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g.long
桜・沖田

「今日は無礼講だ!」

「「おぉぉ!」」

「思いっ切り騒げ!」

「「うぉぉぉ!」」




あたしは春が好きだ。

花見が好きだ。

楽しいから。




「夢乃ちゃ〜ん!飲んでる〜!?」

「はい局長っ
楽しいでーす」

「そーかそーか!
んじゃ〜‥」

「せっかく楽しんでるんで脱ぐならどっか他行って脱いでくださーい。
公衆わいせつ罪で逮捕しますよ、ゴリラ」



今年も例年通り、桜の下でお花見である。

毎年ながら、ほんとうるさい。そんで、楽しい。





「‥‥‥全く、近藤さんにも困ったな」

「あれ、副長。
飲んでないんですか?」

「飲んでないわけねーだろ」

「お酒強いんですね」

「まぁな。お前は?」

「どうですかねぇ。
普通、かな?」

「そうか」

「でも、花見は好きです。
みんなベロベロでどうしようもなくなるけど、こんな桜の下だと何でもありだなって思っちゃって」


「‥桜か‥‥」

「ほんとよく咲いてますね。良い場所だし。
場所取りって今年も山崎でしたっけ?
山崎の割にグッジョブ」

「‥いやー‥桜ってのは、散る様も美しいよな」

「副長‥?」

「侍はこうあるべきだよな」

「‥‥副長‥実は酔ってます?」

「まぁいいから黙って聞いとけ」

「‥はぁ」

「俺も散る時は侍として美しく散りたい。あんな風にだ。散ってなお美しいっていうのは理想だな。
そう思わねーか?」






多分、あたしも酔ってたんだと思う。

副長の言葉が狭い頭の中でガンガン響いていた。



「隊長ーー!!沖田隊長ー!どこですか!?」

「あ?夢乃?
んだよ、うるせーな。
黙って飲んでろ」

「あ、発見ー!
隊長、今年もしっかり飲んでますねぇ。
未成年じゃなかったっけ?とか忘れてあげますから、あたしの話聞いてください」

「うぜえ」

「隊長は、美しく散りたいですか?」

「おい、スルーかコラ」

「美しく散るなんて、そもそも隊長には無理ですよね。だって隊長だもん」

「ああ!?」

「でも、絶対やめてくださいね。だってそんなの隊長には似合わないし」

「さっきから何絡んできやがんでィ。
おまわりさーん
この酔っ払い女が絡んできてうぜーんですけどぉ」

「隊長!でも隊長は汚くて良いですから。
汚くしぶとく真っ黒になっても、足掻いてください」

「俺の話少しは聞こえてやすか?
そーか、そんなに桜の木に吊されてェんで?」

「嫌です。
あたしはいつも隊長に振り回されてるんだから、今日くらい振り回されてください。お願いします。
とにかく、隊長は泥だらけでも、ボロボロでも、あたしの屍踏み越えて‥生きてってください。
不様に生にしがみついてください」

「‥頼まれなくたってそうすらァ」

「あたしは嫌なんです!
こんなに、はかなくあっさり散るなんて‥
隊長には‥生きてて欲しいからっ‥」

「おい、誰だよ
この泣き上戸に酒飲ませた奴ァ」

「だって‥っだって‥
あたしっ‥隊長が散るなんてっ‥考え‥たら‥」

「あーわかった。
わかりやしたから。
泣き止まねェと酒瓶でぶん殴るぞコラ。
‥夢乃、お前ェは本当に馬鹿野郎だな。
土方クソヤローならともかく、この俺が死ぬわけねェだろ。俺は海賊王になる男ですぜ?」

「‥‥それ漫画違いますよね」

「こんな見事なモン見てんだ。ほら、黙って飲みなせェ。お前ェの泣き顔なんて見たくねェ。台なしでさァ」


お酒のせいか泣いたからか。
ずっとぼーっとした頭で桜色のふわふわした世界にいるみたいだった。

大好きな隊長と話した内容は全く覚えてなかったけど、
桜に浮かぶ隊長がすごく綺麗だったことと、
なんだかすごく幸せだったことは覚えていた。



‥‥次の日から隊長のイジメがパワーアップしてたのは気のせいだと思いたい。
あたし、何したんだろ‥。


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