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g.long
今日、確保致しました。



あれはいつだったか。


『先生!夢乃が帰って来ねえ!!ついでにヅラもだ』


高杉が珍しく慌ててやがって。
…ガキの頃だ。
たぶん俺も慌ててた。
夢乃が夕飯の時間を過ぎても帰って来ないなんてあり得ないって大騒ぎだった。

みんなで捜すと、あいつらは近くの山で見つかった。

…………ものすごい穴の中で。


『なぁ、ぎんとき。知ってるか?温泉て掘れんねんで?』

『アホか馬鹿』

無事引き上げられたあいつは得意気に温泉を掘ろうとしたと言い、俺は呆れて即答したのを覚えている。

ヅラの妙な入れ知恵と夢乃の行動力が同じ方向に働くと、まぁろくなことがない。
俺達もそれに便乗していただろうと言われると、それも事実なんだがな。

危険がなければ大概を笑って見ていた先生は本当にでかい大人だったんだろう。



戦場にウノを最初に持ち込んだのもあいつらだったし、麻雀牌投げ合って大喧嘩したのも元々はあの二人だ。麻雀牌が壁にめり込む惨状に一部の仲間は青ざめて、一部は麻雀牌も武器になるもんだと知って戦に出るとき懐に忍ばせるようになった。
…あー、攘夷ん時は辰馬もいたから更にパワーアップしてたな。最終的ストッパーの先生もいなかったし。



本当ろくなことがない。



そう思っていた。

だがしかし。
高杉も、くだらねぇなと言いながら、
なんだかんだで交ざって騒いでいて、俺もやっぱり同じ場で同じ様に一緒んなって馬鹿やってた。


同じものを見ていたかった。
どんなときも。

そんな単純なことだった。












「わんっ」


「銀ちゃん、ここアル」


「よくやった。褒めてつかわす。
ヅラ!!ここにいるのはわかってる!!」


ガラリと戸を開けて暖簾をくぐる。
正直に吐け!!
そんなに広くはない定食屋に俺の声が響いた。


「あ、いらっしゃいませー」


しーんと静まった店内から返ってきた緊張感ゼロの声。
カウンター席にいたヅラはいつもの無表情顔でこっちを見ていて、隣の宇宙生物のプラカードには「あ」とだけ書いてある。


なんだ、この沈黙は。


居たたまれない空気にちらりと店内を見回す。
ヅラ、エリザベス、店長、…あれ?店長って寡黙な感じの女性じゃなかったか?さっきのいらっしゃいませ〜は誰だ?


「いらっしゃいませー、ただいま、お水とおしぼ…りぃ…を?」


もう一人、カウンターの中からお冷やとおしぼりを持って出てきた女。


「うーん。…これはこれは、どうしようかな…」

彼女はゴトリとお冷やとおしぼりを一度カウンターに置き、そのあと何故かお冷やを一気に飲み干して。


「じゃ!エリザベス、またね」


素早い身のこなしで勝手口から逃亡を図ろうとする。


「神楽、新八、確保ぉぉぉ!!」


勝手口を先回りして塞いだ二人にも怯まずに立て掛けてあった傘を剣に見立てて突破を企てようとする。
しまった。
あいつなら突破しかねない。

しかし、

「夢乃、おやめ」

あいつを止めたのは、静かな店主、幾松の一声だった。



















「で?なんでここに?」


「ちょっと、ケンカしまして…」


「誰と」


「両親と」


びっくりした。


「両親って、引き取ってもらった小林夫妻だろ?家出!?って正気か!?」


「あたしだってびっくりよ。
でも、名前を捨てろなんて言うから…
幸代もあたしの名前なのに!大事な名前なのに、もう必要ないからって…。
雪くんまで勝手に手続きするの手伝ってるし…」


夫妻からもらった名前は、家族の証みたいな重みがあったんだろう。


「お前…思い…出したんだな?」


「え?……うん、思い出したよ。
ぎんとき。会いに来てくれてありがとう。あたしは会いたくなかったよ」



どうしようもなく懐かしい存在が目の前にいた。






2012.6.22.

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あきゅろす。
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