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g.long
今日、イチゴ牛乳を買った。



ぎんとき。いま、ちゃんと幸せ?




「‥幸せ、かァ‥‥」


飲み干したばかりのイチゴ牛乳。
もし今奇跡が起こって空のパックからイチゴ牛乳が溢れ出したら幸せかもしんない。
なんかほら、そんな昔話あったろ。実際起こるかもしんねーじゃん。


「‥え‥‥銀ちゃん‥‥大丈夫アルか‥」

「駄目だよ、神楽ちゃん。寂しい男のひそかな呟きに突っ込んじゃ。つつかれたら痛いって」


「おおぉい!コラ!」


ったく。デリカシーも知らねぇ今どきのガキはこれだから。あーやだやだ。


牛乳パックを軽く潰して。



「ちょっとイチゴ牛乳買ってくらぁ」



感傷に浸りたいときもある。
そんなときは多少格好付けたいもんだ。
立ち上がる時に机に思っきし足ぶつけたけど、なんともないフリをして強がって。

笑えばいいさ。

でもこんな気分の今だけは、俺の見えないとこで笑ってくれ。
そう思って玄関を抜けて、扉を閉めた。


そう。

俺にだって感傷に浸りたいときはある。

そんな気分なんだ。














夢乃はイチゴが好きだった。
んで、イチゴ牛乳が嫌いっつう何ともふざけた女だった。


『よくそんな甘ったるいモン飲むなぁ』

『おめーイチゴ好きならこの美味しさもわかれよ』

『所詮イチゴの香料のくせに。
邪道や邪道!』

『ざけんなよ!
これぞ絶妙なハーモニーなんだかんな!』




馬鹿騒ぎばっかりで。


ガキ過ぎたあの頃、何が幸せなのかなんて全く考えたこともなかった。

多分ほかの野郎共もそうだったはずだ。

男はそういうもんだから。


ただ、そこに来るまでの自分達が満たされてなかったってことだけは知ってた気がする。






『あたしはいつも自分が今ちゃんと幸せかどうかって考える』





俺は、今。スーパーでイチゴ牛乳が安売りしててめちゃくちゃ幸せです。






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あきゅろす。
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