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g.long
3.3年目の想い

「いーかお前ら、この問題解けなかったら放課後残って補習な」

「「「えぇぇ!?」」」
「マジかよ」
「やだ!」
「死ね!」

「黙れ馬鹿共。もうすぐ試験だろこのくらい解けなくてどうする」

教室の中が騒がしくなって、ふと目を開けると、黒板には問題解けなきゃ補習的なことが書いてあった。

あっそ。

いつもなら、ここで再び目を閉じるはずだった。
だが、今日の俺は違う。

決めたんだ。

‥‥今日だ、と。

















「ちっ‥」

肌寒い。
補習ごときに一体いつまでかかってやがんだ。

あいつ本当に馬鹿なんじゃねぇの、と思いながらも延々と外で立ったまま待つ俺は更なる馬鹿かもしんねぇなと思った。



今日。
かったるい補習を受けずに帰り道についた。
俺だってやるときゃやる。

そして、俺は帰るべき寮の前を通り過ぎ、あいつの家の前でひたすらあいつを待っている。


こんなダサいところを後輩や土方さんなんかにゃ絶対ェ見せられねェな。寮とこの家は隣で、玄関は反対側‥つまり背中合わせで建っているって訳だから、ひとまずバレる心配はないと思う。

だっせぇな、俺。


ダサい自分に後悔し続けて3年目。





『おはよ?
沖田だっけ、転校生だよね?寮生だったんだ?』

『‥‥‥‥‥うっせェな‥何、お前』

『あ、そっか。
剣道の特待枠だって言ってたもんね?スポーツ特待は寮生多いからなぁ。じゃあ近いね。あたし、寮の後ろの家』

『‥‥‥‥‥‥‥』

『でも、あんた珍しいよ?なんで中2なんて中途半端で入ってきたわけ?』

『‥‥近藤さんが‥つか‥お前、うぜえ』

『近藤さん?
あー、高等部のあのゴリラみたいな先輩か。じゃあ、イケメンで噂の土方先輩も一緒に?』

『‥‥‥‥‥‥‥』

『‥もしかしてあんた低血圧?
辛いよねぇ、あたしもだからわかるわー』

『嘘つくな』

『あはは、あたしは起きてからもう大分時間経ってるし。ランニングしてから学校行こうと思ったら走りながら寝てたみたいで、結局こんな時間に』

『‥‥‥馬鹿だろお前』

『まぁあたしもスポーツ特待なんで』

『あっそ。じゃあな。学校行け』

『あれ、沖田は?』

『もう10時は軽く過ぎてんだろ。サボる』

『んー‥じゃああたしも』

『はァ?』

『良いサボりスポット教えてあげるよ。あたし、部活にだけ顔出せばいいし』

『お前本気でうぜえ』

『あはは、あたし、沖田とはなんか仲良くなれそうって思ったんだよ。よろしく』



その言葉通り、あいつは誰とでも仲良いわけじゃなかった。
がさつな奴だからな。
だけど不思議と俺とは馬が合ったし近藤さんも土方さんともすぐに馴染んだ。


『沖田、あんた本当に強いんだね。剣道してれば格好良いのに』

大会で準決勝の後あいつに言われて。決勝では初めて緊張というものを味わった。結果は惨敗。
あれはダサかった。

次の年は次の年で、優勝したけど、あいつに良いとこ見せてェとか、そんなことを思った自分がまたダセぇ。

お前の走ってる姿も、綺麗だ。
その一言が言えない俺も。


近藤さん達とランニングするようになって、めっきり遅刻がなくなったあいつ。一緒に遅刻出来なくなってもやもやしてる俺。

朝のランニングを誘われても断るくせに、本当は行きたい俺も、マジでダセぇ。




これ以上、ダサい男になりたくねェから。

好きだってお前に言うことにした。



「‥沖田?あんた、うちの前で何寝てんの?」


例え負け戦だろうと。

逃げるような男になりたくない。




「うっせェ、ブス。
補習ごときにいつまでかかってんでィ」

「いつもは沖田だって補習仲間じゃん」

「俺はやりゃァできんだよ」

「嘘くさー」

「待っててやったんでィ。有り難く思え」

「で?何か用?」

「あー‥俺ァ、‥‥‥」









(何!?告白したのか総悟!男だな!)

(‥‥これでさすがにあの勘違い野郎も気付きまさァ。
つか、あの女、俺を振るなんて良い度胸してやがる)

(くっ‥総悟ぉ!)

(まァ、わかってやしたがね)

(よぅし総悟!
めげてるヒマはないぞ!明日からは俺と一緒にストーキングだな!!ははは!!)

(謹んで辞退させて頂きやす)





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