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とりあえずビール (C、Z)
*当ミッドガルでは14歳から成人と見なされております*




「な、今夜ヒマ?」

「約束があるの」

「男か!?」

「‥まぁ男‥といえば男だけど」

「マジ!?
ちょっと待て、もしかしてザックスか?
アイツはやめとけ、な?何度も言ってるが、本当に女タラシなんだぞ、と」

「知ってる。今更でしょ。
シスネにまで手出そうとしてる節操無しには間違っても惚れないわよ」

「‥なぁ、オレも‥」

「ごめんレノ。今日はダメ。
ザックスだけじゃないからねー。あ、時間だ。じゃあ、お疲れ様。
ルードも。お疲れ様。お先にー」

「‥‥‥ああ」
「あ、ちょっ‥‥待‥‥‥、‥‥‥。‥ザックスじゃない奴って、誰‥」




待ち合わせの時間まではまだあるけれど。準備が必要だから仕方ない。
かつかつ、とそんなに高くないヒールをテンポ良く響かせ向かったロッカールーム。

支給されてる一般社員の制服に袖を通す。鏡を覗けば酷い違和感。その原因が、この制服には不釣り合いな私の目つきだと気付き、無理矢理笑顔を作った。










待ち合わせのお店に着き、カウンターに座る2人の背中に声をかけた。

「ザックス!クラウド!」

「ん?‥あー‥ケリーか」

「ザックス。何、その失礼な反応」

「お前のその制服姿慣れなくて」

「いつも仕事帰りに飲む時はコレでしょ?いい加減慣れてよ」

「一瞬マジでビビるんだよなぁ。制服のカワイイ子、と思って良く見ると、ケリー。みたいな」

「似合ってないって言いたいんでしょ、私が美し過ぎて」

「はいはい。んじゃそんな感じで」

「失礼な奴!」

クラウドはと言えば、困ったように笑って「お疲れ様」と隣の椅子を勧めてくれる。

「クラウドは紳士だなぁ、誰かと違って」

そう漏らすと予想通り、クラウドの向こう側から噛み付いてくる駄犬ザックス。あれでも1番年上なのに。

私達は歳が近い。ザックス、私、クラウドの順で1年ずつの差。



私達は、私達でいる時だけ、歳相応の姿でいられる。
喋って笑ってバカやって。
それが出来る、大切な大切な、友達。





「前から思ってたんだけど‥」

ほろ酔いのクラウドが口を開いた。

「なに?オレがソルジャーで1番カッコイイって?」

参ったなー!なんて馬鹿なコト言いながらグラスの中の氷をぽりぽり食べるザックス。
コレは酔いが入ってきたサイン。(今日も閉店ギリギリコースかなぁ)

「違うよ!1番はセフィロスさんに決まってるだろ!」

出た。
クラウドのセフィロス信仰。
お酒入るとすぐコレだ。

「セフィロスさんはカッコイイ‥じゃなくって、
ケリーって軍出身?って話」

「‥ぅえ!?私!?」

びっくりした。私に話が回ってくるとは。
クラウドの視線を受け止めきれずに奥のザックスに視線を送るが、ザックスは面白そうだと笑みを浮かべたままマスターに「これおかわり!」なんて頼んでる。

「ずっと思ってたんだけど‥ケリーって強いだろ?」

「ははっ、強いぜコイツ。酒も、腕っぷしも」


「‥違うんだ。
なんか上手く言えないけど、
制服だからか時々すごく大人に見えて‥1歳しか違わないのに‥。それだけじゃない。俺、ただの一般兵だけど、それなりに訓練積んだし、これでも一応ソルジャー目指してる。どんな人間が強いかとか少しずつ分かるようになった。‥ケリーは、隙がない。いつもだ。‥強い気配がする。戦場を知ってる、強さだ」

「クラウドってばー。どしたわけ?」

ザックスは今更助け船のつもりかケラケラ笑ってごまかす気らしい。でも。

「‥知ってるわ。
私は、戦場を知ってる」

「え‥」
「おい!お前っ!」

「‥‥今はこれしか言えない。
ごめんね、クラウド」

言えない。今はまだ。
タークスは、自らその存在を教えてはならない。私達はあくまで、影でいなければならない。

できることなら。

私が彼にタークスだと名乗る時が来なければ良い。


「‥‥うん‥俺こそ、ごめん。
俺、強くなるよ。
今のままじゃケリーに勝てなそうだから。それを感じ取ってから‥ちょっと、悔しかったっていうか、ちょっとショックだったっていうか‥」

「無理無理!
オレでも敵わねーもん!」

「そこ!勝手なこと言わない!」


いつか、タークスだと名乗っても。この関係が変わらないことを、切に‥願う。


「いつか、教えてくれたら嬉しいけど。俺、ケリーの周りのピリピリした空気が、俺達と一緒にいるときだけ柔らかくなるの知ってるから。‥制服のケリーが大人っぽくても、私服のケリーは可愛いの知ってるから。
それだけでも、十分嬉しいんだ。俺達だけ特別っていうか‥さ」

「‥‥‥‥クラウド‥」





だってね、
たくさん汚いことしてる私が
クラウドと一緒にいるだけで、綺麗になれるような‥私まで心が澄みきっていくような気がするの。

ザックスも、きっとそうで。

だから私達は誓う。

自分のせいで綺麗なクラウドを汚してしまうことに怯えながらも、彼をこの世界から必ず守ると。






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