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『死神』B
「B棟‥ですね。
ここはお任せしていいですか?」
「わかった。こいつらを縛って、班員を治療したら俺もすぐ行く」
「では、お願いしま‥っ!?」
立ち上がった瞬間、銃声が響き、私の一つにまとめていた髪が解けた。
銃弾によって切れた髪が一掴み宙に舞って、地面にゴムの落ちた音がする。
それから。どこかで舌打ちする声が聞こえた。
その人影は瞬時にC棟内へ消え、私も追いかけて内部へ入った。
―‥間違いない。あいつだ。
でも、どうして!?
狙撃犯を追い、2階へ駆け上がると、彼は爆薬を設置していた。
―‥まずい!
銃に手を伸ばしたが、火薬に銃はまずい。マテリアも攻撃系は炎しかない。
―‥あれは!
足元で緑色に光るマテリアを拾い上げて放つ。
「フリーズ!」
「っ‥嘘だろ‥新人が‥封印のマテリアだと?‥しかし、残念だったな、俺にストップは効かない!ST防御はタークスの基本だろう?思いの外新人兵を削れなかったが、タークスのホープを道連れにするなら許されるだろう!
一緒に死ね!」
「っ!」
爆薬に点火しようとする彼の右手に向かってクナイを思いっきり投げた。
『ウータイの投げナイフだ。お前得意だからさ。お前の命を守ってくれるように』
ザックスとレノがタークスに入ったお祝いに、贈ってくれたものだ。
「‥くぅっ!なんだこれっ!」
クナイはしっかりとジャンの右手に刺さっていた。
「反神羅組織と繋がっていたのね。‥もういいでしょう、降伏して」
その時、階下から(恐らくD班達)応援が駆け付けて来て。ジャンは舌打ちをするとニヤリと笑って。私は、奴から魔力を感じた。
「‥ファイ‥!!」
必死だった。
決死の覚悟で投げた2本のクナイはどちらも、彼に詠唱させることなく、彼の急所に突き刺さった。
それが、終わりだった。
彼は倒れ、応援部隊は立ち尽くし、私は、それらをただ見ていた。
「本演習の担当官へ報告に行きます。後は宜しくお願いします」
まだ動けないでいるソルジャーに声をかけて、私は、その場を後にした。
とにかく、この場を離れたかった。逃げ出したかった。
演習棟から駆け出した。
「ケリー!無事だったか!」
「ツォン、さん‥ツォンさん!」
後に、ジャンとA班の半分以上が反神羅組織の人間であったことが判明した。それから、その班割を行った士官の一人も口を割る前に自害したという。
私はこの演習を忘れることはできない。
彼の命を奪ったクナイと、封印のマテリア。そして、この日を境に呼ばれるようになった『死神』の名に誓って。
正義のためだとしても、皆を守るためだとしても。私が同じ人間の命を奪ったことには変わりはなく。
『死神』の名は、その罪の名でもある。
私は一生背負っていくの。
決して償うことのできない罪を重ね続けながら、審判の日を、待つのだ。
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