g.long
4.3角形の崩壊 (完)
最近気付いたんだ。
ある日を境に、変わったって。
夢乃ちゃんと沖田さん。
二人の関係性が、何か大きく変わったような気がした。
沖田さんは彼女の前で、今までになく素直になったように見えたし、夢乃ちゃんは沖田さんに少し照れたように笑うようになった。
そう。夢乃ちゃんが変わったんだ。
すごく、明るくなった。
俺にまで、沖田さんや土方さん達に向けていた笑顔を見せてくれるようになって。
俺は、正直驚いていた。
そりゃ、やっと俺にも明るい笑顔を向けてくれるようになったって嬉しいんだけど、素直に喜べない。胸の中にモヤモヤした何かが引っかかっているみたいだ。
俺の勘が言ってる。
きっと、二人は‥
「山崎?」
「あ。夢乃ちゃ‥‥んんんんん!?」
「何、その驚き様。失礼だなぁ」
あはは、と笑う夢乃。
さすがに陸上部。朝のランニングの最中なのに余裕あるな。なんて思考でごまかすけど、感じた違和感にショックを覚えた。
今までなら、俺にはちょっと淋しげに話しかけてたはずなのに。
それがいつも俺は少し切なくかった。笑ってほしいって思ってたよ。だけど、君を笑わせてる原因が沖田さんなんだって思ったら、急に胸が苦しくなる。
「寝不足?」
「え、俺?ううん、そんなことないけど」
「じゃあ考えごと?ぼーっとしてるとトシさんに怒られるよ?」
はぁ、と溜め息が出た。
こんなにモヤモヤしているなら、土方さんに殴られた方がマシかもしれない。
「夢乃ちゃんは元気だね。いいことでもあったの?
‥沖田さんと」
「え?」
俺馬鹿ぁぁぁー!
なんで地雷自ら踏んだ!?
「‥えーと、まぁ、あった。かな。‥‥‥」
「!!?」
人間、驚く(ショックでか過ぎる)と声が出なくなるというのは本当らしい。
「‥‥付き、‥」
合ってるの?二人は、と聞く声も掠れてしまって言い切れなくて情けない。
「山崎、今日の放課後、空けといてね」
神様。
今日は俺の厄日でしょうか。
殺したいならいっそのこと一思いに!
なんてまたモヤモヤしているうちに、あっという間に放課後になっているという、お決まりなパターン。
俺は、待ち構えてた夢乃ちゃんに見事拉致られ、一緒に帰宅の途についている。
「沖田に、言われたんだ。‥好きだ、って‥」
‥だろうね。
「『俺は、言った。お前はどうする』って。」
‥は?どうする?
「だから、あたしも、潔く決着つけることにした。
‥あたし。山崎が好き」
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥え?
「山崎って‥俺!?」
「うん。私はずっと山崎が好きだった。
でも、いいよ。悩ませたいわけじゃないから。言ったでしょ?決着つけたいだけって。
山崎があたしのこと苦手なの知ってるし」
「違っ!
違うんだ、苦手だったのは‥その‥違くて‥」
君といると辛かったから。
俺には太陽みたいな笑顔を見せてくれなかったから。
沖田さんと幸せにと祈りながら醜く嫉妬していたから。
ねえ、
俺といるときいつも切なそうな顔をしてたのは、
俺が好きだったから?
俺と、同じだった?
「おっ俺も!夢乃ちゃんが‥すす‥好きっ、です!」
「‥‥‥‥うそ‥」
うわ、凄い噛んだ。
夢乃ちゃんもさすがに呆れて‥?
心配して覗き込むと、
真っ赤な彼女がいた。
俺も同じくらい真っ赤だろうと思った瞬間。
一陣の風。
目の前にいたはずの彼女は
まさに風の様に、走っていかれました。
‥‥‥何故!!??
てか、待って!!お願い!!
不器用な俺達二人は、
想いを伝え合ってもなお
まだまだ不器用なまま
成長していくようです。
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