[携帯モード] [URL送信]

ff
チョコレート (Z、R)
カチャリ、ソーサーに紅茶のカップを戻し置く仕草は、ザックスよりもレノの方が少しだけ様になっていると思った。
あくまで少しだけ。

「別にお前まで呼んでないっつーに。カンセルと一緒にナンパしてくりゃよかっただろ」

「俺はもう、そーゆーの卒業したんだよ」

「よく言うぜ」

「ザックス君は女の子には困ってませんからー。全然彼女のできないレノ君こそ、少しは焦ってナンパでもしに行ったらいーんじゃないですかねー?」

「ハッ、馬鹿だな、と。
オレはそんな軽い恋愛観持ってないんだよバカヤロー」


強いて言うなら、
ザックスの手はすごく男性的で、レノのは‥女性的とまではいかないにしろまだ比較的繊細に見えるからだろうか。
ティーカップの持ち手の部分を手持ち無沙汰にいじりながら、今度は自分の手をまじまじと観察する。

「その軽〜い頭で『軽くない』とか言われてもね〜」

「オレの頭が軽けりゃお前のはすでに存在してもねぇな。首から先は飾りだろ、ザックスくん?」


女の子の手じゃないみたい。
全然綺麗じゃないし、華奢でもない。指輪とかマニキュアとか、きっと似合わない。(しようとも思わないけど)


「そのザックスくんに負けたのはどこのどいつでしたっけね〜?」

「たかが1コだろ、と。しかもまだ今日は終わってねぇんだよ」


このカフェはお茶もケーキも美味しくて、使ってる食器もセンスが良くて好きだ。
一流ブランドの綺麗なティーカップなのに、この中で私が一番様になってない。こいつらは、優雅なんて言葉は笑っちゃうくらい不釣り合いだけど、生憎見た目だけは良いからそれなりに見える。
なんか悔しいな。


「あれ〜?レノくんはそんなもん気にしないって言ってたんじゃなかったでしたっけ?」

「数なんてどーでもいいんだぞ、と。譲れない一つがあるか、ないかだからな」

「語りますな」

「そりゃあ、な、と。
‥‥ところで」


まあ、見た目なんて今更だよね。この2人と一緒にいれば嫌でも人の視線を感じるし。
私に向けられた女の子の視線なんてツララのよう。どーせ私だけ釣り合ってませんよー。


「「‥美味しいか?」」

「え、うん‥」

いつも通り言い合ってたはずの2人が急にハモるのでびっくりした。

「なんならもいっこ頼んでもいいぞ、と」

「ココアもな!」

レノが奢ると言うのでカフェに来て。でも、勝手にチョコレートケーキを頼まれて。ザックスはザックスでココアを奢るとオーダーして。今、私の目の前にはチョコケーキとココアが並んでいる。

「十分だよ‥チョコケーキにココアだよ?甘いって‥
すいません!ダージリンティーお願いします」

甘いっていうか甘すぎ。
結局自分で紅茶を頼む。

「当たり前だろ、チョコは甘いもんだぜ?」

「だってチョコだからな」

さっきからチョコチョコって‥

「あ、アンジール!?」

まさかの人物が誰かと2人で入って来たのが目に入った。

「げぇ!マジ!?」

「‥似合わないぞ、と‥‥」

「失礼な奴らだな、本当に。
俺はここのケーキが好きなんだよ」

アンジールは苦笑しつつ隣のテーブルに座る。

「‥‥教え子か」

「ああ、出来の悪い、な」

「ひっでー!」

こいつは同じソルジャーのジェネシス。とアンジールは紹介してくれたけど、当の彼は本を開いていて、私達には興味なさそうだった。

「あ、そうだ。
今日会えたから、‥‥これ」

「なんだ?」

「‥チョコ?‥‥あの、ジェネシス‥さんも、よかったら‥」

2人に、持ってたチョコレートをプレゼントした。

「そういえば、今日はそんな日だったか」

アンジールと、すごく意外だったらしいジェネシスさんからお礼を言われた。
それから、みんなで少し話して(ジェネシスさんは参加しなかったけど)(彼はここの紅茶が好きらしい)、私達3人は先にカフェを出た。


「‥‥なぁ、俺達にはないの?」

カフェを出た途端、すごく不満そうにザックスが言う。

「アンジールには買ったやつだけど、俺とレノには手作りとか!?」

今度は急にテンション上がった。
本当馬鹿なんだから。

「残念でした。アンジールと同じのよ。だけど、‥‥さっきジェネシスさんにあげちゃったから‥」

「「あげちゃったから?」」

「‥‥‥残り1コ‥みたいな?」

「「‥‥‥‥‥‥‥‥。」」

「‥‥ごめんね?」


「‥よーし、来いザックス!」

「いいぜ、勝負だ!」

「ちょ‥ちょっと!バカじゃないの!?
わかったから!やめなさいって」

じゃあどうすんの?半分コとかなしだから、と2人に言われて考える。

「‥‥みんなで作ろっか?」

「「はぁ?」」

「だから、今からスーパー行って材料買って、うちで手作りするの。3人で」

「しょうがねーなー」

と言いつつ嬉しそうなザックス。レノは、

「‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥行く」

すごく葛藤してたみたいだけど。


結局、夕方から始めたのに夜中までかかって3人で作った。
出来た頃にはもう何のために作ってたのかわかんないくらい没頭してたり。

2人が出来上がったチョコ片手に帰った後。
結局、今回は私がチョコもらっちゃったわけで。(手作りって言ってもみんなで作ったわけだし)
ホワイトデーにはちゃんと何かしなきゃなぁと思いながら、チョコレートを味わった。





.

[*前へ][次へ#]
[戻る]


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!