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レノ (R)
※タークス女子のCC前後の話になります。ネタバレ配慮もありません。
※ご都合主義で、ストーリーの順番や時期が変わっている場合があります。人物設定等も、なんか色々その他も、変わっている場合があります。ご了承頂ける方のみ、お進み頂きますようお願い致します。





退屈だった。
夢なんてとっくに泡になって消えてた。
ただ、毎日毎日、戻れない深みに嵌まり込んでいく感覚だけがリアルだった。


「お前、Bでトップだった新入りだろ?ザンネンだったな。
ここではオレがトップだからな、と」

「‥‥‥‥」

「まぁビビんなよ。
オレはレノ。お前は?」

「‥‥‥‥‥ケリー‥」

「ケリー、仲良くやろうぜ」


Aクラス。
神羅が秘密裏に運営している、養成機関のクラスの一つ。
ここは、今まで私がいたBクラスまでと違い、一般兵以外‥特殊部隊などを養成するクラス。
そして、その上に存在するSクラス。ソルジャー養成クラスが存在する。

『実力は申し分ない。
が、やはり、男ではないという問題があってな。
一般兵の特殊部隊には女性部隊もある。しかし、それはあまりに‥。Bクラスでは君を持て余しているからな。
君の希望はソルジャーだったね。君が男なら何の迷いもなくSに推薦できたが。‥君は、タークスという機関を知っているか?
あそこには先日、女性が配属された。‥‥少し考えてみてくれ。もちろん、ソルジャーの道もまだ残されている』


スカウトを受けた時、タークスに必要な人材だと言われた。
だが、私の父親はぜひソルジャーに、と強く願ったのだ。
困ったタークスの主任は、一先ず適性を測るといいと養成所を勧めてくれた。
私が最初に入れられたのはBクラス。女だから、という理由で。




―――‥トスッ

的の中心に正確に突き立つナイフ。悪くない。
最初こそ、的の下ギリギリにしか刺さらなかったけれど。
(‥慣れた、かな)

「‥‥おい‥ケリー、Bでもナイフ投げ練習してたのか?」

また。
いちいち突っ掛かってくるレノ。

「いいえ」

「今日が初めて‥と?」

「射撃の方が私は好き」

こうして的からナイフを回収しなくても良いし、と心の中で溜め息をついてナイフを抜く。
今日はもう終わりにしよう。
コツは掴んだ。

「練習するならどうぞ。私は帰るから」

所定の場所にナイフを戻し、立ち尽くす赤毛に声を掛けたら、彼は急に怒り出した。

「ちょっと待て!!
勝負しようぜ」

また。

男の子はいつもこう。
面倒事が好きみたいで相手にすぐ吹っ掛ける。

「‥‥種目は?」

ここで突っぱねれば、レノ一人ではなく集団から敵視されると簡単に予想できた。

「そうだな、‥剣、は?」

ニヤリ、とレノは笑う。

「‥わかった」

流石に、Aクラス。自称トップだ。

「好きなの使えよ」

レノが選んだ練習剣は、極めて一般的なソード型。
Aクラスともなると、一風変わった癖のある剣が揃っている。
(助かったな‥)

「私は、これ」

「刀か、いいだろう。
いざっ勝負!」


レノが剣を振りかざし、向かってくる。あの勢いはまずい。
私はその直線上から少し身を外して攻撃に備える。
タイミングを間違うな。
刃と刃が接するのを感じた瞬間、大きく刀で弧を描くように薙ぎ払いながら身を引く。
バランスを立て直して再び向かってくるレノの攻撃をかわして、横を取る。

「‥クソッ!」

レノの首元に、私の刀の刃はあった。

カラン、とレノの剣が落ちた音を聞いて、私も刀を引いた。


「‥‥なんなんだ、お前。
本当に女か?」

「失礼な。女です。これでも」

年齢の割には高い背、短い髪も、気にしているのに。
親元を離れたのを良いことに、やっと髪を伸ばし始めた。肩に届き始めた髪が嬉しかった。

「ちくしょ、女に負けた」

「女だから、負けたのよ」

「どういう意味だよ?」

「女だからって馬鹿にしたでしょう?力で押せば勝てるって」

「だから剣勝負にしたのに」

「それは正解。
多分、これじゃなくて同じ剣だったら私の負けだった」

刀を一振りして見せてから、片付けた。

「なんでだよ」

「私は力では負ける。
あなたの剣の選択は正しい。力を有効に使えるから。
それに対して、刀は?」

「あー‥力押しより、技術か‥」

「少しの力の加減・使い方で、化ける武器。
それから、必死で力を受け流す私の戦い方に気がつかなかった」

「くっそー‥」

床に座り込んでうなだれるレノ。不思議と清々しくも見えた。

「流石、Aクラス、ね」

「‥は?」

「今の試合、評価ならあなたのが上」

「なんで」

「型通りで綺麗だったから。
でも、この養成所を出たら型なんか通用しなくなるよ」

「‥‥‥‥」

真っ先に相手の急所を狙わなければ、待ってるのは自分の死。

「じゃあね、また明日」

「も少し付き合わねー?」

「嫌。」

「なんで」

「ケーキなくなっちゃう」

「‥は?ケーキ?」

「今日は絶対ミルフィーユ食べるって決めてたのに。人気なの、フルールのミルフィーユ」

「はー‥よしょっ」
レノが勢いを付けて立ち上がり、笑顔を見せた。

「オレが負けたからな。ケーキくらいおごってやるぞ、と」

「え、本当!?」

「はは、お前さ、やっぱ女だな」

「だから言ってるのに。
‥あ、でも良いの?明日ナイフ投げ試験じゃない?私受けないけど」

「いーのいーの。
オレ様、天才だからな、と」

「‥ふーん‥」




Aクラス、自称トップのレノ。

なんだかんだ、悪い奴ではないみたいだ。


‥‥‥‥‥‥多分。




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あきゅろす。
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