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伝えたいことがある
寮、保健室、図書館、校庭‥‥考えられる場所は考えられる限り、全て捜した。幸いだったのは、ガーデンが飛行中だったってことか。
(あとは、‥‥まさかな‥)
そんな思いで訓練施設へ
入っていった。
(‥‥いた。‥‥まじかよ‥)
訓練施設には、グラット2匹を相手にしているケリーの姿。
喧嘩(‥なのか?)をして、一人になりたい時、
訓練施設で戦闘、という選択をするのは、俺やゼルならまだしも、女子としてどうなんだ‥と頭を抱えたくなる。
キスティスが仕事で揉めて執務室から出て行った時は、確かガーデン内でニーダ相手にカードで発散していたはずだし、
リノアは、いつも部屋でふて寝をしているか、アンジェロと一緒にいた。
(‥別れる前はサイファーのところにいたな)
どんなに怒っていても、
リノアは必ず、俺が迎えに行くのを待っていた。
ケリーは、2匹のグラットをそれぞれ一撃で倒すと、
今度は襲いかかってきたアルケオダイノスへと切りかかる。
(さすがに、手を貸すべきだよな?)
と迷っているうちに。
ダブルでグラビデが放たれ、アルケオダイノスの攻撃をあっさりとかわして。
ひらり、と跳び上がり、ケリーの細身の太刀が光る。
その動きに目を奪われた俺は、
結局、アルケオダイノスが倒れるまでその場を動けなかった。
こんなに自分以外の安定感のあるバトルを見たのは初めてだったし、
俺は初めて、他人のバトルに見入ってしまった。
軽く嫉妬すら覚える。
それだけ、彼女の戦う姿は美しかった。
(これが、幻のSEEDか‥)
「‥ケリー」
戦いを終え、太刀の手入れをしているケリーの背に声を掛けるが、
反応はなく、仕方なくもう一度その名を呼んだ。
「ケリー、‥迎えにきた」
「‥‥‥ごめんなさい。
明日には必ず仕事に戻るから。
‥だから、今日はもう放っておいて」
ケリーは振り返ることなく言う。
「‥任務は、キスティスが代わってくれた」
「‥‥そう。
でも、もういいわ。私の任務だもの。私が行く」
それだけ言うと、ケリーは倒れるアルケオダイノスを越えて行こうとする。
「待てよ!」
腕を掴めば、振り払わられた。
振り返った彼女に睨みつけられる。
「私は、リノアじゃないっ!
迎えに来てほしいなんて期待してない!頼んでない!」
「なら、どうして出て行ったりする?」
「‥謝らなきゃって、
わがままだったなって‥、
スコール達に謝るために、気持ちの整理したくて‥
だから‥、一人にして」
「もう謝っただろう?
それに、わがままだったらいけないのか?
リノアに比べたら、わがままのレベルが違うが‥」
「はは‥、‥そっか」
少し笑った顔が寂しそうに見えて、思わず抱きしめていた。
「一人じゃなきゃ、素直になれないのか?
わがままくらい、言えばいい」
「‥でも、」
「俺達は、何なんだ?
あんたは『恋人じゃない』と言うけど、
俺は、そう思いたい」
「リノアは、」
「別れたんだ、関係ない。
『絶対の信頼』で繋がっても、結局あんたが一人を選ぶなら、それは『絶対』じゃない。
契約違反だ」
「‥‥‥‥」
「証明してみせるんだろう、絶対の信頼関係ってやつを。
それが『愛』だと言ったのは、あんたじゃないのか?
俺は、あんたを愛しいと思う」
「‥スコール‥。
絶対の信頼は、愛じゃなかったよ。
‥‥だけど、
リノアの代わりじゃないのなら‥」
「何言ってんだ、あんた。
あんたはリノアじゃない。
リノアの代わりなんて、いるか」
「‥‥なら、
認めてもいいよ。
『私も、スコールが愛しい』。
恋人でも、いいよ‥悔しいけど」
「なんで悔しいんだ」
「悔しいよ。
だって、似てるんだもの」
「はぁ?
誰が誰に?」
「だから、証明して。
スコールはスコールだってこと。
私が迷わず、スコールを愛してるって言えるように」
「おい、答えになってない。
一体、誰の話だ?」
「へへ、内緒ー」
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