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ミッドガルの空の下 (Z)

ミッドガルの外れ。
神羅軍の軍事施設の一つ。

その屋上で生暖かい風に吹かれて見遣るのは、神羅カンパニー本社ビル。

私達の、棺桶だ。


「今日飯食いに行かねぇ?」

「懲りてないの?
先週こっぴどく平手打ちくらったばっかりじゃない」

「『また浮気!?信じられない!』だっけ?まいったよなー」

「なにその他人事みたいなノリ。
しかも今月2回目。
私もうザックスとご飯行くたんびに睨まれるの嫌なんだけど。
そんでその後どうなったの?」

「え?先週って‥ティアナ?カリファ?
あ、ニーナだっけ?」

「‥‥聞いた私が馬鹿だったわ」

「まぁまぁ、
今回は大丈夫だって。
今俺フリーだし、今日はレノとも一緒だし」

「えー、レノも?」

「タークス行きの卒業祝い。
つか最近レノに冷たくねぇ?」

「だって最近しつこいんだもん」

「最近お前が好きだって隠してないもんなぁ。卒業だから焦ってんのかも」

「卒業っていったって、そのうち私もタークス行きよ?」

「決まったのか?」

「決まるも何も、タークス以外に行くところないし。ちょっと考えればすぐわかる」

「‥ソルジャーはいいのか?」

「別に私はソルジャーに憧れてた訳じゃない」

天にそびえる本社ビル。
今はまだ遠いけれど。

「でも、親父さんはどうすんだ?」

「‥‥所長と相談するつもり」

「そっか。
‥はは、レノはケリーがソルジャーになるもんだとばっか思ってるから必死だぞ?」

「馬鹿ね、本当。
だけど、タークスに行くって話をしても、それはそれでうるさそうだし」

「舞い上がるよなぁ」

「来年が大変そう。
ザックスは?ソルジャーの手術日程決まったの?」

「おう、半年後だな。
それまではまだ基礎訓練」

「来年はタークスに私、ソルジャーにカンセル、か。
ここも静かになるね」

「俺らうるさかったもんな!」

「‥楽しかった」

「ああ。
これからも、楽しいさ」

「本当に?
私達は軍に入るんだよ?
お嫁に行くのとは訳が違う」

「何言ってんだよ、お前なんかレノと職場一緒なんだろ?今までと何が違うよ。
それにさ、そのくらいの覚悟なんかとっくに決まってる」

そうだ。
このミッドガルの地を踏み締めたその時から。
私は覚悟を決めたのだから。

「‥うん。
この先に、どんな地獄が待っていても」

「お前の場合、お嫁に行くってことのが地獄になりそうだよな」

「なによそれっ」

睨み付けたら、おお怖いってふざけたようにザックスが笑った。


「おい、お前ら」

「「‥げ」」

突然開いた屋上のドアから教師の一人が入ってきた。
まだ見つからないだろうと思っていたから油断してた。
ザックスなんか顔が変に引き攣ってて笑える。

「げ、じゃない。
お前らときたら、優等生なんだか問題児なんだかわかったもんじゃない。特にザックス!俺の授業サボるとは良い度胸だな?」

「ちょっとザックス、次アンジールの授業だなんて言ってなかったじゃない」

普段の教官ならともかく、仮にもソルジャーには速攻捕まるに決まってる。あれだけ危ない橋は渡らないって約束したのに。私までとばっちりじゃない、馬鹿。

「い‥いや、サボるつもりじゃなく‥うっかり‥」

「ほぉ?
ならば『上手いこと言っといて』とはどういった意味かな?」

「‥‥ええ、とですね‥」

しどろもどろのザックスに思わず笑うと、今度は私が睨まれた。

「ケリー!ロバート教官が泣いていたぞ」

「今日は今度のマテリア実技の試験の練習ですから。私はもうパスできるんで」

「って言っていつも授業に出てないんだろ?
ザックスといいケリーといい‥本当にお前らはどうしようもないな。
ということで、だ。お前ら2人の補習を俺が引き受けた」

「うぇ!?」
「何で私まで!?」

ニヤリ、とアンジールが笑う。

「一般教官の授業カリキュラムでは物足りないんだろ?」

「「‥‥‥」」

ヤバイヤバイヤバイ。
嫌な予感がする。

前回のアンジールの補習で身も心もボロボロになったばかりじゃないか。

ザックスと顔を見合わせるも、お互い血の気が引いている気がする。

「トレーニングルームでセフィロスのデータと勝つまで戦闘。
もちろん、強さは加減してやるが、あくまで『多少』だ。
政宗抜き、くらいだな」

「そんなっ」
「ソルジャーでもねぇのに敵うわけねーだろっ」

「そうだな。
だから2人掛かりで良いぞ?
一緒にサボる程に仲の良いチームワークを見せてくれ」



‥‥‥鬼だ。

だからアンジールの授業だけはサボるなって言ったのに。


ごめん、レノ。

卒業祝いはしばらく無理だわ。




「こうなりゃ‥、‥セフィロスだろうがどんと‥来い?」

「‥生きて帰れますように」






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