g.long
今日、何も知らず。
「あっれー、総一郎君じゃん」
「旦那」
散歩ですかィ?と言い終わらないうちに、総一郎君の後ろから隊服姿のジミーが「沖田さーん!仕事を‥」と叫びながら走ってきたのが一瞬だけ見えた。
うん。本当に一瞬だけ。
「ちっ」
沖田君の舌打ちの直後、響いた爆音と爆風、爆煙。
「‥あー‥すごいね、今日もえげつない」
ジミーの姿はもう見えない。
「へィ。
これ、新型にしたんで。威力も当社比30%アップでさァ」
「そ、そうなんだ‥?」
自慢気にロケットランチャーを見せ、黒い笑みを浮かべる若者に大人として複雑な気分になる。
「それはそうと、いいの?ふらふらしてて。仕事とか言ってなかった?」
「いいんです、俺は」
「あぁ、非番なんだ?」
隊服ではなく私服だもんね。
「いえ、サボりでさァ」
「あ、そう‥」
「旦那、茶ァでもどうです?甘味くらいおごりやすぜ」
「え!いいの?」
「サボりの共犯者ってことで」
ファミレスでパフェを頼み。
総一郎君は、飯を頼んでいた。
「飯って、今おやつ時だけど」
「食ってねーんですよ、昼飯」
「へ?なんで」
「屯所でちょっとあって。
めんどくせーんで土方さんに押し付けてきたんでさァ」
「大変だねぇ」
我ながらひどい棒読みだが、総一郎君は顔色変えず肩を竦めるだけ。
「面倒な男ならボコボコにして終わりですが、女ボコるのはまずいって言いやがるんで」
「女?」
「へい。
桂の周辺うろうろしてる女がいたんで職質かけたら『桂に会いたい』とか言いやがりやして。
取材で、とか言ってやがんですが、どうにも怪しくて捕まえてみたものの。桂に会いたい以外だんまりでお手上げなんでさァ」
「桂に会いたい?
最近暑いから頭沸いちゃったんじゃないの、そのお嬢さん」
「ボコってさっさと放り出しゃーいいんですがねィ」
「いや‥それは警察の発言じゃないよね、確実に」
「で。
旦那、なんとかしてくれやせんか?」
「なんとかって、どうしようもないだろうが。そいつどうしたいの、桂一派なら捕まえちまえば良いだろ?」
「それがわかんなくて困ってんでさァ。だんまりで。桂に会いたいってだけじゃ桂の仲間かどうかもわかんねェ。恨みがあるって可能性もゼロじゃねェってんで。痴情のもつれだったらそれなりに面白いんですがねィ」
「俺に聞き出せって?
真選組も指名手配犯も、
銀さんどーでもいいんだけど」
「頼みまさァ旦那。
1週間、毎日パフェ食べたくありやせんか?」
「銀さん、総一郎君のお願い全力で聞いちゃうよ」
頭沸いた女の素性を探る。
適当に話して適当なところで手を打てば良いと考えてた。ヅラに痴情のもつれなんて有り得ねぇし。
その女を目の前にして、沸いてんのは俺の頭の方かと本気で心配することになるとは、全く考えずにパフェを食べていた。
2011.07.31.
*前へ次へ#
[戻る]
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!