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青春の入口 (z)
「あっれ?ケリー、だよな?」

「‥ザックス?」

練習を終えて射撃場から帰る途中、レノの悪友だというSクラスのザックスともう一人に出会った。

「誰?知り合い?」

「ケリー。Aクラスのレノのダチ」

「あー、よくレノがしゃべってる‥」

レノの奴、そんなにべらべらと私のことしゃべってるわけ?

「‥どーも。オレはカンセル。コイツじゃない方のSクラスの生徒です。よろしく」

「こちらこそ‥っていうか、Sクラスが2人しかいないって本当だったんだ‥」

聞いてはいたけど、と正直な感想を伝えると、カンセルは人の良さそうな笑みを浮かべて、お互い様だと言った。

「噂とかレノから聞いていたけど、本当にAに女の子がいるとはオレもビックリ」


「ケリーは射撃場帰り?‥自主練?」

ザックスがこれまた爽やかな笑顔で尋ねてくる。
レノは騙されるなよって言うけど、悪い奴じゃないと思うんだよね。

「うん。新型のライフルが入ったって聞いたから」

「あ、どうだったそれ?気になってたんだ」

「射撃の教官がクソ自慢げに話してたやつだろ?」

「今までのと比べて格段に軽くはなってたけど、安定性はギリギリ、かな。
2人は?これから射撃場?」

「うぉっヤベー」
「俺らこれから武道の授業なんだ」

武道館は射撃場の向かいにある施設だ。

「そう。頑張ってね」

「「サンキュー!」」


私達は別れて再び逆の方向へと
向かった。ばたばたと2人分の足音を背中で聞いた。

しかし。

「ケリーー!!」

ザックスの声に振り返ると2人が武道館の入口近くで手を振っていた。

「今日ヒマー!?」

叫ばないと聞こえない距離。
私はそんな真似したくなかったので、ただ1回だけ大きく頷いて見せた。

「夕飯一緒にどうー!?」

今度はカンセル。

「行くー!」

「んじゃ、こないだレノと行った店に7時なー!」

ザックスとカンセルは大きく手を振ってから武道館の中に駆け込んで行った。



私は、
‥ひたすら困惑していた。



食べに行くのはいいの。
私達、養成所の生徒は皆親元を離れてきた奴が多いから(男子は神羅軍の寮に入ってる奴もいるけど)誰かと食べに行くっていうのは特別なことじゃなかった。

それよりも、
自分が、2人にわざわざ大声出してまで『行きたい』と返答したのに驚いた。

ザックスのせいで調子が狂うのかな、とも考えたけれど、
多分、それだけじゃなくて。
私自身が、変わりつつあるんだ。


――きっと、良い方向に。




父さんや母さんは、変わりゆく私を見たらどう思うだろう?

焦るだろうね、とても。



怒られるかもなと思いながらも、私は鼻歌まで歌い出しそうな自分に気がついて笑った。



「‥オイ。何ひとりで歩きながら笑ってんだよ、と」

「あ、レノ。
今日夕飯レノも一緒に行く?」

「ッ!行く!行くっ!!」

「じゃ、この間の店に7時だそうよ」

「ラジャー!!!」




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