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背中に想うC

あれから10年。


あたし達は相も変わらず

別々でいて、絡まり合った

道の上を歩き続けている。



人は成長して、

何かを得ていくけれど。

その人を構成する、根元は

何も変わらない。



あたし達は、立場も環境も

変わってしまったけれど、


馬鹿なのだけは

変わらなかったね。




















「なっ!?何だこの霧は!見えんぞ!!」

「‥‥‥‥‥‥由芽、一体何のつもり」

「何ぃ!?由芽だと!?」


草壁さんが本当に気の毒だわ。
『お願いします!もう私には無理です』と泣き付かれて覗いてみたら、案の定。
晴と雲の守護者達は時も場所も弁えず拳をぶつけ合う始末。

こうなれば草壁さんには無理に決まっている。
本気のこの二人を止めるのは、沢田くらいにしか無理だもの。

とは言っても、沢田以外でも可能性として例外は多々あるのだ。
骸でも可能に違いない。ただ、二人を止めるようなことわざわざするわけないから、実質沢田だけというわけで。

今日はまだ本格的に始まっていなかったため、あたしでも止められる範囲だった。




「お久しぶりです。了平さん」

「由芽!久しいな!」

「‥‥‥‥‥ふん、‥僕は寝る」


喧嘩を止められて興味を失せたらしい雲雀は言葉少なく部屋を出て行った。


「相変わらずだな雲雀の奴は!」

「そりゃ、雲雀ですから」

了平さんもだろう、とは言わないでおく。


「ずっと日本にいたのか?」

「うん、あたしはここ、日本の責任者ですからね」

「風紀財団、か‥。
それにしても、お前も着物はよく似合うな!極限に艶やかだぞ」

「やっと着慣れてきたの。
文句言っても仕方ないからね、こればっかりは恭弥の唯一の趣味みたいなものだし」

「ははっ、おかげで俺まで着物を着るとはな!
お、忘れるところだった。
小僧が会いに行くと言っておった」

「リボーンさんが?
雲雀に?」

「いいや、お前に、だ。
お前は全く奴らに会いに行かないだろう?だから、こちらから行くと」

「わかった。
お待ちしています、と伝えてください」





約、10年。

懐かしい彼らに会いに行けないのは、この月日を実感したくないから。







「ちゃおっす、由芽」

「‥リボーンさん‥!」


もう会えなくなったはずの彼に、あたしの心も頭も、途端に混乱を始める。
だから会いたくなかったのだ。
この10年を、忘れてしまいそうになるから。


「お前は、今は風紀財団にいるんだな」

「はい。今でも連絡係ですよ」

「そうか。
‥‥お前の意志で、か?」

「‥‥‥相変わらず‥リボーンさんの眼はごまかせないか」

「当たり前だぞ」

懐かしい。
懐かし過ぎて苦しいくらい。
この苦しみは、過去のどこかに置いてきたはずのものなのに。


「あたしの、意志ですよ。
成り行きがどうであれ、結果的に選んだのはあたしです」

「お前、やっぱり馬鹿だな」

「そうかもしれません。
でも、間違った選択はしていない。‥‥あたしは、馬鹿なりの幸せを手に入れましたから」

「‥そうか。
そうそう、助かったぞ」

え?
急な話題の転換に反応が遅れた。

「クロームのことだ。
雲雀に助けるように言ったの、お前じゃないのか?」

「いいえ、あたしは雲雀に方法を教えただけです」

「ふーん?」

疑うかのような子供の眼に、またしても負けた気がした。

「本当ですよ。雲雀は‥‥恭弥は優しい人ですから」

「ふっ、お前、そんなこと言ってると雲雀に噛み殺されんじゃねーか?」

ニヒルな笑みに、苦笑で返した。







骸。

クローム。

犬。

‥‥千種。


昔、確かに存在した、あたしの居場所の一つだった。


手を離したのはいつだったかな。


『好きだった』


面倒臭がりの千種らしい、
シンプル過ぎて不器用な言葉。


あたしは応えることは出来なくて

骸を助けに行く彼らを止めることも、共に行くことも、あたしは選ばなかった。



『クローム髑髏が危険な状態らしい。君なら‥どうする?』


そんなあたしを、

雲雀は知っているのだ。








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