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いろいろ
忘れない 5

う〜ん‥う〜ん
どうしたものか。

「キャハハッ、お姉ちゃん見て見て!」

‥パティは悩みなどなさそうでいいよな‥


「キッド?」

「ん、何だ?リズ」

「どした?珍しく悩んじゃって」

トイレットペーパーならさっき畳んでただろ?今度は何だ?
などと‥そんな単純なことではないわ!馬鹿にするな!

「いや、もちろんキッチリカッチリは重要だが。
そうじゃなくてだな‥」

「なんだよ、はっきりしねーなぁ」

「そーだそーだ!はっきりしろよオラァ!」

「‥‥‥‥‥お前達、
もし、小さな天窓しかないような部屋にずっといたら、外に出たいと思うか?」

「あ?
そんなん、外出たいっていうか、その前に気が狂うな。
パティの場合、まず同じ部屋にはずっといられないし」

「だよな‥」

「おいおい、ほんとどーしたよ」

「悪い。
ちょっと父上のところに行ってくる!」











ところ変わって、死武専地下研究室。

「って訳で、外出の許可は父上から貰ってきた!外行くぞ!」

「外?」

地下の研究室。こんなところにずっと閉じ込められているなんて、犯罪者じゃあるまいし。
魔女だけど、ハーフだし。
指輪しているから波長自体は武器だし。
問題はないはずだ!

「ずっと閉じこもってたら体に悪いだろう!
外出たくはないのか?」

「外ねぇ‥べつに出なくても大丈夫」

俺に気を使ってる‥わけではないようだな。本気で言ってる。マジか。


『ユメちゃんを外に?
いいよ〜。許可しちゃう♪
どこでも連れてっちゃって♪』

『‥へ?』

『あれ?もしかして許可もらえないかと思った〜?』

『だってあんなところにずっと居させられて‥』

『まぁ最近はシュタイン君が彼女に危害を加える可能性があったからねぇ。
でも、本当はずっと前、シュタイン君の研究所で暮らしてる頃から外出の許可は下りていたんだよ〜?』



「‥‥‥もういい。わかった。
‥ユメ、立て!」

「は、はいっ」

すとん、と座っていた寝台から降りて直立する彼女に頷いて、行くぞ、と手を引いて研究室を飛び出した。



『シュタイン君もね、彼女を外に出さなかったのは最初の頃だけで、ずっと外に連れ出そうと頑張ってたみたいよ?』

『頑張ってた?』

『うん♪
私もいろいろ言ったんだけどね。彼女、どうしても首を縦に振らなくてねぇ』

『一体何故‥』

『さぁ〜?
にしても、キッドがデートの許可くださいなんて。うふふふ♪』

『父上ッ!?いつデデデデートだなんて言いました!?』

『いいのいいの♪
息子の成長が嬉しいだけだからね〜♪
いいかい、キッド。どこに行ってもいいけど、くれぐれも、ユメちゃんに危険が及ばないようにね♪』



「‥とはいえ、どこ行こう‥」

しまった。今は夜だ。
街に行っても、子供の行ける店は開いていないだろう。
実験研究棟から出て速攻現実の壁にぶち当たった俺。

「ユメ、どこか行きたいところ‥なんてな‥‥ん?」

勢いづき出てきたものの途方にくれかけた俺に対して、彼女は突然小走りに駆けていく。向かった先は、草が繁った花壇だ。

「‥これ!‥‥あっこれも!」

「どうした?」

「ここ、この花壇て、もう誰も使ってないのかな?」

「そうだなぁ‥」

ここはまだ実験研究棟の庭だ。
そもそも学園の敷地内でも外れの上に、建物に囲まれているこの場所は一目にもつきにくく、人の出入りも全くない。
その場所の手入れされていない花壇となれば。

「放棄された花壇だろうな」

「ここにはたくさんの薬草が生えてるの。これも、これも。
あっちのは沈静効果のあるハーブだよ。ハーブティーにすると香りもいい」

「よくわかるな」

ただでさえ暗いのに。

「私にはわかるの。
本格的な薬草の知識はフランクの研究所にあった本で学んだものだけど、簡単な身近なものは昔から植物が教えてくれた」

「植物が話したのか?」

「言葉は話さないけどね。
なんとなくわかったの。今必要なのはこの草だ、とか。
私のお母さん、花の魔女だったみたいで」

「じゃあ、他の魔女みたく変身したらユメも花に?」

「そうらしいよ。
フランクが言うには、東洋の桃の花だって」

「‥見てみたいな。
きっと美しい花なのだろう」

「この指輪を外せたら見せてあげれるんだけど」

無理ね。と指輪に目を落として微笑む。
きっとこんな彼女のようにはかなげで美しい花なのだろう。
桃、か。
明日、椿に尋ねてみようか。

「ありがとう、キッド」

「何がだ?」

「ここに連れてきてくれて」

「ここが『外』と言うならな。
本当なら街にでも連れて行きたかったのだが。明日はもう少し早く出よう」

「‥‥‥私。明日もここがいいな」

「ここ?
まぁ、構わんが‥」

「本当!?嬉しい!ありがとうキッド!」


満面の笑顔に胡麻かされ、
俺グッジョブ!とニヤけてハッと我に返った。

外に出ようって、こんな日中でも薄暗い庭に連れ出しただけじゃないか、俺!

意味ねー‥

こうなったら、完璧なデートプランを練るしかあるまい!




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あきゅろす。
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