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いろいろ
ラプンツェルE 終

森の中。


「おっ、ユウー!」

「‥‥‥チッ」

「相変わらずさねー。
それより、そんな木の上でうたた寝なんてお茶目‥っいてぇ!」

一瞬でユウが地面に着地。
その拳がオレの頭にヒット。

「‥精神統一だ」

「ふーん、で?帰っちゃうさ?」

「うるせぇ。」

いつも通り。イライラと言葉少なく去っていく背中。

只今。朝の9時半。

耳をすますと
どこからか、澄んだ歌声が聞こえていた。





『‥‥彼女は‥ユウのこと、知ってたんだな‥』

『ああ』

『‥くそ、オレ‥ユウや任務のことべらべらと‥彼女の気持ちも考えないで‥』

そんな過去があったら、エクソシストでいたことに苦しんだのなら、エクソシストであるオレの話をどんな気持ちで聞いていたのだろう。

笑ってた。

だけど、その瞳は?

もし‥重い過去を思い出して、失った未来を映していたとしたら?‥‥オレの、せいで。


『笑ってたか?
お前の、話聞いて』

『笑ってた。‥けど!』

『‥そうか。
ならいいさ』

『待てよ!まだ‥』

『そうそう、ラビ。
朝の森は散歩に良いぞ?鍛練にも、な』

『は!?
はぐらかすなって!オレはまだ聞きたいことが‥』

『‥全く。俺も忙しいんだけど。‥何だ?』

『‥最初にオレがエクソシストだって知って、出てってって言われたさ。寄生型だったらって。なんでか知ってる?』

『‥‥‥‥それを俺に‥。‥まあいい、‥向き合って乗り越えるべきは俺もか。
‥‥感染、したんだよ。傷に彼女の血液が接触したんだろう。
1人の寄生型エクソシストが、彼女と同じ‥イノセンスに対する拒絶反応を起こした』

『そいつは!?』

『幸い、片腕を失うだけで済んだ、と言えば聞こえは良いが、俺達はそうする以外どうすることも出来なかった』


『‥‥‥‥悪ぃ‥そんな話させて。‥なんかオレ、もう最低だ』

『いいさ。
お前がただの好奇心だけで首突っ込んでるんじゃないってわかったからな。
頑張れよ、お姫様は手強いぞ』









森の中。

歌声が聞こえてくる方へと進む。

そして

見えてきた古い塔。



窓の真下へ辿り着いた時、歌声が止まった。

仰ぎ見る。


君と、目が合った。


「おはようさ」

「今日は早いのね」

「美しい歌声に引き寄せられて?
ああ姫、美しいあなたのもとに行きたいのに、なんともこの距離が恨めしい」

「生憎ですが、王子様。
わたくしの髪はこの通り、常識的な長さしかございませんのでどうかご自分で上がってきて下さいませ」

「んじゃ遠慮なくー‥伸っ」


飛び込んだ部屋には朝食の跡。


「‥オレさ、リーバー班長から‥全部聞いた」

「そう」

「歌、綺麗だった」

「どうも」

「あいつの為に、歌ってるんさ?毎朝」

「あいつ?
誰のことかしら。
私は別に。朝早くでもなければ思いっきり歌えないから。‥あと、‥‥毎朝朝食を届けてくれる誰かが聴いてくれたらいいなと思うだけよ」

全て知ってる笑みだった。

「きっと‥聴こえてるさ。
どっかの木の上で、精神統一とか言ってさ」

「そうだと、いいわね」


お互いが、お互いの存在だけで満たされてる。
会わずとも、通じ合ってる。

やっぱりな‥こんなことだろうと思った。

『ユウは、彼女が‥死んだと、信じてるのか?』

『彼女が死んだって聞いて、神田は俺達に詰め寄ったんだ。
お前らがそんなに無能だとはな、って。‥はは、殺されるかと思った。だけど、いつだったか「俺はアイツの歌を覚えてる。それだけで十分だ」って‥‥神田は神田なりに受け入れたんじゃないか?』

あの時のリーバーの顔で、もしや、と思った。

過去の2人なんか知らない。
オレの入るスキがあるのかも知らない。

だけど、オレは、
会いたい。ただそれだけで跳ぶ。
見上げるだけなんてオレにはできないから。


「オレさ、知りたかったこと全部聞いたけど‥」

ブックマンとしての好奇心は満足したはずなんだ。

「だけど、会いたいと‥思ったんさ」

ここに来る理由も、なくなったはずなんだ。

「ブックマンJr.としては減点ね、ラビ」

「‥‥‥‥」

「あなたはブックマンには向いていないかも‥残念だけど」

「‥‥」

「だけど、‥ありがとう」

「ユメ‥?」

「ここは忘れられた空間なの。
過去なんか関係ない。私達が何者なのかも関係ない。必要、ない。
あなたは『ラビ』。私は『ユメ』。それだけでいい」


「‥うわ‥殺し文句さぁ‥」


1人の、人間でいていいの?

君を、好きだと思っていいの?




「髪でも伸ばそうかな」

「非常識なくらいに?
窓から釣りでもするんさ?」

「そう、もしかしたら仏頂面のサムライでも釣れるかも」

「それは勘弁!リアルだし!
ライバルは欲しくないから、オレ以外釣らないで!
オレの愛だけで我慢して!」

「またそんなこと言って。
ラビって女の敵でしょう」

「‥‥‥あのさ、オレ本気で好きなんだけど‥まだ信じてくれないの?相当君に惚れてるんですが」

「‥本‥気?‥惚れって‥は!?‥えぇぇ!?」

「‥まさか、気付いて‥なかった‥と?
お姫様、‥ニブすぎさぁ‥」


がっくし。

でも、これでやっとスタート地点?


なぁユウ。

もしお前がお姫様を好きだったとしても、オレ、遠慮なんかしねぇから。


深い森の中。

世界に忘れられたこの部屋で、

『ラビ』という一人の男が

囚われのお姫様に恋をしました。


たとえ

いつか、
そんな物語を遠く懐かしく語る日が来るとしても。


‥今、だけは。

ハッピーエンドを信じたい。







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あきゅろす。
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