったら、「まだまだ足りないわよ!」って。
ラグナさんより怖かったな。



‥で、
エスタでいろんな後始末をしてたんだけど、
こうしてガーデンに戻ってきたってわけ。







「わかったでしょ?
私が、やっと私自身の人生を生きるようになったのは、ラグナさんに会えたおかげなの。
だから、ラグナさんについて話すことは、私の全てを話すことなのよ」


「どうしてガーデンに戻ってきたんだ?」


「ラグナさんの頼みもあったし。
‥‥戻ってくるのは嫌だったけど、いつでも待ってるから、やり直しておいでって言ってくれたから‥」


「ラグナが好きなのか?」


「大好き。
エルも、キロスさんも、ウォードさんも」


「いや、そうじゃなくて‥」


「‥‥‥例え私がラグナさんを想ってたとしても、
彼には迷惑でしょうね。
‥それに、
私には、スコールがいますから。‥‥そうでしょ?」


「‥いいのか?」


「何、今更。
信じてくれる限り、」


「ケリーの心は俺のもの?」


「そのとーり。
大事にしてよね」







ラグナさん。

私、ここガーデンで自分の力信じて頑張ってるよ。

どうしてラグナさんが、
スコールを頼むって言ったのか、
わかった気がするけど。


私とスコールのこと、
知ったら驚くかな?

すごく喜ばれたら、
それはそれでちょっと複雑だなぁ。








.

[*前へ][次へ#]
[戻る]


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!