[携帯モード] [URL送信]

g.long
今日、何も知らず。


「あっれー、総一郎君じゃん」

「旦那」

散歩ですかィ?と言い終わらないうちに、総一郎君の後ろから隊服姿のジミーが「沖田さーん!仕事を‥」と叫びながら走ってきたのが一瞬だけ見えた。
うん。本当に一瞬だけ。

「ちっ」

沖田君の舌打ちの直後、響いた爆音と爆風、爆煙。

「‥あー‥すごいね、今日もえげつない」

ジミーの姿はもう見えない。

「へィ。
これ、新型にしたんで。威力も当社比30%アップでさァ」

「そ、そうなんだ‥?」

自慢気にロケットランチャーを見せ、黒い笑みを浮かべる若者に大人として複雑な気分になる。

「それはそうと、いいの?ふらふらしてて。仕事とか言ってなかった?」

「いいんです、俺は」

「あぁ、非番なんだ?」

隊服ではなく私服だもんね。

「いえ、サボりでさァ」

「あ、そう‥」

「旦那、茶ァでもどうです?甘味くらいおごりやすぜ」

「え!いいの?」

「サボりの共犯者ってことで」






ファミレスでパフェを頼み。
総一郎君は、飯を頼んでいた。

「飯って、今おやつ時だけど」

「食ってねーんですよ、昼飯」

「へ?なんで」

「屯所でちょっとあって。
めんどくせーんで土方さんに押し付けてきたんでさァ」

「大変だねぇ」

我ながらひどい棒読みだが、総一郎君は顔色変えず肩を竦めるだけ。

「面倒な男ならボコボコにして終わりですが、女ボコるのはまずいって言いやがるんで」

「女?」

「へい。
桂の周辺うろうろしてる女がいたんで職質かけたら『桂に会いたい』とか言いやがりやして。
取材で、とか言ってやがんですが、どうにも怪しくて捕まえてみたものの。桂に会いたい以外だんまりでお手上げなんでさァ」

「桂に会いたい?
最近暑いから頭沸いちゃったんじゃないの、そのお嬢さん」

「ボコってさっさと放り出しゃーいいんですがねィ」

「いや‥それは警察の発言じゃないよね、確実に」

「で。
旦那、なんとかしてくれやせんか?」

「なんとかって、どうしようもないだろうが。そいつどうしたいの、桂一派なら捕まえちまえば良いだろ?」

「それがわかんなくて困ってんでさァ。だんまりで。桂に会いたいってだけじゃ桂の仲間かどうかもわかんねェ。恨みがあるって可能性もゼロじゃねェってんで。痴情のもつれだったらそれなりに面白いんですがねィ」

「俺に聞き出せって?
真選組も指名手配犯も、
銀さんどーでもいいんだけど」

「頼みまさァ旦那。
1週間、毎日パフェ食べたくありやせんか?」

「銀さん、総一郎君のお願い全力で聞いちゃうよ」


頭沸いた女の素性を探る。
適当に話して適当なところで手を打てば良いと考えてた。ヅラに痴情のもつれなんて有り得ねぇし。

その女を目の前にして、沸いてんのは俺の頭の方かと本気で心配することになるとは、全く考えずにパフェを食べていた。





2011.07.31.

*前へ次へ#
[戻る]


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!