いろいろ
あの子について聞いてみよう 1(パンドラ・オズ?)
「あ、そうだ、お兄ちゃん」
「なんだい?エイダ」
今はオレより年上だけど、可愛い可愛いオレの妹。
うん、マジで可愛い。
「ユメ先生にはもう会った?」
‥‥‥‥‥‥え‥。
「叔父様から手紙もらってすぐにお兄ちゃんが戻ってきたって伝えたら凄く喜んでたよ」
ユメ。
オレがアヴィスから戻って来て、不自然なまでに出て来なかった名前だった。
あれから10年が経っているわけだから、普通に考えれば25歳。
でも、ギルも叔父さんも、誰もその名前を口にしなかったから、聞いちゃいけない、何か事情があるんだと思っていた。
それが。
なんだよ。
こんなあっさり。
「‥なぁエリオット…」
「なんだよ」
「‥‥‥‥‥」
「なんなんだよ!はっきりしろ!」
「‥‥オズ君?」
ああ、何やってんだオレ。
はっきりしないオレにエリオットはキレるし、リーオまで不審がってる。
「いやぁ、あのさ?学校って楽しい?」
「‥‥‥は?」
「あはは‥学校って行ったことなくてさ、楽しいのかな〜って」
「来ただろうが、この間」
「そういうんじゃなくて、さ。
学園生活っていうの?」
「馬鹿じゃねーのお前」
「む。憧れるだろ、やっぱり。
学園生活だよ?青春じゃんか!」
ほら、ないの?エリオットの浮ついた話とか!
ってリーオに尋ねると、「学生の本業は勉強だ!そんな、う‥う浮ついた話なんかねぇ!」と叫ぶエリオットの奥で「そーだなぁ」と考えるリーオがいた。
適当に話を続けちゃったけど、これはこれで面白いし、ま、いっか。
「可愛い女の子いっぱいいるし、エリオットだってそこそこはモテるだろ?オレほどじゃないだろーけど。
でも、モテてもエリオットってマジ鈍そうだし気付かないって感じ?」
「わあ、さすがオズ君!鋭いねぇ」
「お前ら馬鹿にしてんのか!?」
楽しそうだ。
だけど、通いたいかと聞かれたら、オレはノーと答えるだろう。
「あー‥まぁ、良い学校だとは思うぞ、ラトウィッジは」
「そうだね。本も揃ってるし」
「そこかよ。お前の基準はまず本ありき、だからな…。
ラトウィッジは学問を学ぶには良い環境だ。
良い先生も揃ってるし、思い切り勉強できる」
「‥先生、か」
意外なことに本題に行き着いてしまった。
せっかくだから、聞いてみようかな。‥聞くだけ、だし。
「先生っていえばさ、ユメって‥」
ぶふっ。ばさり。
‥え?
何噴き出してんの、汚いよエリオット。あと本、落ちたよ。
「‥ユメ」
「おおぉお前!なんでその名前を‥!?」
え?なに?なんなの?
「なんで、っていうか‥幼なじみだし?歳も一緒で‥」
「‥‥!?」
あーエリオットさん?
顔面真っ白で固まったエリオットに首を傾げ、リーオに助けを求めてみた。
「んーちょっと彼には刺激が強かったかなー」
‥刺激?
「まぁ僕もちょっと驚いてるしね。無理もないよ。
しばらくしたら復活するだろうから放っといて」
「‥はぁ」
「本当に10年、オズ君はアヴィスにいたんだね」
「え、うん、一応?そうなっちゃったね」
「わかってはいても、僕らは10年前の君を知らないし、実感なかったんだけど。
ユメ先生と同い年と言われると、ね」
「そんなに衝撃的?ギルだってそうだろ?」
「今回は、まぁ相手が相手というか‥」
「リーオ。それ以上言ったらぶん殴る」
あ、エリオット復活したんだ。
「‥‥‥‥もしかしてさぁ、エリオットの好みのタイプって、『年上のキツイお姉さん』、とかだったりしちゃう?」
「何言ってんだ!先生はキツくなどない!それに、タイプなどといういい加減なものではなく、先生が先生だからこその‥‥って、っ!?」
今更口塞いでももう遅いよ、エリオット。
オレとリーオで呆れて見遣る。
「‥‥オズ、貴様‥!!」
「え、自爆したのエリオットじゃん。エリオットってば責任転嫁〜。だめだなぁ。
へーそっかぁ、エリオットも楽しい学園生活送ってるみたいで安心したよ!勉学に励んで先生に憧れて?
超ベタだけどな!」
「オズ!!き、貴様ぁああ!叩っ斬る!!」
あとでこっそり「ユメはどんな先生?」ってリーオに聞くと。
「綺麗で、聡明で、素敵な先生だよ」と返ってきた。
そっか。
良い先生やってんだ。
「美人?」
「うん、エリオットってば面食いだから」
「あはは」
「だけど、ちょっとエリオットの気持ちもわかるな」
「へ?」
「ユメ先生が僕らと同じくらいの頃を、君は知ってるんだからね」
「それは‥羨ましい‥ってこと、かな?」
「嫉妬、とも言うね」
「はは‥、そっか。
羨ましいか。
‥‥オレには、ユメの『今』を知ってるリーオ達のが、羨ましいけどな」
「会いに行かないのかい?」
「行けないよ」
行けるわけないだろ。
‥だって。オレは。
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