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いろいろ
あの子について聞いてみよう3


「お兄ちゃん!!」

「おかえり、エイダ」

帰って来るなり涙ながらに抱き付いてくる可愛い妹だが。

「まずはただいま、が先だろ?」

「うん!ただいま、お兄ちゃん」

これで、今の俺より歳上なんだもんなぁ、とやるせない気持ちになるのは内緒だ。
言ったら、エイダが気にして悲しむから。

「この前の試験でね、頑張ったんだけど…」

ギルやオスカーおじさんとも挨拶をして、最近の話を報告しはじめるエイダだが、その手はガッチリと俺の手を握って離してくれない。
それが余りにもしがみつくようだから、俺はついつい溜め息をもらしてしまって。

「っ、お兄ちゃん、どこか具合悪い!?」

「何!?オズ大丈夫か!」

「もー、大丈夫だよ、二人とも。
エイダ、いいから一度部屋に戻って着替えておいで」

「でも、」

「俺は逃げないし、休みの間は一緒にいられるんだろう?」

「お兄ちゃん…」

「着替えたらお茶にしよう。
ギルがオヤツを焼いてくれてる。
移動で疲れただろ?少し休んで、ゆっくり着替えておいで。待ってるから、な?」

そこまで言えば、瞳を潤ませながらもエイダは大きく頷いて、やっと手を離して自室へ向かったのだった。

「エイダは本当に兄ちゃんっ子だなぁ、オジサン妬いちゃう」

「すっかり歳上になったってのに…大きな妹みたいで変な感じだよ」

「エイダ様は…ずっと、オズを待っていたから…」

ギルもおじさんも、ただただ嬉しそうに微笑んでいた。
俺も、きっと同じ顔をしているんだろう。
エイダは周りを笑顔にする。
可愛い可愛い、俺の妹。

「待ってたからって言われてもなぁ…。
どうしてエイダにしろギルにしろ、俺を待ってたヤツは子供っぽいままなのかねぇ」

「なっ!?子供っぽいってなんだ!」

「ぷ、そういうとこだよ、ギル」

「わっははは!
お前が帰って来て、それでもお前に甘えたかった甘えん坊ばっかだからだろうなぁ!」

「じっ、自分はっ!」

「いいぞ、いいぞ、甘えろ甘えろ!おら〜」

ぐりぐり、とギルの頭を撫でくりまわすおじさんにもはやカッチカチで真っ赤なギル。駄目だ、笑いが止まらない。
ぶは、涙目になってる。

「やーい、甘えん坊ギル〜」

「そら、オズも来い!
おじさんも寂しかったんだからな!」

ギルと一緒になって抱き締められて、やばい、温かくて俺も泣きそうになる。
目があったギルは、俺の様子を見て、今度こそ泣きはじめて。
そんなのを見たら、俺の涙は引っ込んで、馬鹿だなぁとギルの頭を撫でてやった。
確かに、こういうところが俺のお兄ちゃん気質なんだろうか。
てか、子供の俺に頭撫でられて泣いてる良い大人って本当どうなんだよ。

「なぁ、オズ。」

「なぁに、オスカーおじさん」

「エイダも、ギルも、…お前を待っていたからとはいえ、10年を過ごした」

「うん」

時々忘れそうになって、時々嫌ってほど思い出す事実だ。

「子供っぽいっていっても、そのコイツらを甘やかすことが出来るお前が、俺は凄いと思うんだよ。
………ごめんな」

「ええ?」

「もっと、子供でいて良かったのに。
………せっかく、お前が子供のまま帰ってきたってことはだ、意味があることなんだと俺は思う!」

相変わらずに、おじさんの手は温かくて。俺を見る瞳も、優しかった。

「だからだ。
俺は、でろでろに溶けるまでお前を甘やかしてやるから。
お前は、『子供』らしくワガママ言って、大人振り回して、甘えろよ」

全く。
オスカーおじさんってば。
10年前、俺が子供らしくいられなかったことを、今でも悔やんでいるのか。…今だからこそ、かな。
ああ、もう、ギルの涙が止まんないじゃないか。

「そうは言われてもなぁ。
お陰で、『今』ギル達に再会してもなんてことなく接していられるようにも思うからさ?」

俺にとっての過去の『あの頃』…辛い思いもあったことで今の俺があるのだから、まぁ悪いことばかりじゃなかったんじゃないかと思っている。

「辛かったこともあったけどさ。
『今』こうして皆と過ごしてる中で、一つも失った物が無いって感じられるんだから、きっと必要なことだったのかもしれないと思う」

「お…ず……」

「まーぁったく、お前ってヤツは!!
どうしてそう達観してんだかなぁ!」

びく。おじさんの言葉に怯えた自分がいた。
可愛いげがない。…ブレイクにも言われた言葉。

「そんなオズ君には〜抱き締めの刑だ!!」

「ちょ、おじさん!?ぐえ、本当くるし…て、おいっ、ギルまでっ
待て、おいっ、苦しっ」

そこに戻ってきたエイダと、昼寝から起きてきたアリスが混ざって、もう皆もみくちゃで大変だった。

ほら。

以前と何一つ減った物なんかない。
むしろ増えたんじゃないかと思うくらい。
温かくて、幸せだ。

「待っててくれて、ありがとな」

照れ臭くて小さな声になってしまったけれど、エイダもギルも、おじさんも。目一杯の笑顔で応えてくれた。

『ユメはずっとお前のことを想ってた』

ここに…あいつだけが、足りないけど。

いつか、あいつにも…こうして会えたら良い。

「そのうち、ユメにも会えるかな…」

「…!
うんうん!お呼びしましょう!
先生も、お兄ちゃんに会いたいはずよ!」

お兄ちゃんの手紙が来る度に先生とお兄ちゃんの話をするのよ、とエイダが嬉しそうに話していたのだが。
それを浮かない顔で見ていたギルに気付いてしまった。

「ギル?
何、お前…まだ気まずいの?」

聞いた話によると、ギルは最近?付き合っていたユメから一方的にフラれたらしいから。

「えっ、いや、そうじゃなくて…」

「なんだよ、言えよ」

「…………」

「ギル?」

エイダが不思議そうに首を傾げると、少しばかりギルが焦ったように見えた。ははーん。エイダには付き合ってたこと言ってないんだな?

「言えって。…エイダに全部説明しても良いんだぞ?」

「ちょ、おまっ!
……………わかったよ。……ユメは、たぶんここには来ない」

「たぶん?」

「………絶対、だ」

ギルが帽子のつばを引き下げる。
こういう時は、表情を隠したい時だ。

「俺に会いたくないってこと?」

「………………」

ギルはそのまま背を向けてしまった。

「そんなはずありません!
先生…お兄ちゃんが帰ってきたって聞いて、あんなに…泣いて喜んでくれて…。私がお兄ちゃんの話しても、ずっと…。
会ってしまえば良いんです!
私も最初はお兄ちゃんに会うのが怖かったけど…会ってしまったら全部吹っ飛びました!だから先生も!会いに行きましょう!」

「………申し訳ありません…エイダ様。
ユメは…オズには会わないと思います」

「そんな、…どうして…」

「………………俺の、…せいです…」

静まってしまった部屋の空気に、アリスのお腹の虫が盛大に鳴り響いて。
俺たちはそれからまた楽しくお茶の時間となったのだけど。

俺のせいだと、言ったギルの背中が強く目に焼き付いてた。

子供っぽいままのギルが、ちゃんと大人なんだって思う瞬間だった。

なぁ、何があったんだよ?
ユメは今、幸せじゃないのか?



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あきゅろす。
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