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最強ツンデレの敗北
チ.近くにいたつもりだった


『合格したら、話したいことがある』

合格なんて、してもしなくても、私は何でも聞くのに。


『見てろよ!ソッコー中忍になってやっからな!』

これは、昨日任務に出る前にナルトと偶然会って吠えられた。


全く。
男の子っていうのは、みんな中忍だとか下忍だとか、形の見えるものにこだわるのね。単純だわ。

単純‥だから、私は、安心して彼らと付き合えるのだけど。

(あれ?彼ら?)

ネジは良いとして、ナルトまで一括りにする必要はないな。



「ユメ、そろそろ行くぞ!」

「‥何か気になることでもあったか?」

同行の上忍の2人から声がかかって緩んだ気を引き締める。

「いえ、すみません。
今頃中忍試験は一次かなと、ふと思ったものですから」

「あー‥そうだな。お前は同期が何人か出ているのか」

「だけど今年はルーキーがやたら多いって聞いたぜ。
っつーか、試験のおかげで人不足。俺らはSランク任務か」

「リク、Aとは違うんだ。気を引き締めろよ」

「わかってるよ。
お前のがキツイよな。ユメ。Sランクは初めてだって?」

「‥はい」

「中忍にしては大抜擢だろ。頑張れよ」

「大丈夫。気ー抜くとこ抜いて、入れるとこだけ入れてれば」

「お前は抜き過ぎだよ」


スイさんとリクさん。初めて一緒になった2人だった。
少し前まで暗部にいたという。

不思議と話しやすく、面白い人達だった。


「暗部とは、どのようなところなのですか?」

「‥寂しいところだよ。
人間にとっては、な」

「俺がこいつと会ったときは、そんなこと考えたこともなかったが。俺達は寂しいんだって気付いちまったら、もう暗部には居られないと思った」

「そんな勝手な俺達に、火影様は『苦労をかけたな』とおっしゃったんだ。『光の中で暮らせ』って。
頭が上がらないと思ったよ」

「だから、今俺達は幸せなんだ。
こんな可愛いくの一とも任務できるし?」

「良いのか?カスミに‥」

「おおおまっ、言うなよ!殺されるだろ、俺!」


少し年上だと言う彼らは、なんだかきらきらしていた気がした。




忍になること。

里を守ること。

私は、ずっと考えている。

答えなどないかもしれないけど。












気の抜けなかったSランク任務からやっと帰還した私は、翌日中忍試験の中間結果をテンテンから聞き、やり切れない思いでいた。


「‥‥‥ユメか」

「‥ただいま」

「おかえり。いつ帰ってきたんだ?」

「昨日よ」

「怪我は?」

「肋骨と腕の骨にひびが一本ずつ。同行の上忍のおかげで幸いたいしたことないわ」

「そうか」


ネジが遠く感じた。


「‥リーのこと、聞いたわ」

「そうか‥」

私は、リーが苦手だった。
きっとリーも、私が苦手だった。

だけど

嫌いではなかった。




「ネジと、本家の女の子のこと、聞いたわ」

「‥そうか」


さっきから、『そうか』ばっかりね。
こっちを向いてもくれないし。どうせ白眼で見えているだろうけど。

「‥‥じゃあ‥」

帰るわ、と言いかけた。

「初めてだな。ユメが俺を修行場まで訪ねてきたのは」

「そうだっけ?」

「そうだ」

時々、鳥の声がする以外、
森の中は静か過ぎた。

「お前は、ヒナタ様を殺そうとした俺を軽蔑するか?」

「‥‥ネジのこと、何も見えてなかった自分を、軽蔑してるわ」

「‥‥‥‥」

ネジがどんな風に生きてきたか、私は、知ってるつもりだった。
本家に対する憎しみが少なからずあることも。

「私は、ネジの何を見ていたのかしらね。
気付けなくて、ごめん」

憎しみは消すことは難しい。
だけど、誰かを殺めようとするなんて。
あのネジが!
嘘みたいな話だった。

「‥‥‥‥‥本選が終わるまで、お前には会わない」

振り向かないネジの背中を見て、ああ、本気なんだと感じた。

「わかった。
本選、頑張ってね」


本選まで、あと2週間を切っていた。



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