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殺意 (S)
アンジール。
今、私は、貴方に感謝の気持ちでいっぱいです。伝えられないのが残念です。
でも、もし
もう一度会えたなら、
このためにあったのかと思われる程、今こうして役に立っているスパルタ補講とやら(セフィロスのデータとの対戦)すらも、
こうなることを予期しての貴方の計算のうちだったのかと聞いてみたいと思います。
(予期っていうより、仕組んだとも思えなくもない)
「!
(やばっ、切れる!――‥ウォール!!)」
念じた瞬間、消滅しかけた光の壁が再び光って英雄の拳の弾道を少しずらしてくれる。
ホッとするのもつかの間。
今度は英雄の周囲に巨大な魔力が巻き起こる。
(―リフレク!)
間一髪。
フレアをかわしたと同時にこちらも魔法を飛ばす。
黒い重力球に飲み込まれたのを確認して、身構えた。
案の定、平然と飛び出してきたセフィロスの背後から飛び掛かる。
トレーニングルームでの対データ戦ならば、躊躇なく斬りかかるけれど、今はお互い素手。しかも私の片腕は使い物にならなくなった今、ソルジャー相手にはダメージを与えられそうな攻撃は皆無に決まってる。
「たぁっ!」
拳が飛んでくると思ったのか、瞬時にガードに回った英雄の隙をついて、殴り付ける代わりに、思いっきり彼の銀髪を引っ張ってやった。
「!?」
セフィロスの瞳に射す色が変わった。
「―‥お目覚めですか、ソルジャー・セフィロス?」
「‥‥‥こんな奇抜なモーニングコールは頼んだ覚えがないがな」
本当に変わった奴だ、と笑われた。
ミッション終了後、担当タークスに向かって殺意を向ける英雄様に文句を言いたいところだが、お互い武器無しとはいえ本物の英雄セフィロスと戦って片腕の負傷だけで済んだ奇跡に安堵を覚え、しばし浸る。
「やはり、死神の名は飾りじゃないらしい」
「それを、試したかったのですか?」
「いや、
‥お前を、殺したいと思った」
「何故です?」
「殺せば、お前が手に入る気がした」
「何を‥。
手に入るも何も、私は貴方の影ですから。殺せば失うだけですが」
「お前を俺の手で殺せば、虚無感とともに、平穏が訪れる気がするのだ」
「私は貴方自身の罪でもあるから?」
今日。
そう、約束した。
セフィロスの罪は、私が背負うと。
「わからない。
しかし、‥殺意が疼く。
それなのに、俺はお前を殺せなかったことに安堵している」
私の頭に手を置いた彼は、悪魔なんかじゃなかった。一人の人間だった。
「私に慈悲を与えるのは、やはり死神、か」
呟かれた言葉を、私はきっと忘れないと思う。
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