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バラムの夜

「じゃあね、お先に」

「お疲れ様」

キスティスが、まだ仕事中の私とスコールに声をかけて出て行く。

今日は久しぶりに、執務室のメンバーが全員揃ったのだが。
久々のバラムへの帰還とあって、ニーダもシュウも街に出掛けるため早めに仕事を終えていた。

実は、私も仕事はとっくに終わっていたんだけど。

ニーダの誘いを、仕事があるからと断ったため、
なんとなくそのまま余分な仕事まで手を出して時間をつぶしていた。

スコールは、任務明けで仕事に追われている模様。


「コーヒーでも飲む?」

「頼む」


部屋を出ると、ばたばたと走ってきたセルフィとアーヴァインに鉢合わせた。

「ケリー先輩ー!
スコールいますかー?」

「いるわよ」

「久しぶりのバラムだから、みんなでご飯食べよーって思ったんですけど‥」

「誘ってみたら?」

「仕事してたら誘いにくいなーって。
ね、セフィ?」

これはアーヴィン。

「うん、リノアもいるとなると特にねぇ。
確かに、リノアは、サイファーのこと、ちょっと気に入ってたけど、でも、やっぱり‥スコールのこと‥」


「‥‥仕事なら、私がついでにスコールの分もやっとくから気にしないで連れ出して良いわよ」

「「ありがとうございます!」」



2人と別れて、
時間をつぶしてから帰るために、窓からバラムの街の夜景を少し眺めた。
ガルバディアやエスタのものとは比べものにならないが、それでも、このささやかな夜景と海の匂いが、帰ってきたと実感させる。

そうして10分くらいを消費したあと、
自販機で2杯目のコーヒーのボタンを押そうとして、止めた。

(‥1杯でいいか)




「遅かったな」

「スコール?
街に行かなかったの?」

「はぁ?
誰も行くなんて言ってないだろ」

「だけど、セルフィ達が誘いに来たでしょう?」

「断った」

「仕事なら私が引き受けたのに」

「あんたに言われたくないな。
ニーダを仕事があるって断ってたのは、誰だ?」

「あれは‥」

「嘘、だろう?」

「‥バレてましたか。
はい、コーヒー」

「あんたの分は?」

「私は、もう仕事ないし」


正直、
スコールはセルフィ達に連れられてバラムに行くもんだと思ってたから、
スコールの分はいらないかと思ってた。


「行けば良かったのに」

そう言えば、書類から顔をあげたスコールが呆れたような視線を向けた。

「行きたくないのに行くわけないだろ」

面倒そうに言って再び書類に目を落とす。


行きたくないのか、と思いながら、自分の席に戻って散らかった机の上を片付ける。
素直じゃないな、この男も。
いつまで、リノアとすれ違うつもりなのか。
私と信頼関係など築いている場合じゃないだろうに。

スコールが仕事をするのなら、邪魔をしないように先に帰ろう。


「ケリー、」

「なに、リーダー?」

「どうして、ずっと一人で任務をしていたんだ?」

スコールの手はいつの間にか完全に止まっていた。
真面目に聞かれているのを知って、真面目に答えようと試みる。

「そういう任務が多かったし、一人の方がいつも上手くいったからね。
何より、楽だったわ」

「‥そうか。
でも、危険だっただろ?
ST攻撃なんか受けたら‥」

「そうね、
とりあえず、常に即死防御は絶対だった。
でも、ほかは別に‥」

「麻痺やストップは?」

「防げたら防ぐけど、
‥私、精神強いしね。
防げずかかっちゃったら、その時はその時。
効果切れるのを待つ」

「よく今まで無事だったな」

「むしろ、麻痺だのストップだの、やってみろって思ったな。
それで私が倒せるかやってみろって。
そのくらいハンデがないとバトルつまんないじゃない?」

「‥‥あんた、バトル野郎って言われたことないか?」

「あら、別に、バトルが好きってわけでもないのよ?」

「‥とにかく、もうそんな無茶なバトルは止めてくれ。
こっちの心臓に悪い。
これから、ケリーだけじゃない。単独任務自体を認めないようにする」

「‥‥‥わかってる。
もう、そんな無茶なことしないって約束したから大丈夫」

あの人と、約束したから。

「危険な状態に陥ったら、必ず助けを求めることも、約束してくれ」

「‥‥‥‥わかり‥ました」

「どうかしたか?」

「ううん、‥‥どうして
急にこんなことを?」

「急にじゃない。
前から思ってたことだ。
ケリーを単独指名してくる任務の依頼の内容がとんでもないのが多いから、ずっと気になってた」

「ああ、だから最近ぬるい任務ばっかりだったんだ」

「ケリー、」

「あ、ごめんなさい。
不満じゃないです。
普通の任務ですよね」



不意にスコールが立ち上がり、
書類を片付け始めた。

「夕飯、まだだろう?」

「そうだけど?」

「食べに行かないか?」

「バラムに?」

「どーせもう食堂は閉まってる」

「でも、セルフィ達の誘い断ったのに?
リノアに会ったら悲しむわ」

「それがどうした?
その時はその時だ。
‥あいつらはディンの家だ。
鉢合わせすることはないだろう。
おふくろの味、とやらじゃなくて悪いが」

「‥久しぶりに、バラムフィッシュが食べたいな」

「ああ」

「ねぇ、スコール?
仕事はいいの?」

「明日、手伝ってくれるらしいから」

「ふーん?」

「ケリーが」

「私!?
じゃあ、バラムフィッシュはリーダーの奢りね!」

スコールの腕を取って言えば、苦笑しながら
「始めからそのつもりだったんだが」なんて言う。


どっかの頼りない大統領とは大違いね。

なのに、どこか似ている。

似ているような気がするから?

だから、こんなに気になるのかな?


あなたがいつかリノアのところへ帰るとわかっていても、それまでは側にいたいと思ってしまう。


側にいていいと言って。

ラグナのことなんか忘れろと言って。


ずっと側にいることなんて無理だし、
ラグナさんを忘れることだって、
出来ないってわかってる。


だけど。








――‥叶わぬ、望み。





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あきゅろす。
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