最強ツンデレの敗北 ヘ.変なヤツ! 「おーい!ユメ!!」 何かと思えば。 忍道具の中でも手裏剣やクナイの専門店。その店先を出たばかりだった私の目の前、ゼイゼイと忍者らしくもなく息を切らしている少年が一人。 「やっぱり‥ユメだってばよ。オレの‥オレの名前、覚えてっか!?」 「‥うずまきナルト」 「大正解っ!シシ!」 「それで何の用? うずまきナルトくん」 「ナルトでいいってばよ! え、用?‥‥んー‥なんだっけ」 何なの、一体。 「そんなに息切らしてまで走ってきておいて、忘れた訳?」 うずまきナルトは不服そうに頬を膨らます。 「仕方ねーだろ、今日は1日任務で猫追い回してたんだからよ」 懐かしいな。私も一度だけ猫探しの任務をしたことがあった。 「オマエ、笑えんじゃんか!」 「‥え?」 「今!ふわって笑っただろ! オマエもあの猫知ってんのか?」 笑ったつもりなんかないけど。 「あの名物猫のこと? 一度だけ、任務で」 「大変だよな!」 「私達は5分だったわ。目標確認してから確保まで」 「‥‥‥‥‥‥‥まじ?‥」 「だって猫探しよ?そんなものでしょう」 懐かしい。私の初任務だった。 「‥‥オレだってな! あんな猫の1匹や2匹、一瞬で捕まえてやるってばよ! つーか!あんなしょぼい任務がしたくて忍者やってんじゃねーっつの!オレはなぁ‥!‥‥ん?こんな店あったんだ?ユメ、何買ったんだ?」 この少年は。 呆れる程よく喋るし落ち着きがない。疲れる。 面倒なのでもう逃げたいけれど、無理そうだ。 絶対に私の答えを聞くまで離さない。っていう好奇心剥き出しの目。 「‥これよ。前の任務で壊れたから買い直したの」 溜息つきつつ、風魔手裏剣を見せた。 「んー‥見たことあるよーなないよーな‥」 「アカデミーで何を教わってきたの。 じゃあね。うずまきナルト」 「待った!」 「何よ」 「シシシ!ユメ!これ、教えてくれってばよ!」 一体何を言い出すの。 「なんでよ。アカデミーで基本は教わったはずよ。自分でなんとかすれば」 「ええーケチー!いーじゃんか!オマエってば手裏剣もクナイも上手いんだから、ちょっとくらい後輩に教えてくれたってさ!」 「嫌。」 「いーもーん!教えてくれるまで離れないから!」 は!? 「迷惑」 「じゃ、教えて♪」 「‥‥‥‥‥。」 助けを待とうにも、私の狭すぎる交友関係ではネジかテンテンしか頼みの綱はない。が。 (2人はガイ班で任務中‥) 「にっしっし! さ!レッツ修行だってばよ!」 「‥‥最悪」 「そうゆーなって! お礼に今日は一楽のラーメン奢るからよ!‥って、‥あ!」 「‥今度は何?」 「オマエの‥‥いや、なんでもねー」 今度は気まずそうに言葉を切る。 「一体何。 言いたいことがあるなら言いなさいよ。そういうのが一番苛々するわ」 「はぁ!? オマエってば本っ当に感じ悪いのな!」 ああ、まただ。 苛々が一瞬で冷めていく。 ‥もういい。無駄だわ。 「感じ悪くて結構よ。 私は思ったことを言ってるだけなんだから。それのどこが悪いっていうの? 私は思ってもない、口先だけで会話するなんて堪えられない。影でこそこそと下らない話をするのもね。 私は、そういう人間なの。残念だったわね」 こうして何人もに背を向けた。 これが私。 仕方がないでしょう? 頑固だ、と。馬鹿な子だよ、と。おばあちゃんもネジも笑う。 ‥いや、2人だけは、私を軽蔑しないで笑ってくれたんだ。 それだけでいい。 もう、いいの。 「‥待てよ。逃げんな」 「痛っ!?」 すごい力で腕を掴まれた。何、こいつ。 「そうやって、すぐ諦めんのかよ。ずっとそうやって、生きてきたんか? 寂しいヤツだな、オマエ」 「離して。あなたに何がわかるのよ」 「わかんねーよ。 落ちこぼれじゃないオマエは、たくさんのヤツに認めてもらえるはずだろう!?わかってもらえるはずだろう!?」 「わかってなんて貰えないわ」 「それは!オマエがわかってもらおうとしないで逃げてっからだ!」 「‥離して」 ゆっくりと私の腕を離したうずまきナルトは、ぎこちなく笑って言った。 「さっきは‥。‥オマエの祖母ちゃんのこと‥火影のじいちゃんに聞いたからさ、心配して今日オマエに声かけたんだ。それ‥思い出したんだってばよ。 でも、あんま話題にしたくねーかもって思ってよ!オマエのこと悪く思ったわけじゃないってばよ」 「‥‥‥。」 私は、馬鹿なのかもしれないわ、おばあちゃん。 「オレはオマエのこと感じ悪いって言ったけど、嫌いじゃねーよ」 にししって頭悪そうな笑顔。 うずまきナルト。 「‥‥私も、嫌いじゃない、わ‥多分」 「じゃ、教えてくれってばよ! このデカイ手裏剣!」 「‥ラーメン‥卵付けてよね」 「しょうがねーなー、超特別だかんな!そのかわり、サスケにも負けねースゲー技教えてくれよ!」 「あなたに出来るならね」 「よーし!やってやるぜ!」 . [*前へ][次へ#] |