最強ツンデレの敗北
ツ.ついに見えた微かな光
「見様見真似などで医療忍術に手を出すな!馬鹿者!!」
「すみません‥」
大事を取って入院ということになり。
綱手様にこっぴどく怒られた。
「‥しかし。
その割にはなかなか腕が良いのも認めよう。
チャクラコントロールにセンス、良いものを持っている。医療忍者に育てる素質があるかと思ったのだがな。
お前のアカデミーの頃の成績を見て諦めた」
「‥‥‥‥‥」
「なんだ、あの学科の成績は」
「‥‥私、小説とかは平気なんですけど‥、説明文とか数字とか‥面倒そうな文字がすごく苦手で‥‥」
「はぁ‥全く。シカマルじゃないんだから‥。
まぁ良い。お前は医療忍者には向いていないのはわかった。
だが、センスは認める。せめて簡単な応急処置くらいは叩き込んでやろう」
「ありがとうございます」
先程までナルトもネジも、テンテンやシカマル達までいた病室は、彼らが去った今、ひどく静かに感じられた。
「それで、だ。
本題に入ろう」
綱手様は真剣な顔で私に向き直った。
「里が今、人手不足なのはよく知っているだろう?
‥実は、お前に上忍への昇格の話がある」
「上忍‥?
‥そんな!無茶苦茶です!
私は、だって、こんな任務ですらちゃんと熟せないのに!」
「今回の任務は、子供とはいえ他里の暗部‥抜け忍が関わっていた。予期せぬ事態だった。それをこの程度の被害で収めたのだ。評価に値する」
「‥でも、
私は、‥そんな器ではありません‥。私には、確かな忍道もなければ強さもない。中途半端な‥忍なんです」
「ユメ‥。仕方ないか。
そう言うだろうとも思っていた。お前が何か煮詰まっているように見えると何人かから報告があってな。皆心配していた。
‥入って来い!」
「失礼します」
からからと戸を開いて顔を覗かせたのは、よく任務で一緒になった上忍の一人、スイさん。
「お前には、少し忍という者を見詰め直す時間が必要なんだろう。だが、里としては長々待ってはおれん。どうする?二択だ。
上忍への昇格か、暗部への異動か」
「‥暗‥部!?」
暗部への入隊は、忍としては栄誉なことで。人間としては、茨の道に足を踏み入れることだ。
厳しいだろう。でも、私が忍でいる理由は、見つかるかもしれない。
スイさんは、私に少しだけ淋しげな、控えめな笑みを浮かべた。
『人間にとっては、寂しいところだよ』
暗部のことを尋ねたときのスイさんとリクさんの言葉だ。
「ユメが暗部に入るのなら、僕も一緒に戻るよ」
「そんな!せっかくスイさんは暗部から‥」
「本当はリクも一緒にと望んでいたけど、あいつには子供が出来たからね。僕が止めた。
せっかく僕達も慣れてきて良い連携が取れるようになってきたのに、さよならじゃあつまらないだろ?」
「でも‥」
「いいんだ、ユメが一緒なら殺伐とした世界でも花が咲く」
「何かっこつけたこと言ってるんだい!全く。ユメの彼氏はナルトだろう」
「五代目は本当にナルトに甘いんですから。だいたい、ナルトは修行の旅に出てしまうんでしょう?遠距離は難しいですよ?
ま、冗談はさておき、
覚悟は決まったかい?」
みんな、私のことを見ていてくれたんだ。
心配して、励ましてくれて。
私が、自分のことだけでいっぱいいっぱいになっているときも。
温かく見守ってくれて。
ならば、私は、
逃げていられない。
進みたいよ。
みんなに、胸を張って見てもらえるように。
「火影様。
私を暗部へ入隊させてください」
「‥わかった。
では、スイの暗部への復隊と、
ユメの暗部への入隊を命じる!
尚、ユメは3年後暗部を抜けた時点で上忍への昇格を決定するものとする」
「火影様‥?」
「暗部になれば、今までのようにはいかん。生活も、人間関係も、制限される。
お前を暗部に入れたってだけでナルトには恨まれそうだからな。あいつが帰って来るまでの期限付きだ。
帰って来たら、ちゃんと迎えてやれ」
「‥はい!」
「それから、あいつのためにも、死ぬなよ。絶対に」
「はい!必ず!」
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