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g.long
今日、女装した友達を見かけた。


『夢乃と話をした』


ヅラがそれを言ってきた時、なんでかアイツも高杉もいなくて‥。
そういや、二人で出た偵察からの帰り道とかだったっけか。
怪我したアイツの代わりにヅラが来たんだ。
戦争も長引いて、みんなボロボロになっていた。辰馬はもう宇宙に行って、俺たちがずいぶん追いつめられてきていた頃。
アイツが死ぬ少し前の、こと。


『俺たちは、命を懸けて戦っている』

そうだ。そのはずだった。
だけど、なんか違うんじゃねぇの?
って思い始めたのも、この時か。


『だが、俺は、夢乃がこれ以上戦うのに反対だ』


『‥今更な話だな。なんだ急に。怪我したからか?』


『情けないがな。
夢乃は強い。志もある。大切な仲間だ。
今更女だから戦うなとは言わん。正直なところ、貴重な戦力だ。
だが、怪我を負った夢乃を見て思った。
これ以上戦わせたくない、と』

なんだこれ。惚れた女を守りたいってか?
ヅラのくせに。っつーかこれこそ今更だろ。

『‥‥‥言ってて恥ずかしくないんですか、桂くん』


『お前だって同じじゃないのか?
高杉も、お前も、辰馬も、夢乃だけは失いたくないと思っているだろう?』


『一緒にしないでくれるかな、頼むから。青春臭くてなんかすげー恥ずかしいんすけど』


『辰馬に、夢乃を誘うように促したのは俺だ。最初からそのつもりだったと言われたがな』


『ったく、余計なことを。アイツが聞いたらキレんぞ』


『覚悟の上だ』


『‥ならさぁ、直接言えば?もう下りろって』


『言った。そして案の定殴られた。あれは良いパンチだったな。
‥俺が言っても聞かん。そのくらいはわかっていた。
だからお前に言っているんだ。銀時』


『俺にどうしろと?』


『夢乃とともに、戦から引いてくれ』


『つまんねー冗談だな。とうとう頭沸いたか?』


『‥‥ふっ、そうだな、少し、おかしいな。どうかしている』


『だいたいよー、アイツが素直に話を聞くやつか?
俺だって、お前だって、高杉だって説得すんのは無理だよ。
先生だって‥、無理かもな。今回に限っては。
お前にアイツが「戦いから引け」って言うのと同じだろ。
俺たちもアイツも、もう引き返せねぇよ』


そうだ。引き返せなかった。
もう、遅かったんだ。何もかも。

最期の時、生き残るために戦うと決めたけれど、
結局アイツは生き残れなかった。










「えーと、もいちど確認すっけど、あんたは桂小太郎に会いたいんだな?」


「はい」


「あいつに会ってどーすんの?」


「えっと‥坂田さんには言えません。真選組にも」


「あっそ。まー、あんたのために言うなら、あのお尋ね者の馬鹿のとこに行っても何にも良いことないと思うよ?」


「‥‥それは、あたしが決めることです」


「そーですか」

一体どこで知り合ったのか知んねーけど、
あんたさ、傷つくだけだよ。
ヅラはあんたじゃなくて、アイツを見てて。
きっとあんたに掛けた優しい言葉は、アイツへのもんだろうに。
ヅラがお前から離れた理由を考えてやれっての。
お互い傷つくから離れたんだろ?
ヅラの恋愛事情なんざ知ったこっちゃねーけど。


「‥本当に今日会えるんですか?」


「当たり前よ、万事屋銀ちゃんをなめんな」


馬鹿だな、ヅラ。
彼女中身もどっかのアホと似て行動力半端ないよ?
お前追っかけて故郷から出て来ちゃうくらい。
観念して責任取るんだな。
っつーか、ほんと、ヅラはアイツに惚れてたんだなぁ。
そっくりなやつに手ぇ出すほど。


「ほら、向こうの、看板持った白い生き物見えるか?」


「はい、呼び込みの?」


「あれエリザベスな」


「‥はぁ。エリザベス‥ですか」


「んで、その奥のオカマがヅラ子」


「ぅえっ?マジでか」


「そ、あんたの愛しの桂小太郎のなれの果てっつーかなんつーか」


「うわー」


「もうあれ、ただの馬鹿だから」



ここまでだ。
行ってきな。

依頼は完了だろ?
桂に会わせる。クリアだ。
あとは大串くんとか総一郎くんがなんとかするだろ。
お妙んとこにいるこの数日で新八や神楽も懐いてたみてーだし。


「坂田さん、‥‥ありがとうございました。‥さようなら」


きれいにお辞儀をして、小林幸代は駆けて行った。
礼儀がなっててアイツとは全然違う。育ちが良いんだろう。

人混みにのまれてく背中を見て、
ヅラはやっと幸せになるんだろうな、と思った。




2012.4.13.

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あきゅろす。
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