ff エアリス 「‥あ、やっぱり。来ると思った」 その女の子は、いつも通りにふんわりと微笑んだ。 「こんにちは、エアリス」 「久しぶりだね、ケリー」 「そうね。久しぶり」 「今日は?」 「もちろんお仕事。だけど毎回ながら、友達と過ごして良いなんて、本当休みみたいなお仕事ね」 「そっか。 ツォンさんって、優しい先輩なんだね。ちゃんとケリーのこと見てる。なんだか元気ないもの、今日」 そうそう、ケリーの好きな色の花、咲いたよ!と彼女のお花畑に案内された。 それから、いつもみたいに一緒に花の手入れをして、話をした。 教会の椅子に腰掛けて、私がお土産として持ってきたキャンディーを一つずつ味わって一休みするのも、私がエアリス当番の時のお決まり事みたいなものだ。 残りのキャンディーはきっとスラムの子供達に行き渡るのだろうと、いつも考える。 「一緒だね、ケリー」 「ん?」 突然のエアリスの言葉。 いつものことといえば、いつものことなのだが、それにしても、今日は特に唐突な気がした。 「ザックスと一緒」 「私?」 「うん。 おんなじ顔、してる」 「ええ!?やだ、なにそれ?」 「えーっと、顔っていうか。 表情、かな?」 「‥‥‥‥そっか」 そっか。ザックスも、一緒か。 「悲しいんだね」 「うん‥悲しい。とても」 「ザックス、泣いてた」 「‥そっか。‥私は、泣かない」 今は、泣かない。 「嘘つき。 ケリーの心、ずっと泣いてるよ?」 「‥ここでは泣かない。‥ここはザックスが泣く場所だから」 「意地っ張り」 椅子から降りたエアリスは、私の前に、手を腰に当て‥所謂仁王立ちの姿勢で立ちはだかる。 そんなエアリスも可愛いと思った。 「エアリス、少し話してもいい?ある素敵な先生の話」 エアリスが今度はにっこりと笑うと、どうぞ、とでも言うように再び隣に座り直した。 「私には先生がいてね、よく怒られていたの。 お説教も多くて、いつも夢を持て、誇りを持てって言ってた」 「素敵だね」 「うん、あの人は夢があって、誇りがあって、かっこよかった。 男の子達は、それを目をきらきらさせて聞いてた。 耳タコってくらい聞き飽きてたけど、きっと彼らはそれを楽しみにしてたと思う」 「‥夢と、誇り、か」 「男の子達は、みんなそれぞれに自分の夢と誇りを抱き始めた。 先生の背中を見て。 だけど‥、私には自分の夢も誇りも、見付けることが出来なかった。みんなが羨ましかったんだ。ずっと」 「‥‥‥」 「代わりに、縋りたい約束と、揺るがない覚悟なら、私にはある。 でも、きっと‥それらは夢でも誇りでもないの」 「縋りたい、約束?」 「ちゃんと約束したわけじゃない約束。みんなのところに必ず帰る。約束」 「じゃ、覚悟、は?聞いてもいい?」 「つまらないけどね。 私が、『死神』であるための、覚悟よ」 「‥‥強いんだね、ケリー」 「そうかな‥?」 「うん。 それに、大丈夫だよ。先生の言ってる夢も誇りも、ちゃんとケリーは持ってるから」 気付いてないだけ、とエアリスは微笑んだ。 アンジール、 私は貴方のような人になりたかった。 出来ることなら、私達の成長をずっと見ていて欲しかった。 貴方は、私達にとって、英雄だった。 アンジール、 ありがとう。 . [*前へ][次へ#] [戻る] |