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幕を閉じるとき
「貴女のことだから、きっと考えに考えた結果なのでしょうし、後悔もしないんでしょうね。
揚句、これが最善だと思ってる。
‥もしかしたら、貴女が本当に正しいかもしれない。
だけど、あんまりだわ。
貴女の代わりに、私は絶対この結末は認めない。もちろん2人の幸せを祈るけれど、私は貴女の為に、貴女の決断を許さないわ」
これは、キスティスだっけ。
さすがに、堪えた。
『私‥やっぱり、スコールのこと、忘れられないんだ‥』
『……っ、…俺は…』
リノアの言葉にスコールが一瞬の迷いを見せた。
『今、…揺れた、よね?』
私は、それを見逃さなかった。
スコールがリノアに答えようとした返事は、「否」。
わかってた。だから、言わせなかった。
『は…?…俺は、お前と結婚するつもりだって言ったよな!?』
『今、リノアに揺れたのに?』
『だから、』
『私、…可哀想だとか、同情だとか…そんなもので結婚されたくない。
嘘つきは…もっと嫌。
貴方の心には、リノアが住んでる。今、自分でもわかったでしょう?
これだけの時間を過ごしても、私はリノアには敵わない。
もう、惨めに思うのは嫌。さよなら、スコール』
一瞬‥ほんの一瞬揺れ動いた心を、卑怯にも私は突き付け、‥‥許さなかった。
その後、私はガーデンを下りてバラムへ身を寄せることにしたのだが。
スコールは、最初こそ「どうして俺の気持ちを信じられない?」と謝ったり怒ったり、ありとあらゆる努力で私を引き止めようとした。
でも、私が折れないとわかると、辛そうな顔だけ残して去っていった。
ゼルが言うには、私が落ち着いたら必ず戻ってくると信じてくれているみたいだ。
(無駄なのに)
だって、私の筋書では、
傷心のスコールと、想い続けたリノアが結ばれなくちゃいけない。
安い芝居ね、とキスティスが吐き捨てた、ベタ過ぎるエンディング。
もしゼルが言うようにスコールが私を待っててくれてるなら、私はあと一つやることがある。
『スコールへ
私、本当は怒ってもいないし、今でもスコールのこと信じてる。きっと誰よりも。
それだけは伝えておきます。
リノアの言葉で心が揺れたこと、私は責めたけど、本当はスコールが罪悪感を感じる必要ないよ。
リノアが大切な人なのは知ってたし、私だってラグナさんを心のどこかでは忘れられないでいる。
ううん、きっと心が揺れていたのは私の方だね。
歳を重ねるごとに、スコールはラグナさんに似てきた。時々、ふとした瞬間に‥って、これはどうでもいい話だ。いくら似てたって、スコールがスコールであることに変わりはないもの。
とにかく私は、スコールが結婚しようって言ってくれたことも本当に嬉しかったし、その意思が簡単に揺らぐものでもないことも知ってた。
私が望めば、幸せという形でそれが手に入った。
だけど、それは、私が手に入れていいものじゃない。それだけはね。ずっとわかってたの。
だから。応えられなかった。
スコールにも、いつかきっとわかる。
今後、スコールの彼女としてあなたの前に一切現れることはありません。
(私を捜し出すことは全SEEDを動員しても無理ってわかると思うけど)
‥勝手な奴だと思うだろうね。
けど、スコールを悲しませるようなことはしないと約束するから安心して。
私はスコールとともに歩めたこの数年を、宝物にして、生きていくよ。
ありがとう。さよなら』
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