g.long
今日、君の町へ。
「…………………あれ?ここ、あってるよな?」
長いこと揺られてたどり着いた駅は、片田舎というよりも、近代的でスタイリッシュ?っていうカタカナの表現が似合う駅舎だった。
『星十字ヶ丘』
…うん、あってる。
乗り過ごしてない。
えーっと、これは田舎じゃないような…。
半信半疑で歩いて駅を出ると、やはり田舎とは思えない綺麗に舗装されたロータリー。しかも広め。
ただ、人がまばらで、駅前以外にはビルらしいビルが無いようだ。そこらへんは田舎なんだと感じなくもない。
駅のロータリーの正面からは大きな、これまた新しそうな道がはしっていて、街路樹なんかも立派だ。
どうやら山の方まで続いているらしい。
ああ、やっぱ田舎だな。
駅から離れると情緒ある普通の民家があるし、年月を思わせる何かの商店らしき建物も見えた。
さてと。
どうすっかな。
馬鹿でかいロータリーを歩いて進み、紺色の車を見つけた。
数台の自転車と運転手不在の軽トラ1台以外はその車しかない。
確実におさえたいところだ。
運転席の窓が開いていて、黒髪の男がちょうどよく電話を切るのが見えて、ダッシュですかさず話し掛ける。
「すいませーん」
「はい、何でしょう?」
いかにもエリート風な眼鏡は、いかにも優等生歴長いんですよ、みたいな爽やかな笑みで対応してくる。
イケメンか、イケメンエリートかコノヤロー。
「小林医院って病院に行きたいんすけど、行き方教えてもらえますかね?
この住所なんだけど」
「小林医院?
ああ、知ってますよ。そんなに遠くはないです。
あくまで田舎規準ですけどね」
沖田くんが落としていった住所を見せると、イケメンエリート眼鏡はすぐにわかったらしい。
あ、こいつホクロ多くね?
イケメンエリートホクロ眼鏡、か。
おいおい、キャラ盛りすぎだって。
「よかったらお送りしますよ。
歩きではそれなりに掛かりますから」
「え、マジで!?」
イケメンエリート眼鏡は「都会の方から来られたんですか?」とか、とても一般的な会話を振ってきて、車内の空気も読むパーフェクトぶり。
そう来られると変化球を返してやりたくなるが、まぁおとなしめに「ここは田舎だって聞いてたんだけど、綺麗なもんすねー」なんて優等生を演じてみる。俺だってやるときはやれる男ですから。
「田舎町と山しかないのは変わりませんけど、特急が開通したので最近新しく整備されたんですよ」
「そーなんですかー」
送ってもらってなんなんだけど。やっぱ綺麗なおねーさんの方がよかったなー。
「ここが貴方がお探しの小林医院です」
「いやー、助かりました!」
「いえいえ、ついでですから、お気になさらず」
サンキュー、ホクロ眼鏡。
すげーな。同じ眼鏡でもホクロが付くだけでイケメンエリートパーフェクトだよ。
うちの眼鏡とは大違いだよ。
さて、と。
来たぜ、小林幸代サンよ。
「坂田さん、坂田さん、診察室2へお入り下さい」
おねーさんのアナウンスがあって、診察室へ向かう。
どうして診察室へってか?
知らねーよ。なんかの神秘だよ、きっと。
決して受付のおねーさんが色っぽかったからとかじゃないです。
名前を呼んで欲しかったからでもないです。
「こんにちはー」
ここは小林幸代の両親の病院なんだろ?まずは親を見てみんのもアリかなーって思ったんだよ。
だって思ったよりデカイ病院なんだもん。親父がいかにもな頭の固い御父様的キャラだったら作戦変更しなきゃならねぇし。
うわ、診察室のナースも美人!ちょっとケバいがそれもアリだ!
…って、あれ?
「こんにちは」
「あれ?アンタ…さっきの…?」
「ええ、僕はここの医師ですから」
白衣を着て座ってたのは、さっきのホクロ眼鏡だった。
「マジで!?」
あー…マジでエリートなの、そう。
すごいね、最近のイケメンは。
くそ、最強過ぎだっつの!
歳まで同じくらいじゃね?当て付け?イジメかコノヤロー。
「どこかお悪いんですか?坂田さん」
「いや、あの、あ、あのですね…。
小林…先生は?」
「小林先生は今日はお休みです。
先生に何かご用でしたか?」
「えーっと、」
なんだかこのDr. パーフェクトほくろ眼鏡はパーフェクトなだけじゃなく、なんかいけすかねぇ。
こいつ、最初の時からこればっかりだ。
爽やか笑顔スイッチでもあんのか?
全く同じ笑顔を作るって結構難しい気がすんだけど。
つか、目の奥笑ってねぇ気がすんだけど。
おかしくね?
「坂田さん、彼女に何のご用ですか?
貴方は小林先生ではなく、幸代さんに会いに来られたんでしょう?」
気のせいじゃねぇぇえ、
笑顔どす黒いっすけど!!
2012.4.20.
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