ff
生姜焼き定食 (C)
制服よーし、髪よーし、眼鏡よーし。
「‥‥ケリー、本当にそこまでして行くの?そんなダサい格好してまで‥黒縁眼鏡なんて今時ありえないわよね」
「もちろん行くわ。シスネもお昼?」
「ええ、下の一般じゃなくて上の社員食堂だけど」
「下のが美味しいのに」
「冗談でしょ。
そのためにいちいち着替えてられないわ。本当よくやるわね」
「安くて美味しいよ?」
「高給取りが何言ってるのよ」
「はは、
面倒だから毎日は嫌だけど、時々すごく行きたくなるの。
‥‥これって‥ただ、この制服を脱ぎたいだけかな‥」
シスネは呆れたように溜め息をついたけど、
「‥行ってらっしゃい」
と優しく笑いかけてくれた。
生姜焼き定食。
一般兵も、一般社員も利用できる、神羅本社ビル第2食堂。
第1と第2は同じフロアにあって、メニューも全て同じ。
違うのは、第1食堂は大きなテーブルがいっぱいあって広く、みんなでワイワイ食べる人向けで、
第2食堂はほとんどがカウンター席で、テーブルも2人掛け程度の席が多く、お一人様向けってところ。
第3と第4はビルの真ん中辺りにあって、少し値段が高めなため、管理職やちょっと上の部署の人がよく利用する。IDが必要だったかはよく覚えてないけど。
第5食堂は、所謂お偉方用の食堂で、一般社員のIDでは入れない階にある。
本当なら私はそっちを使うべきなんだけど、一般社員に紛してまでこっちを利用するのは、ここの定食が美味しいから。
「‥ここ、良い?」
「はい、どう‥‥クラウド?」
「お疲れ様」
「お疲れ」
今日は本社警備で、と
ちょっと照れながらクラウドが話してくれる。
綺麗だな。
「社内で会うの、初めてだね」
「うん、でも、私は見たことあったよ。ここで」
金髪は目立つもの。
何度か見かけて、そのたびに綺麗だと思った。
『‥は、‥初めまして‥』
ザックスを通じて知り合ったクラウド。
ものすごく緊張してて思わず笑ってしまった初対面。
3人で2回飲みに行って、先週は祝日に3人で8番街まで遊びに行った。
私も(多分彼も)人見知りだけど、ザックスのおかげか、不思議とすぐに仲良くなれた。
「ごちそうさまでした」
「美味しかったー」
「ごめん、邪魔じゃなかった?」
「へ?なんで?」
「‥なら、いいんだ」
あ、と気付く。
「こちらこそ、ありがとうクラウド。
一緒に食べれて嬉しかったよ」
「‥本当?」
「うん」
クラウドは、優しくて
すごく繊細な人だと思う。
「‥ケリーは、いつも一人で食べてるの?」
「うん、だいたいそう。
仕事が忙しかったりして同僚も時間ばらばらだし、出張とかでいなかったりするし、割とみんな別々なの」
「そっか」
「良かったら、また一緒に食べない?見かけたら声掛けて?」
「‥うん!」
なんて綺麗な人だろう。
素直で、純粋で。
天使みたいだ。
ザックスがクラウドを気に入ってるのがよくわかる。
私だって好きだもん。
人間って汚いだけの生き物じゃないと実感できる。
「‥あの、」
別れ際、小さくクラウドが話しかけてきた。
「俺、‥ザックスしか‥トモダチって言える奴いないんだけど‥
‥‥トモダチ、になってくれないか?」
なんだろう、このあったかい気持ち。クラウドの純粋さが私にも流れ込んでくる感じ。
これって恋?
「もうトモダチのつもりだったよクラウド。
でも、嬉しい。よろしくね」
「‥‥ありがとう」
2人してなんか照れて、はにかみながら握手して。
手を握ったままどっか遊びに連れ出したくなっちゃったよ。
そんなことが出来たら、どれだけ幸せだろう。
.
[*前へ][次へ#]
[戻る]
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!