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ソルジャーフロア (S、Z)

――‥ポーン

エレベーターが目的階へ到着したことを知らせる。

ソルジャーフロア。

ビルの構造的には、タークスフロアと全く同じ階にある。
だが、分厚い壁に隔たれ、余計な電波一つ流れて来ることはない。
もちろん、お互い行き来できる扉一つない。

強いていうならば、タークスフロアがどこに存在するのかを知る社員は数少ない。
エレベーターにはただソルジャーフロアとだけ記してあり、普通のエレベーターではまず辿り着けない。
専用のIDを使わなければ使用出来ないタークス専用のエレベーターは、一応各階に通じているが、ほぼ全ての階で機械室や資料庫の一角など一見目立たぬ場所となっている。
地上階などで降りれば、非常階段近く、誰も使わない故障している自動販売機の隣から出てくることになる。社への出入りすらも、他の社員の目に付かぬように、だ。

それゆえ。
私達タークスがソルジャーフロアへ用がある場合、一度別の階へ降りてから、エレベーターを乗り換えて向かうことになる。

本当めんどくさい。




「おっ、珍しいな」

声に振り返ってみれば、

「カンセル、久しぶり」

「おお、飲み会以来だな」

「そうね」

ザックスやレノと同じくらい長い付き合いのカンセルだった。

「ザックスから噂ちらほら聞いてるぜ」

「どーせまた適当なこと言ってるんでしょ?」

「最近のヒットは‥英雄様叱り飛ばしたとかか?」

「‥全く。
叱り飛ばされたいのね、アイツ」

「はは、だけど、
後輩の奴ら本気にしてるから、お前のこと怖がってるぜ、マジで」

「いーもん、怖いお姉さんで」

「後輩って言ってもほとんど歳じゃオレ達より上だからな。お前のが下だろ」

「あ、そっか」

「今日は?
ザックス?英雄様?」

「どっちも。
報告書取りに来たのよ」

「そんなもん直接取りに来なくても‥」

「ザックスは毎回『なんか上手いこといきました』。
セフィロスに至っては『特にない』。
報告書によ!?
どうせ直させるならその場でやらせるわ」

「‥なぁ、英雄様叱り飛ばしたって‥」

「‥‥近いことはしたわね」

「すげーな。
つーか、お前‥からかわれてんじゃね?あの2人、やろうと思えばまともに報告書くらい書けるだろ?」

「やっぱり?‥‥考えないようにしてたんだけどな‥」

「‥お疲れさん」


「ケリーー!」

廊下にばたばたと足音が響いて、ザックスが駆けて来る。

「遅ぇぞ!
セフィロスがすでに紅茶入れちまってるし!」

「今日は?」

「ルーファウスの差し入れのシフォンケーキ!」

「期待できるなぁ」

「‥‥は?報告書‥は?」

カンセルがポカンと呆けて聞く。

「おお、『とっておきの』出来てるぜ?」

「じゃあね、カンセル。
また飲み行こうね」

「‥お、おぉ‥」



薄々気付いてはいたの。

だって、あまりにもとんでもない報告書だったから。
勢い込んで文句言いに乗り込んだら、何故かお茶とケーキが出てきて。
すごく美味しいそれに満足して、乗り込んだ目的を忘れそうになったころ、書き上がった完璧な報告書を手渡された。

すぐサボるレノの代わりに、ザックスの報告書も引き受けるようになって始まったお茶会。


主任も統括も知ってると思う。

それでも、怒られないのは。



ジェネシスが好きだった紅茶と。
アンジールが好きだった洋菓子。

多分、きっと、それが答え。





「俺、あの中にいつか入りたいって、ずっと思ってたんだ」

ザックスが言ってた、あの3人の絆。

ザックスの夢は実現できなかったけれど。


私達は私達の絆を作ろう?


そのためなら、
何度だって、ひどい報告書に文句言いに行くから。





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