最強ツンデレの敗北
リ.理由なんてない
中忍試験、本選当日。
私は、試験会場の警備に当たっていた。
中には火影様だけでなく風影や他国の大名もいらしている。
厳戒体制を取るのは当たり前というもの。
「気になるか?」
最近よく任務で一緒になる元暗部の2人が尋ねてくる。
「ならない、と言えば嘘になるかもしれませんが。
任務は任務ですから」
「この試合の2人、知り合いなんだろう?」
「な‥どうして?」
私、そんなこと言ったっけ。
「そういう顔してるぜ」
「こらリク、若い奴をからかうなよ」
「若いって‥お前はジジイかよ」
「‥っ、ふふふ」
「お、やっと笑ったな。
今日初笑いだな。
ったく、自分の試合よりも緊張した顔してたぜ?」
私はあまり感情が顔に出る方ではないつもりだった。
それでも、わかる人にはわかってしまうんだろうか。
「俺もスイもな、前回の本選のとき火影様の護衛で試合見てたんだ」
「もちろん、お前の試合も見たよ」
「あの2回戦は残念だったよな」
「あと少しだったのにって、こいつずっと煩くてな。あの冷静な判断があったからこそ、お前は中忍になったってのに」
「だって本当に惜しかっただろ」
「そう言って頂けただけで十分です」
「あんときは、お前がそんな風に笑うとは思えなかったし、俺達もこんな風に笑えるなんて思ってなかった」
「え?」
「試合に勝っても、中忍に選ばれても、お前全然嬉しそうじゃなかったろ?難しそうな奴だなって思ったよ。
火影様も言ってたんだ『あの子は殻の中におる。‥皆、あの子が出てくるのを楽しみに待っておるのにな』って」
「火影様が‥」
「ああ、今は安心してるだろうけど」
「お前の殻に、ひび入れた奴がいるんだろ?」
「‥‥ひび‥」
私の殻に、ひびを入れた人‥。
ナルト!!
場内から叫ぶ声が響いてきて、はっとする。
「そろそろ、決まるかな」
「日向のガキか、九尾のガキか」
え?
「九‥尾?」
「知らなかったのか?あいつは‥」
「おい、リク」
「どうせ皆知ってるだろ?
うずまきナルトは九尾を封印されてんだとよ」
そんな。
『オレは火影になるんだってばよ!』
ナルトはどんな思いで言っていたんだろう。
「いくら九尾と言っても、日向が相手じゃあな」
あのナルトに勝ち目はない。
ネジが勝つ。
私は、何故はらはらしているのだろう?
結果が決まっているのに。
この、落ち着かない気持ちは。
「ネジが勝ちます。
でも、私きっと‥ナルトにも、負けてほしくないんです」
冷静に判断すれば、ナルトが勝つわけがないのに。
何考えてるんだろう。
「そうだな。俺もだ」
「俺達も、九尾のガキが嫌いじゃないんだよ」
「馬っ鹿だもんなー、あいつ!」
「あはは、本当に」
ネジ、頑張って。
ナルト、頑張って。
神様、どうか2人に祝福を。
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