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最強ツンデレの敗北
ホ.ほんの少しの予感

「ユメ!」

「ネジ?どうしたの?」

ここは訓練場の中の私がよく使ってるスペースだ。
任務で帰還したばかりだけど、今回の任務中にクナイの威力をもう少し上げたいと思いついて練習していた。思いついたらすぐにコツを探っておくのが私のやり方。じゃないと忘れてしまうから。

私とネジは仲は良いが、お互いの修行にまでは関与しない。
アカデミー時代は多少一緒に練習したりもしたけれど。
原因はきっと、私が中忍になったからだとか白眼を持つネジと私では根本的に違うからだとか、そんなことではないだろうね。


「さっき任務から帰ってきたら、ちょうどユメも戻ってきたばかりだと聞いて探していたんだ」

「そっか、お疲れ」

「夕飯はどうするんだ?」

「ネジ、まだおやつの時間よ?」

3時半をやっと過ぎた頃だというのに、夕飯のお誘いは早過ぎる。

「今日の予定を前もって聞いておこうかと思ったんだ」

笑われてちょっと機嫌を損ねたネジ。ほんと私達はよく似てる。

「今日は任務明けで材料ないし、一楽にでも行こうかと思ってたわ」

「一楽?ラーメンか?」

「美味しいのよ?まだ一度しか行ってないけど」

一緒にくる?と聞けば、返ってきたのは溜息一つ。

「惣菜の次はラーメンか?
俺はお前の食生活が心配だ」

「そんな、心配されるほど酷くないわよ」

「よく言う。『ちゃんと作って食べる』んじゃなかったのか?」

「‥‥‥面倒」

厭味な男は嫌われる‥って、言ってやりたいけど反論できない。

「買い出し付き合ってやるからちゃんと作って食べろ」

「だって、料理って難しいのよ?」

「俺が教えてやる」

「えー‥」




ネジは優しい。

一人になってしまった私をいつだって気にかけてくれる。
なんだかんだと一緒にいてくれるのは、それだけ心配してくれてるから。


「俺はこれでも料理くらいできる」

「はいはい。なんだっけ?その辺のくの一よりは上手くて、うちのおばあちゃんには敵わない、だっけ?」

「あ‥ああ」


一人の寂しさを知ってるネジ。

おばあちゃんを失って悲しいのはネジも同じかもしれない。


「ネジ、私肉じゃが食べたいな。
でも‥」

「なんだ?」

「気分はラーメン‥食べに一楽行こうと思ってたから‥」

「作るか、ラーメン」


ネジが優しく笑うから、私は安心して甘えられる。

「作ってくれるの?優しいなぁネジは」

「何を言っている。お前も作るんだ。ラーメンくらい作れなくてどうする」

「けち」

人と人は支え合って生きてる。
私とネジのように。

時々、2人という狭さに、周りの人達から心配されたりもする。
ただ私達は2人だけになってしまっただけなんだ。

「行くぞ」

「買い物?私もう少し練習したい」

「肉じゃがも食べたいんだろう?
まずは食材の買い方から教えてやる。それに、そんなに必死に修行されると俺が困る」

「どうしてよ」

「ただでさえ先に中忍になられてるからな。追い付くのが大変だ」

「へー、一応気にしてたんだ?
全然羨ましくないって言ってたのにねぇ?」

「羨ましくはない。すぐに追い付くからな」

「次の試験で頑張ってね。待ってるわ」

「厭味な奴だ。ラーメンも作れないくせして」


私達は笑う。
2人だけの世界で。


「大丈夫よ」

「ユメ?」

「私は、大丈夫。
後悔してないから。ちゃんと、送り出せたから」

「‥そうだな」

「寂しいけど、私は、独りじゃないから」

「俺がいる」

「‥うん」

「変わったな、ユメ」

「え?」

「なんでもない。気にするな。
行くぞ」


私達は、どこへ行くの?

いままで行けなかったどこかへ、2人だけになってしまった私達ではもはや行けるわけがない。

塞がれた場所で、
私達は何を見るのだろう?


「ナルト入れよう、ネジ」

「は!?何故!?」

「だってラーメンには乗ってないと。あと海苔もね」

「ああ。具の話か」


そこから私達を連れ出せる人間がいたとしたら?




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あきゅろす。
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